見出し画像

こんなはずじゃなかった

そう、「こんなはずじゃなかった」のだ。

ある日、誰かがやってきて「新店舗は希望された場所に用意できているので明日からはそちらで営業を」と言われても、「ああ、そうですか。そういう事ならそういう事で。」と移転できると思っていた。

開店当初から「5年後には別の場所に移転する」と言っていた手前、話があればすぐにでも跳べる心構えをしておいた。
店への愛着なりなんなり、そういうものも出来る限り抱かないようにしてきた。
しかし、それはあくまでも「つもり」で実際はそうでもなかったようだ。
話が進み、いよいよという段階で文字通り狼狽えたのは完全な計算外。そしてそんな心境になっている自分にさらに狼狽えた。

どうやらドライな対応で済ますには過ごした時間が長かったらしい。

考えてみれば来客の起伏、それに連なる売上の起伏で一喜一憂し、向き合い対処するというのを続けてきたのだから感情を抱かないでおくというのは無理があった。
普段から身の回りの物ですら手放すのに悩んで躊躇って手放せないのだ。店なんて比にもならないサイズ、かつこの約8年半のアイデンティティの大きな部分を占めていたものを躊躇わないわけがない。

そういうわけで去年末から迷いと悩みと葛藤でずいぶん頭を抱えた。白紙に戻そうかという考えもよぎった。
…コロナ禍のおかげで、こうやって悩み考える時間が存分にあったのは皮肉としか言いようがない。
支店化できないか、或いは別の方法で残せないかと模索したものの、しかし収まりの良い形は見出せず、手放す他ないという結論に至った。

ひとりで2店舗は営業できないし、今から声をかけて誰かに任せようにもこのタイミングで顔が浮かぶ同業者なんて一人もいない。ならばと見知らぬ人間に任せられるほどの器量は持ち合わせていなかったのだからこれは当然の帰結だった。
だいたい、ひとりでやるのが気楽でここまでやって来たのた。店舗展開や売上管理・戦略設計をするなど冗談も甚だしい。
…まあ、それより相談にのってもらった方々全員から「そんな経営の話以前に任せた店がイメージと違うのが許容できるタイプじゃないのはよくわかるから止めておけ」と口を揃えて言われたのもある。全く以ってその通り。
たしかにこれが最適解であった。
皆様、性格をよくご存知で苦笑しか出ませんでした。

それでも。

営業的にも生活的にも長い時間を過ごした店ゆえ、どこまでいっても手放したことについて自分へ言いたいことはいろいろある。永く抱えていかなければならない。教訓として。

“両の手に持ちきれない物は手放すしかない”とはよく言うけど、業種的思考で言えば”片手は常に自由にしておけ”だ。
僕の手には一店舗ですら片手で余る。多店舗などというのは絵空事も甚だしい。
が。
新しい場所で、店舗でもう少し成長できたならその時は…と早くも考えている。気が早い。早過ぎるけど、妄想でも絵空事でも先について言っておく/書いておくことはとても大事なのだ。

肝心の新店舗スタートにはもう少し準備の時間がかかりそうですが…。

この記事が参加している募集

振り返りnote

もし、記事を読んでくれてお店の方が気になったら覗いてみてください。Instagram / FBもページがありますが、まずはオフィシャルHPを。 http://www.bar-tool.com/ サポートしていただけた場合はお店の運営に充てさせていただきます。