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日本ワイン頂上決戦!〜白ワイン編〜①

管理人(以後、「管」): 日本ワインの頂上決戦がいよいよ、やってきました。
管理人は過去に日本ワインには辛口コメントしていた黒歴史がありますが。笑
そんな中、総支配人が挙げた白、赤5本の日本ワインで頂点を決めようという企画です。まずは白ワインからいきましょう。
この企画が始まる背景を含めて、総支配人が思う、今の日本ワインについて教えてもらえますか?

総支配人(以後、「総」): まず総論的に、日本ワインの平均レベルは近年目覚ましく向上していると言えるね。これは造り手の方たちはもちろん、メディアやレストラン、小売店に至るまで、日本ワインを取り巻く人々すべての高い志と努力の結果だと思う。

そのことは大前提として、ではその日本ワインを”Wine”という分野として見たときに、やはり海外産ワインとの比較になることは必然で、そうなると個人的感情は抜きにして、消費者は同じレベルであるなら、より安いワインを求めるし、同じ価格であるなら、より高いレベルのワインを求めるよね。では、そのレベルというのはどう判断するのか、ということになるのだけれど、一番分かりやすいのは点数だよね。専門誌やWEBサイトでの点数を購入の目安にされている方も多いのではないかな。ただ、点数だとその人の好みに合うか、ということを判断するのは難しく、最終的には飲むしかないか、あるいはインポーター資料やソムリエ、ワイン愛好家などのテイスティングコメントを見て判断することになるよね。
そういう場合に、日本ワインは海外産ワインと比べると、参考にできる評価が日本国内だけの評価しかないことが多く、世界のワインの中でどのくらいのレベルなのか、というのがまだまだ分かりにくい状況にあると思う。管理人が過去に日本ワインに対して辛口なコメントをしたのも、海外のワインと比較してとのことだと思うので、それはそれで正直な意見だよね。

管 これは管理人個人の感想になりますが、「日本ワインって美味しいの?本場フランス産とかの方が同じ値段で美味しいなら、そっち買うわ」が大半な気がします。
日本ワインだけに限らないかもしれないですが、まだまだワインは画像で見て飲欲が湧く人少ないですもんね。インスタ映えする飲食店の食べ物は分かりやすいですが、その食べ物に一緒にワインが映ることでやっと「ああ、ワインも一緒に飲みたいね」となる気がします。

総 そうだよね。特にワインにあまり関心がない方は、ワインに対して基準となるイメージがないので、飲みたい!というところまで気持ちが高まらないよね。
ただ、ワインの良いところは、お酒の中ではなんとなくお洒落な印象があるのと、ワインのラベルデザインが多彩なので、そこから興味を引き出せる可能性はあるよね。

そのような状況の中で、ワインを飲んだ時に身体で感じる感動の構造、すなわち身体意識を図示することで、視覚的にレベルや好みを判断できる材料を提供し、結果的に日本ワインが世界から正当な評価を受けることにつながるといいな、と思っているんだ。
身体意識図の面白いところは、その意味が分からなくても、ある種、直感的に図を見てこっちの方が凄そう、とか、こっちの方が好み、という選択ができてしまうことなので、それが図としてビジュアル化することの強みであり、今までにない斬新な評価法かつテイスティングコメントならぬ「テイスティングデッサン」だと思う。

管 テイスティングデッサン!なるほど!
このデッサンは身体意識を全く初見の人でもある程度、描けるものなのでしょうか?

総 全く無理だね笑
描くことは無理。ただ、その意味を解説した時に理解することはできると思う。
管理人もそうだと思うけれど、私が言葉で図の内容を飲みながら話した時に、初めからある程度理解できていたよね。

管 全く無理、、、初見では描くことは無理ですか。笑
美味しさの客観的な可視化であるテイスティングデッサンをある程度、皆さんにも理解してもらいたいですよね。
それでは早速、日本の白ワインを解説していきたいのですが、その前に頂上決戦というからにはトップを決めなければ、いけません。
この5本のうち、総支配人から見てトップはどれになりますか?

