2024J1リーグ第5節 FC東京vs浦和 〜劇的勝利もまだトンネルの中〜

こんにちは。タナカです。
前節不甲斐ない大敗を喫した我らが東京ですが、今節は未だ無敗の新国立に浦和を迎えての一戦。チームの心臓である荒木、松木のゴールで勝利しましたが、個人的に内容には不満が残る一戦となりました。


早速両チームメンバーから見ていきましょう。東京は、前節からガラッとスタメンを変更。GKに出場停止の波多野に代わって野澤(大)、CBもエンリケ、土肥と二枚とも変更。右SBに中村、両WGに俵積田、安斎を起用してきました。
対する浦和は4-3-3のフォーメーション。前節からは、大久保に代わって大畑を起用し、古巣対戦となる渡邊をWG起用する形で臨んできました。

前半

攻撃~対4-3-3のセオリー通りの攻撃~

浦和は今季一貫して4-3-3のフォーメーションを採用。このフォーメーションはヨーロッパのトップチームでも主流として使用されていますが、守備時に致命的な欠陥があります。

それはアンカー脇が空くことです。ダブルボランチを採用する4-2-3-1などのフォーメーションでは、二枚で中盤を監視することになるのでこの現象は起きませんが、アンカー1枚で監視できる範囲は限られてしまいます。

ヨーロッパのトップクラブであるアーセナル、リヴァプールはこのフォーメーションを採用していますが、この欠陥をカバーするために、

①SBやCBを保持で一列上げる可変の形をとって物理的にアンカー脇の空間をなくす
②カバー範囲の広い選手をインサイドハーフで起用する(ライスやマクアリスター、ソボスライ)
③ゲーゲンプレスで即時奪回し、そもそもその空間を使わせないようにする

などの対策を取っていますが、浦和はいずれの対策も取っているように見えませんでした。加えてアンカーのグスタフソンはカバー範囲の広い選手ではないですし、岩尾、伊藤の戻りの意識も希薄、CBが前に出てつぶすわけでもありませんでした。

福岡線以降のゼロトップ式ビルドアップを継続している東京としては、このアンカー脇の空間に松木や荒木が降りて前を向ける状況が多く作れたため、ビルドアップで特段苦労することなく、アタッキングサードまでボールを運べた印象です。

そして、アタッキングサードにボールを運んだ先にも狙いがありました。それは、ポケットを取る意識です。

先述したように、アンカー脇が空き、インサイドハーフの戻りも弱いので、押し込んだ展開ではポケットが空くことが多くありました。東京はこの構造上の欠陥につけ込み、各選手が流動的に動きながらポケットを攻略し、決定機を掴みに行っていました。

11分、高の幻の先制点も、ポケット攻略から出た形。流れの中で左に移動した中村がポケットを衝き、俵積田、高と渡ってミドル。川崎戦では押し込んだ後の単調な攻撃が課題となっていましたが、この試合では明確な狙いの下攻撃を繰り出せていました。

守備~準備された守備配置と、安斎起用の意図~

一方で守備ですが、こちらもファーストプランは優秀。

東京は荒木を一列上げた4-4-2ブロックを敷く形。荒木、松木でCBに制限をかけつつ、アンカーにはボランチのどちらかが出ていって対応。余ったインサイドハーフにはボールサイドと逆のWGが絞って監視していました。

この形だと逆サイドのSBがフリーになるので、WGは逆に振られたときにスライドしてSBまでプレスに行く二度追いが必要になってきます。俵積田は守備は勉強中なので何度か酒井に前進を許しますが、ここで光ったのが安斎。元々SBでプロデビューを果たしたぐらいの献身性の持主ですから、右から崩されるような形はほぼありませんでした。

サンタナのスーパーゴールで先制こそ許しましたが、狙いはハマっていて内容自体は悪くない前半、悲観する内容では全くありませんでした。

後半

攻撃~狙い結実、必然だった逆転劇~

リードを奪われた東京でしたが、後半早々に試合を振り出しに戻します。

48分、ロングボールを荒木がマイボールにすると、荒木が間に立ち続けて左から前進することに成功。俵積田が酒井からのプレスを受けつつもカシーフへパス。酒井の前へ出ます。たまらずグスタフソンが出張していったところで荒木のスペースが空き、荒木にとっては十分な時間、空間を与えることに成功しました。ファーへ流すようなシュートをちらつかせつつ、体を捻ってニアを衝いた一撃でゴールネットを揺らしました。

前半からの狙いである、アンカー脇を衝くことで同点に追いついた東京。失点後、浦和はミドルブロックを敷きますが、整備され切っていないため、東京が押し込む時間が続きます。

そして57分、松木のロングフィードから俵積田が渡邊と1対1。この試合散々個の質を見せつけてきた俵積田に、渡邊が寄せ切れません。精度の高いクロスを入れると、松木がボレーで合わせ、逆転に成功しました。

失点後、前から行くというよりブロックを作ることを選択した浦和に助けられた感じもありますが、自分たちの狙いを信じて、自分たちの時間でしっかり試合をひっくり返した東京。後半開始15分、短時間で見事、そして鮮やかな逆転劇でした。

守備~修正されなかった守備、薄氷の勝利~

ここまで見ると何がトンネルの中だと思う方も多いと思いますが、注文を付けたい点の1つとして、失点後の守備の修正がなかったことをあげたいと思います。

浦和は70分以降、途中交代の中島をトップ下に置いた4-2-3-1にシステム変更します。しかし東京は4-4-2ブロックをやめず、Wボランチがそのまま浦和のボランチにあたる形になったため、中島ががら空きでした。浦和が中島をあまり使わなかったこと、そして中島自身が中央でのプレー適性があまりないこと(仮に小泉佳穂だったらまずかった)で何とか持ちこたえていましたが、構造的にはかなり危険でした。

東京はチームとしての修正はありませんでしたが、個人で機転を利かせてその欠陥を最小限に抑えた選手が2人います。1人目は、安斎です。

安斎は、自分のマークである大畑(途中から渡邊)を捨てて中島を監視。これで中島がフリーな場面は少なくなりましたが、代わりにSBがフリーに。浦和は左からの前進回数が多くなりました。

2人目は、最終盤に出場した原川です。

原川は、伊藤を捨てて中島をマーク。中島に決定機を作られることはありませんでしたが、伊藤のマークが空いた分、アディショナルタイムにミドルを浴びて危うく失点となるところでした。

安斎と原川、彼らの機転によって構造上の欠陥を最小限に抑えられましたが、本来は仲川を一列下げてミドルブロックに参加させるべきで、この修正ができていないのはとても気になりました。

総括~次戦は苦戦必至~

何がともあれ、二試合ぶりの勝利を手にした東京。しかし次戦の相手となる鹿島は4-2-3-1のフォーメーションで、アンカー脇の概念はありません。加えてWボランチは肉弾戦大好き佐野と知念。前から圧力をかけられたときに課題が出やすい東京としては、正念場ともいえる相手でしょう。さらに次戦は荒木がいないので、その代わりを誰が務めるかも注目です。詳しいことはやる気があればXで…

最後までお読みいただいてありがとうございました!!

タナカ


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