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[人生にはBarが必要だ] 第1回 30年間のBar巡りを振り返る

私はBar巡りを始めて約30年を迎え、北海道から沖縄、そして海外を含め数千軒のBarへ足を運び、数多くのバーテンダーの笑顔と出会ってきた。もはやBar巡りは私のライフワークとなっており、嬉しい時、楽しい時、悲しい時、つらい時、いつもそこには止まり木があった。

そんな私にお酒を教えてくれた父が今年11月に80歳で他界した。父は商社マンで、お酒が好きだったが自宅で晩酌することはまず無かったのを覚えている。札幌市すすきので飲むことが多かった父が好きだった洋酒はウイスキー。日本で最初に紹介されたスコッチウイスキーと言われるオールドパーが好きであった。

そんな父とよく飲みに行ったBarが、札幌市中央区南4条西3丁目にあるすきのビル8FのPUBLIC BAR「KOH」。関東以北最大の歓楽街として有名な「すすきの」を代表するBarの1つであり、創業年が1973年ということで、何と私の生まれ年にオープンした老舗Barである。バックバーにはシングルモルトを中心とし種々の洋酒が整然と並べられている。

PUBLIC BAR KOH 大屋康吉マスター

白のバーコートがよく似合う老練なマスターの大屋康吉さんは、数々のカクテルコンテにも入賞経験をお持ちのベテランバーテンダーであり、すすきのの生き字引でもあり、カウンター越しに戦後から現在にいたる札幌、そしてここススキノの変遷を私にお教えくださったりもする。

学生時代からかれこれ30年間通わせて頂いているが、洋酒全般、特に当時まだ全国的にもあまりなじみが薄かったシングルモルトの勉強をさせていただいた。チューリップグラスへ注がれたシングルモルト・ウィスキー達はグラスの中でその香りをひろげ蓋を明けた瞬間に熟成した彼らの香りを余すところなく楽しませてくれた。

父を偲びながら飲む一コマ

その大屋さんは私の父と同じ歳ということで親近感があり、札幌すすきのの親父というべき存在の人。その親父に父親が他界したことを伝えに先日お店へお伺いした。大屋さんは私にオールドパーのロックを差し出し、父が元気だったころの話をしながら静かに献杯の時間を提供していただいた。父を偲びつつも大屋マスターはいつもと変わらず、私を息子のように話しかけてくれた。私の気持ちも少し和らいだのは言うまでもない。

父と札幌のBarの扉を押してから、東京、大阪、名古屋、福岡、横浜、京都、神戸など大都市をはじめ、地方都市のBarへも積極的に足を運んできた。いつも楽しみなのは、バーテンダーの皆さんやお客様からその土地の旨いお店やBarの貴重な情報など、地元の方々ならではの情報を気さくに頂ける点であり、口コミに勝る情報はないと思っている。

そして何より疲れた自分をリセットしてくれる空間であり、お酒、Bar、時には音楽、映画、読書など豊かな会話が明日への活力を与えてくれる。これが30年間変わらない私がBar巡りをする理由である。

数年前に身体を悪くして大きな手術を行った。その時から、「旨いお酒は健康的な身体があってこそのもの」と思っている。それを大事にしてこれからもBar巡りというライフワークを続けていきたい。

今でも父が愛用していたジャケットを着てBarに出かける時があり、父と一緒にお酒を飲んでいる気分に浸っている。

人生にはBarが必要だ。

※ふると申します。NOTEは初めて使います。
今後、30年間のBar巡りを通して出会った全国各地のBarの魅力やおすすめカクテルなどをつづって参りたく存じます。どうぞお付き合いください。

PUBLIC BAR KOH
〒064-0804 北海道札幌市中央区南4条西3丁目3−3 すすきのビル 8階
電話: 011-531-2801




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