総 いきなり結論から行くのは素敵だね。笑
ただ今回は、このテイスティングデッサンである身体意識図の理解を深めていただくため、どれが直感的に1番凄そうか、皆さんにまずは眺めていただく、というのはどうかな?
今回頂上決戦ということで選んだ日本ワインは、赤白ともに、世間的な評価、特に日本ワイン愛好家の方たちの評価を出来るだけ考慮してみた。その中でも、ブラックボックスになりがちな人気の高い小規模の生産者に絞り選んでみたよ。
もちろん今回取り上げたもの以外にも素晴らしいワインはあるのだけれど、日本ワインに詳しい方にもある程度納得していただける選択になっていると思う。

城戸ワイナリー プライベートリザーブ シャルドネ

ドメーヌ ミエイケノ シャルドネ

中澤ヴィンヤード クリサワブラン

農楽蔵 ノラブラン

山崎ワイナリー シャルドネ プライベートリザーブ

生産地は5本中3本が北海道、そして長野県と山梨県だね。なかなか見応えがあると思う。もちろん生産年や熟成年数によっても身体意識は変化するのだけれども、それはカッコで括って、どうなのかな、ということね。

管 何か強そうなキャラみたいでカッコいいですね。笑
情報量が多い方が良さそうに思えるので、中澤ヴィンヤード、山崎ワイナリー、城戸ワイナリー辺りがレベル高い気がしますね。
そういう意味だと、1番複雑そうな城戸ワイナリーだったりするんですかね?

総 そうそう。そんな見方でも全く問題ないし、面白いよね。最も重要な身体意識であるセンター(軸)の完成度で観ると、

山崎ワイナリー シャルドネ プライベートリザーブ

城戸ワイナリー プライベートリザーブ シャルドネ
のどちらかかな。

図を描いた時点では、山崎ワイナリーが細径軸、中径軸、大径軸といった三層構造のセンターが美しく通っているので、城戸ワイナリーよりも高いレベルであると言えるね。
それで、総合的にどうなの?ということなんだけれども、センターも含めて、城戸ワイナリーは熟成により更に味わいが良くなるポテンシャルが感じられる。
例えば、城戸ワイナリーのテイスティングデッサン(身体意識図)を見ると、青色の太い線が下への方向性を持って描かれているよね。これは、熟成によって同じ涼やかなクオリティを持つ別の身体意識へ変化する可能性がある。そしてそれがセンターの中径軸だったり、大径軸だったりする可能性もあるので、その辺りも評価に加味したいな、というのが個人的な意見だね。
このテイスティングデッサンを描くことと、そのデッサンをどう解釈するのか、ということは関係性はあるけれども、別のこととも言えるので、僅差の場合はいろいろな意見があってもいいと思うね。
私個人としては、広くは日本ワイン界全体の飛躍を期待しているので、ワイン自体も今後のポテンシャルの高い方を推したいかな。
現時点での完成度か、想定されるポテンシャルから生まれる今後の完成度を考慮するか、人間でもそうだけれど、判断が難しいところだよね。
テイスティングコメントでも、よく今飲んで〇〇点、ポテンシャル〇〇点みたいな表現があるので、皆さんも悩みどころなんだと思うね。

管 センター(軸)が重要なファクターであるということですが、初見の人もいるかもしれないので、今一度教えてもらえますか?ワインにおける身体意識としてのセンター(軸)はどのような役割をしているのでしょうか?
また、我々が飲んだ時に味わいとして感じやすい、分かりやすく「あ、これがセンターか!」となる目印はありますか?

