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JAIST支援機構「地域エディターズスクール」(文化観光)第5回 振り返り

一般社団法人JAIST支援機構が主催する「地域エディターズスクール」(文化観光)。(監修:国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学)

全9回のうち、第5回と第6回のみを受講登録しました。第5回を12月11日(日)に受講したので振り返りたいと思います。

講師は元NHK金沢放送局 エグゼクティブアナウンサー 水谷彰宏氏でした。

昨年NHKを退社するまでに全国400の自治体を巡り取材をした経験をもとに、「放送の取材・編集から「文化観光」を考える」というテーマでご講義いただきました。

1 メディアの立場から取材しやすいと感じること

取材する側ではなく、取材されたい側として参考になる内容でした。
講義では、取材されやすいこととして以下の5つのエピソードをご紹介いただきました。

  1. 「ものにはストーリーが欲しい」 NZ出身女性

  2. 「知らなかった街の歴史をいかに掘り起こし今につなげるか」 紐ゴム発祥の地

  3. 「〜周年、ちょうど◯年前、今年初めて」 完全試合

  4. 「写真があった」 雷電の写真

  5. 「舞台裏にも価値、興味がある」 くらしの博物館の展示過程

詳しい講義内容を書きすぎても良くないので割愛しますが、いくつかのエピソードに共通しているなと感じたことがあります。

それは、「使い古された”枯れた”情報も、タイミングによっては”活きた”情報に生まれ変わる」ということ。

例えば、3のエピソードに関し、ロッテの佐々木朗希投手が完全試合を達成したニュースを紹介しただきました。

また、青森県にはプロ野球史上初の完全試合の石碑があるとのこと。それは地域住民すらも忘れているような過去のニュースに関連したものです。

今回の佐々木投手の偉業は、その地域ニュースを紐解くまたとない機会になるというのです。石碑について語れる人を見つけ出し、メディアにのせることにより地域の記憶を引き継いでいくことができます。

皆が興味を寄せる情報(佐々木投手による完全試合)と組み合わせることで、情報に価値がもたらされます。

「なるほど」と感心するとともに、地域の隅々まで目を凝らしていないと、一つ一つのニュースとの関連にピンとくるのは難しそうだと感じました。

常日頃からアンテナを高くしておくことが求められそうです。

先生は、「メディアは「今」を欲しがっっている」と強調されていました。
「今会いたい人、今の暮らしが見えてくること、今ここにしかないこと」

さらに、その先にいる視聴者や読者が欲していることが何なのか。「今」、この時にどんな情報を求めているのか。それを意識し、時流を読んだ情報発信が求められます。

当然のようで、忘れがちなこのこと。独りよがりな発信にならないよう、日頃から胸に刻んでおきたいと思いました。

2 プレゼンテーションの基本

元アナウンサーならではの視点から、プレゼンテーションの基本をご教授いただきました。

参考になった点はいくつもありますが、中でも「1文は短く」と「同音異義語の言い換え」は、さすが伝達のプロと思わせる内容でした。

「1文を短く」は、文が長くなるごとに、修飾語が多くなり、言葉の関係性が複雑化。誰が何をしたのかが分からなくなるようなことを避けるためです。

また、「同音異義語の言い換え」は、脳内変換がうまくいかなくなることにより理解が追いつかなくなったり、誤解を招くことを避けるためです。

正確に情報を伝達することに対するメディア側の矜持を感じました。

また、聞き手を話へ引き込む方法として、「項目数提示型」(ex.論点は3つあります)、「疑問投げかけ型」(ex.〜なのでしょうか)、「結論先行型」(ex.私は〜によって〜しました)をご教授いただきました。

それぞれ、「最後まで聞かなければ」と聴衆を引き込む効果を狙うものです。これらの手法にロジカルな物言い以上の効用を見出せたのは、新しい発見でした。

3 その他アレコレ

水谷先生のこれまでのご経験からのいくつかの知見をご紹介いただきました。

中でも印象深かったのは、「何が主役か」ということに関するエピソードです。

東京スカイツリーの10周年イベントとして、襲名を果たした市川團十郎が634mからにらみを披露するというものを実施したそうです。

このイベントの主題はスカイツリー10周年。

しかし、メディアは「團十郎襲名記念」をこぞって報道。「スカイツリー10周年」はすっかり霞んでしまいました。

強すぎる要素を用いることの弊害により、何が主役かが分からなくなった事例としてご紹介いただきました。

衆目を集めるために、安易な道を選ぶことの弊害をまざまざと見せつけられ、耳の痛い思いです。

その他の留意事項は以下のとおりです。

・直前の売り込は対応が難しい(早めの情報提供を)
・それはお知らせですか、ニュースですか(NHKは告知に関する情報を扱う部署と、ニュース(事後の情報)を扱う部署が異なる)
・役職で登場人物が決まる(上役がさらに上役を呼ぶ)
・出演者が演出、段取りを決める(よかれと思って、ワザとらしい振る舞いをする、仕込みをするなど)
・思い入れがない(掘りどころがない)
・思い入れがありすぎる(話が止まらない)
・「〜百選だから素晴らしい」ではダメ(素晴らしい理由こそが大切)
・「3大〜」(評価軸が定まらない、論争があることは取り扱わない)
・「〜に比べて」(比較軸より、そこにしかないものを)

4 最後に

元アナウンサーということもあり、聞き取りがしやすい明瞭な発音で、軽妙にエピソードトークも披露いただき、7時間もあったとは思えないほどに、あっという間の講義時間でした。

グループディスカッションもちょうど良い分量で配分されていたと思います。

受講前は「観光情報を発信する際に役立つような取材方法を学ぶのかな」などと、ぼんやり考えていたところ、メディアに売り込む際の心持なども学べて、一粒で2つ美味しい講座だったと思います。

第50回紅白歌合戦(1999年)の台本を手に取り、見せていただけたのも貴重な経験でした。(鈴木あみや野猿の名前を見て懐かしさを覚えました。)

来週は引き続き、第6回講座。次回も楽しみになってきました。