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【初秋怪談】コスメショップの若い男

友人とコスメショップにいった。

見たいものが違うので、店内では自由行動をすることにした。コスメが並ぶ棚の前で品定めをしていたら、いきなり「すいません」と声をかけられた。振り返ると、若い男の子がいた。

「母親の誕生日プレゼントを買いにきたんですけど、何かいいのありませんか?」という。

年齢は10代後半から20代前半くらい。黒いTシャツに黒いズボン、ちょっとパーマがかった黒髪の、気弱そうな普通の男の子だった。一瞬「人見知りそうなのに、よく見ず知らずの他人に話しかけられるな~」と思った。でも「そうか、プレゼントか」と思いなおし「お母さんは、おいくつくらいですか?」と聞いたら、男の子は「50代です」と答えた。

50代か……。

50代女性はどのようなコスメをもらったら嬉しいのか1mmも頭に浮かばない私は「50代か……」とつい心の声を外に出してしまった。すると男の子は「50代の母親に、こういうのあげるのって変ですかね」といった。

私は「あ、そういうわけじゃなくて…! 何がいいのかな……」と返しながらコスメに目を向けたとき、ふと「こういうのって、店員さんに聞くことじゃないか?」と思った。


なぜこの子は私に聞いてきたのだろう?


「なんか怖い」そう思ったとき、視界の隅に店員さんの姿が見えた。ハッとした私は「たぶん店員さんのほうが詳しいので、店員さんに聞いたほうがいいの選べると思います」と彼にいった。

すると「ちなみに、どういうのがいいと思いますか?」とねばってきたので「店員さんのほうがいいものを知ってると思うので……」と私は同じことを繰り返した。「そうですか」といい、彼は立ち去った。



この体験、友人に報告せねば…! と友人を探しにいくも、店内に見当たらない。出入口にたっていればそのうち来るだろうと5分ほど待っていた。すると友人がお店から出てきた。お店を十分に離れたところで、歩きながら「さっき、変な人いなかった? 話しかけられたよ」というと「私も話かけられた!」と彼女はいった。



彼女の場合はこうだ。

ある化粧品のテスターの中身を確かめようと、キャップをとりはずしたところで「それって何ですか?」と声をかけられた。振り返ると若い男の子だったので、彼女か誰かにプレゼントするのだと思い、商品の説明をしようと試みた。

「えと……、これは化粧水のあとに肌につけるものです」と答えると「飲み物じゃないんですね」といわれたので「あはは、飲み物じゃないです」と笑った。

ここまではまったく何とも思わなかった彼女だが、男の子が「でもその容器の口って、なんか赤ちゃんが飲むやつみたいですね」といったとき、急にゾワッとしたという。

手にしていた化粧品はキャップを外すと先端がスポイト状になっていて、中の液体をすいあげて手のひらなどに少量取り出すことができるようになっている。このスポイト部分が彼には哺乳瓶に見えたらしい。



いったい彼の目的は何だったのでしょうか。

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