総 ワインには酸味や渋味、旨味、塩味、甘味など、様々な味わい要素が含まれているのだけれど、
センターはそれら複数の要素をバランスよくまとめ上げ、調和を取る働きがある。
だから、ワインを飲んだ時に、味わいはいろいろ感じられるけれど、何かバランスが悪く味わいの要素が分離して感じられるような場合は、身体意識で言えばセンターが通っていないと言えるね。
また、別の観点では、味わいに気品や品格、存在感を与えるのもセンターだね。
テイスティング用語に「フィネス」という言葉があるけれど、これは卓越した優雅さと繊細さ、品格を持つ偉大なワインの味わいを表現するのに使われているんだ。それは身体意識から言えば上質で高雅なセンターが通っているということだね。

管 ということは、現時点では総支配人の白ワインの日本ワイン頂点は城戸ワイナリーのシャルドネということですね!
城戸ワインのテイスティングデッサンについて、簡単にコメントをもらいました。
改めて、このワインの全体的な身体意識の概略を教えてもらえますか?
もし可能であれば、それらテイスティングデッサンでの表現で、身体意識に初めて触れる人でも感じ取れる味わいや部分も解説してもらえると助かります!

総 城戸ワイナリーのプライベートリザーブシャルドネの1番の特徴は、センターの柔らかさだね。柔らかく、しなやかなセンターが中心に通っていることで、他の要素を上手くまとめ上げているよね。
さらに、その中心を通るセンター(トップ・センター)の両サイド、背骨の両脇を通る第1側軸、股関節中心を通る第2側軸がはっきりと通っており、トップ・センターのしなやかさと左右合わせて4本の側軸のはっきりとした印象のギャップが魅力になっているね。しなやかかつ自然な存在感がある、と表現したくなる。比較的大きなスケールの身体意識を持っているので、これは並のワインではないな、と思わせつつも、口に含むととても自然な印象で、構えずに味わうことができると思うよ。

管 私はこのワインを飲んだことが無いですが、センターでいうと、身体意識図を見て感じるのはバランスが保たれて、身体にしっくりくると言うか、喉をスッーと通過して身体に染み渡る感じがするんですよね。センターが通らないというか、バランス悪いと口当たりや、喉を通過する時に引っかかりというか、すんなり身体がワインを受け入れない感じがします。そういう意味で言うと、ワインを飲んだ後の味わいの余韻が続くとセンターが通っている印象もあるのですが、余韻がハッキリ感じる=センター通るは認識合ってますでしょうか?

総 その通りだね。
センターが通っているワインを飲むと全身をスーッと通る感じがする、というのは、表面的な味覚ではなくて身体意識の層へ入り込んでいるものを感じている感想だよね。
その逆で、センターの通っていないワインは身体が受け入れにくい感覚になるね。
余韻というものを生み出すのは、様々な身体意識が当てはまるのだけれど、その代表的なものがセンターだね。

管 なるほど!その身体への染み込みやすさが「柔らかさ」と感じられるのが城戸ワインのシャルドネなんですね。
その柔らかさがあるからこそ、身体に染み込みやすく、染み込みやすいからこそ、他の身体意識も自然と身体に入るという相乗効果ですね。必然的に美味しいワインということが分かります。

総 まさにその通りだね。
これは日本ワインに限らず、ハイレベルなワインで飲み頃のワインを飲むと、必ずそのように身体に馴染みやすく、身体意識も受け入れやすい。その結果、ワインの持つ素晴らしい身体意識が一時的にでも自分の身体に形成され「これは本当に美味しいなぁ」と感動する、いうことだよね。

管 先ほど、「さらにその中心を通るセンター(トップ・センター)の両サイド、背骨の両脇を通る第1側軸、股関節中心を通る第2側軸がはっきりと通っており、トップ・センターのしなやかさと左右合わせて4本の側軸のはっきりとした印象のギャップが魅力になっているね。しなやかかつ自然な存在感がある、と表現したくなる。」とありますが、ここら辺は飲んだ味わいとして、どのように感じれるものでしょうか?余韻が長いとか、具体的な味わいなどありますか?

