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[人生にはBarが必要だ]第6回 京都 祇園サンボア

冬の京都。JR京都駅を降りるといわゆる「底冷え」する厳しい寒さが身に染みる。京都タワーを見上げつつ、タクシー乗り場の列にならび、乗車して祇園の南側をお願いする。

京都祇園は古くから花街として栄え、今でも舞妓さんや芸妓さんの姿を見る機会も多く、特に南側は実に風情ある古き街並みが印象的で、これぞ京都だという方も多いことだろう。

とはいえ、私はお座敷遊びの出来るお茶屋さんに来たわけではない。この南側にある老舗Barの暖簾をくぐるためにわざわざ来たのだ。祇園サンボア。

暖簾をくぐり、バーの扉を開けると、正面に向かってストレートなカウンターが伸び、年季の入ったストゥールが整然と並ぶ。そして4代目店主の中川瑞貴氏が「いらっしゃいませ、おこしやす」と温かく迎えてくれる。

祇園サンボア 中川瑞貴氏
カクテル:マテニー(マティーニ)

サンボアといえばご存じの方もいらっしゃるだろうが、その代名詞が氷無しのハイボール。創業100周年を迎えた洋酒バー「サンボア」は大阪、京都、東京に10店舗以上を構え、どのお店もサンボアをこよなく愛するお客様達が居並ぶお店であるが、創業当時は氷が貴重だったことと、ウイスキーと炭酸との絶妙な一定割合を保つために氷無しハイボールを供していたとのこと。

写真:中川立美氏

ここ祇園サンボアは、店主である瑞貴氏の祖父母にあたる中川志朗さん・歓子さんが1972年開店に開店したお店であるが、志朗さんが他界。その後、お二人の息子である立美さん(通称:立っちゃん)が後を継いだものの、その立美さんも他界なさり、歓子さんと立美さんの奥様で祇園サンボアの暖簾を守っていたが、銀座の有名Barでバーテンダー技術を研鑽していた瑞貴氏が2017年に後を継ぎ、現在に至っている。

祇園サンボア 中川歓子女史
カクテル:マテニー(マティーニ)

私はサンボアハイボールも好きだが、祇園サンボアでは歓子さん、瑞貴さんのマテニー(祇園サンボアでのマティーニの呼称)をぜひ飲んでいただきたい。お二人と京都祇園の飲食店やBar、京都のお祭りなどの会話をしながらキリっと冷えた一杯を頂くのは格別で幸福感に包まれる。一日の疲れも癒されるまるで魔法の液体のような仕上がりである。

五十周年を祝う会発起人挨拶 
俳優の角野卓造氏

昨年2022年に50周年を迎えた祇園サンボア。常連である一澤帆布の一澤信三郎氏、俳優の角野卓造氏、漫画家の北見けんいち氏、陶芸家の辻村史朗氏などが発起人となり、五十周年を祝う会がホテルオークラ京都で開催され、僭越ながら私もお邪魔させていただいた。

この会には祇園サンボアを愛す大変多くのお客様がお越しになり、その歴史を振り返りつつ苦労を重ねてきた歓子さんをねぎらうとともに、これからを背負う瑞貴さんを激励する素晴らしい機会となった思い出深いお祝い会であった。良いお店は良いお客様達に愛され続ける。

お会計を済ませてお店を出ようとすると、「ありがとうございました。おおきに。」と瑞貴さんが玄関外までお見送りしてくれた。こういう気遣いが、また祇園サンボアへ来たくなる理由である。

人生にはBarが必要だ。

祇園サンボア
〒605-0074 京都府京都市東山区祇園町南側570
電話: 075-541-7509

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