総 このワインを味わった時に、まず中央のセンターの柔らかさが感じられるのだけれど、その次の瞬間、はっきりとしたストラクチャの強さも感じられて、「ああ、これは並のワインではない品格、存在感があるな」と思ったんだけれど、それを生み出しているのが城戸ワイナリーの場合、この側軸だね。
味わいで言えば、酸やミネラル感が縦に通って感じられる。余韻の長さへも影響を与えていて、このワインの場合は中央のセンターよりも側軸の方が余韻として分かりやすく感じられるかな。
それと面白いのは、飲み進むほど胃が空腹になること。笑
テイスティングデッサンを見ていただくと、胃の部分に青の点線で描かれた円があるけれど、これがそういう状態を生み出す身体意識だね。造り手が料理とのペアリングを意識されているのが反映された身体意識だと思う。

管 そのセンターが構造としてもしっかりすることで、身体に大きな箱みたいなものができて、お腹が空くんですかね?笑
胃の部分の青い円は飲んだ時にも感じれるものでしょうか?

総 うーん、そういう場合もあるかもしれないけれど、このワインについてはセンターとは無関係かな。
この青い円で描かれた身体意識は飲んだ時にも感じられるもので、一言で言えばお腹が空く感じがする。笑
逆に赤い円で描かれるワインもあって、その場合はとてもお腹が満たされる感じがするね。食事と合わせずワイン単体でもいいかな、となる。

管 ただただお腹が空くということなんですね。笑
造り手の意識が反映されていると言うのが、とても気になります。

総 まあ、飲み物だからね。笑
食事と合わせて欲しいからなのか、それとも熟成によってこの部分が消えていくのか、その辺りはどうなるのか調べると面白そうだよね。熟成前のワインの場合、ワイン自身の空腹感とでも表現すべき状態が現れている可能性もあるよね。つまり、ワインの空腹感が飲んだ人にも伝わっている、ということかもね。笑

センター以外に興味深いのは、胸の中丹田だけではなく、首の周りが熱くなること。これは造り手自身の身体意識が反映されたものだね。この首周りの熱さや、両脇に入ってきている心田と呼ばれる熱性身体意識から生まれる熱さとバランスを取るように、上方からの太い青の線で描かれている涼やかなクオリティを持つ身体意識が降りてきているね。

管 そうなんですね。中丹田の意識だけではなく、首の周りが熱くなるのも造り手の身体意識が表れているということですが、我々がワインを味わうときにどのようなニュアンスで感じることができますか?

総 これは味わいで感じられるというより、本当に首周りが熱くなる感じがするんだけれど、あえて味わいで表現するなら、果実味から生まれる満足感が胸だけではなく首周りまで溢れ出しているかのような感じかな。少し表現が難しい。笑

管 造り手の城戸氏は、ワイナリー自体を3人で切り盛りするというとんでもない生産管理体制を敷いているのですが、ワインに対する拘りがハッキリ見えます。総支配人には、造り手のどのようなニュアンスがワインに反映されてると思いますか?

総 城戸ワイナリーの造り手である城戸亜紀人氏は、自身の集大成となるべきワインについて「世界のトップレベルに挑戦できるワイン」と語っていて、それは「エレガンス」「力強さ」「バランス」「凝縮感」「複雑さ」「品格」のすべてを兼ね備えた味わいを持つワインとも語っている。
そしてその集大成となるワインは、彼が師と仰いでいる故 麻井宇介氏の言葉「ワイン造りの教科書に書いてある醸造方法はあくまでも1つのやり方にすぎない。言い換えてみれば失敗しないやり方ではあるがベストなやり方ではない。そのようなやり方では本当に人を感動させるワインはできないんだよ。人を感動させることが出来るワインとは造り手の五感によって造られたワインなんだよ。」を実証するためのワインであるとも語っている。
このような哲学を持つ造り手なので、当然それがテイスティングデッサン、つまり身体意識図にもよく表れているね。
まず身体中央のセンターから生まれるエレガンスや品格、バランスの良さ、そして4本の側軸や中丹田から生まれる力強さや凝縮感、様々なクオリティを持つ身体意識が形成され、それらのモビリティも異なって存在している複雑さなど、何とか理想に近づこうとする想いが伝わってくるよね。

この造り手の城戸氏が師と仰いでいる麻井宇介氏は、現代日本ワイン界の父とも言うべき偉大な方なのだけれど、この方のおっしゃる通り、教科書的な醸造方法はもちろん大切なのだけれど、その具体的方法の記号情報に捉われず、自身の五感、さらに言えばその五感を根本から支える身体意識の働きによって造られたワインでなければ、人を感動させるワインは生まれないよね。
身体意識は味わいの感動の構造でもあるので、造り手自身が素晴らしい感動構造を持っている人、もう少し噛み砕いて言えば、ワインを造る全工程に感動し続けている人、剪定で感動し、萌芽に感動し、開花に感動し、収穫に感動し、選果や発酵などの醸造工程で感動し、瓶詰めで感動する、そういう人が造られるからこそ、多くの感動が作品としてのワインに集約される。その膨大な感動が我々がワインを飲む時に感じられる感動でもあるんだよね。

管 理想を体現しようとする姿勢はもちろんですが、それを実際に形にしてしまう能力もまたすごいですよね。
工程一つひとつを手作業でワインのポテンシャルを引き出すことを目指しているんですよね。そうなると、やはりワイン生産本数は必然的に少なくなってしまいます。我々が飲める機会、それこそ感動できる機会が少なくなってしまいます。ワインのビジネスで考える時に、ビジネス寄りで生産本数や品質を安定させるために自動化などを取り入れるのか、悩ましいところですね。

総 自動化を取り入れたとしても、上手く行っているワイナリーもあるよね。ボルドーのシャトーにはそのようなところもあるよね。

管 城戸ワインは、
・シャルドネは造り手の城戸さんのエレガントなワインを造るという信念が正に体現された、エレガントなワイン
・センターの柔らかさやバランス、果実味を感じられて飲んでいて食事と合わせたくなる=お腹が空いてくるワイン
ということですね!

総 その通りだね。良いまとめ方だと思う。
では、次の
ドメーヌ ミエイケノ シャルドネ 2019/Domaine Mie Ikeno Chardonnay 2019
にいきますか。

このワインについては、以前掲載した、
「日本ワインVSフランスワイン3本勝負!」の第1弾、白ワイン篇 シャルドネ対決
ミエ・イケノ VS ヴァンサン・ドーヴィサ
で取り上げたので、そこで話した通りなんだけれど、テイスティングデッサンとして描かれている中で最大の特徴は、中央のセンターが前後に2本、左右のセンターが4本の計6本のセンター(軸)が通っていることだね。
これだけの本数の軸が通っていると、飲んだ時に繊細さや気品が感じられ、丁寧に造られた美味しいワインだなぁ、と感動するよね。


管 ミエイケノのワインはセンターが細いために情報量が少ないと感じてしまうのですが、空いたスペース分は余裕というか、余白が生まれて逆にエレガントさが出ているのでしょうか?

総 エレガントさはセンターそのものの効果だけれど、余白の効果というものもあるよね。その分際立つ、ということはもちろんある。

管 総支配人的な総合1位の城戸ワインと比べると、センターはどのような違いがあるのでしょうか?これから飲んで身体意識を感じようという人も違いが分かるとまた認識しやすくなると思います。

総 ミエイケノシャルドネも城戸ワイナリーシャルドネも通っている側軸は左右合わせて4本なのだけれど、通っている位置が2本異なっているね。
股関節の中心を通る第2側軸はどちらも共通していて、ミエイケノは体幹から脇の下へ沿うように通る第3側軸が、城戸ワイナリーは背骨に沿うように通る第1側軸が形成されている。
それで、飲んだ時の印象なんだけれど、前述した通り、ミエイケノはそれぞれのセンターが細く、中央のトップ・センターと第2側軸の隙間と、第2側軸と第3側軸の隙間がいい感じのエレガントさを生み出している。そしてこの隙間に噛み合うような料理を食べたくなる時もあるね。
一方、城戸ワイナリーは、それぞれの側軸にストラクチャの強さがあり、より中心に集まっているため、凝縮感が感じられるね。中央のセンターは柔らかいのだけれど、側軸はしっかりしているので、人によっては柔らかさよりもまず骨格を感じるかもしれないね。
さらに、ミエイケノシャルドネはアルコールや酸のニュアンスも柔らかいね。その柔らかさがあるから、もっと全体の印象もフワッとしているのかな、と思っていると、センターが上空からスーッと通ってスッキリする感じだね。

管 ミエイケノのワインを管理人は飲んだことがないのですが、身体意識を見る限り、口当たりからシャルドネの味わいにインパクトがありつつも、それはアルコールや酸のニュアンスであくまでもワインの味わいとしては頭のてっぺんより更に上から喉を通過する感じでしょうか?ここまでは流動的な美しさを感じられそうです。
喉を通過後、ゆっくりと胸当たりまでブワっとしたシャルドネの果実味(この感じだとライチとか甘いリンゴに似た感じ?)とアルコール、酸がピークに身体に入り込んでくるので、ここで重厚感を感じますかね?
その後に腹からへそ下までにかけて余韻が続くも太い余韻じゃなくて、細い余韻で頭から喉、胸、腹という流れを生み出している流動的なワインでしょうか?

総 そうそう。果実味の感じ方はそんな感じだね。重厚感まではいかないけれど、満足感はあるね。そして余韻の感じも繊細で品がある。

管 ミエイケノはセンターの他に感じやすい身体意識はあるのでしょうか?

総 感じやすいのは、中丹田じゃないかな。果実味と結びついていて温かな満足感がある。
もう少し感覚の鋭い人だと、その熱さや温かさが大地からのつながりで胸の中心へ入ってきているのが分かるのではないかな。
それと、ミエイケノは、中央のセンター(第3軸)の後ろに第4軸もあるので、味わいに裏側から支えられているような安心感がある。これも面白い特徴だね。奥ゆかしく支えられている美味しさ、とでも表現できるかな。とても日本らしい味わいだよね。

管 ミエイケノのワインを飲んだ時も、柔らかさを感じることができて、城戸ワインよりも柔らかいニュアンスが強いということですかね?もちろん、前提にしっかりとした味やアルコールのニュアンスがセンターにあるとして。

総 ミエイケノは柔らかいニュアンスが強い、というよりは、その柔らかの内容が違うということだね。同じ柔らかい、と言っても、様々な柔らかさを感じさせる身体意識のメカニズムがあるということだよね。

管 果実感なんですね!めちゃくちゃ素人目線なのですが、ミエイケノは他のワインよりも身体意識図としては情報量が少ないです。他のワインの方が中丹田の果実感に満足感があるような気がするのですが、ミエイケノは全体のバランスとして情報量が少ないからこそ、中丹田を感じやすくなったり、柔らかさを感じやすくなるということなのでしょうか?

総 その通りだね。情報量が少ない分、相対的に目立つということはあるよね。

管 ワインとしてのバランスが素晴らしいということだと思いますが、そのワインに行き着くのは、やはり凄い技術ですよね。作り手のイケノさんはフランスでワイン造りを学び、日本で土地を見つけられてワイン造りをされています。総支配人から見て、イケノさんのどのような意識がワインに反映されていると思いますか?

総 造り手の葡萄を育てるテロワールへの美意識が、ワインの身体意識にもよく表れているね。その代表的なものがセンター。この美意識があるからこそ、それに惹かれて多くのファンが生まれているとも言えるね。

管 ミエイケノも城戸ワインと同じように
・「センターがしっかり」しているが、センターの本数があるからこそ安心感のある味わいと、フワッとした柔らかさのような美しさがあるワイン
・奥ゆかしさすらあるワインだからこそ、いろいろな料理に合わせやすく、食欲を掻きたてる
・さらに、中丹田の温かさある熱量、果実感もあるためにシャルドネとして満足感のある味わいに仕上がっている
というワインなんですね。

総 その通りだね。
ミエイケノには、月香シャルドネという真夜中に収穫した葡萄から造られたワインもあるので、それも機会があれば分析してみたいね。
次は、中澤ヴィンヤード クリサワブラン2019/Nakazawa Vineyard KURISAWA BLANC 2019の解説へいこうか。

前半である、①はここまで!残りは後半へ続きます!


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