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蓬莱学園の復刊とラノベ図書館05 ラノベ2次文庫が成立していく条件とは

過去の名作ライトノベルを、新しい読者にも残していくにはどうしたら良いか。その条件について

後で述べる機会もあるかと思いますが、今週はライトノベル業界に絡む訃報もあり、noteを書く時間が取れませんでした。なのでちょっと短いですが書いていきます。

「蓬莱学園」シリーズを、未来に残していくために復刊するに当たり、どのように2次出版をやっていくかについては、ここ数年すごく動き回って、情報収集をしてきました。「蓬莱学園」シリーズは、まだ電子書籍という出版形態がなかった時代の作品であり、タイミング的にも電子書籍化のきっかけを失っていました。

現在では、書籍の制作はInDesignで文字やデザインが組まれるようになっており、ここからEPUBと呼ばれる形式に変換することも簡単になっていますが、かつては電子書籍はあったものの、その形式が定まっていませんでした。ようやく近年になってEPUBとスマホ以降の情報端末の発売で、電子書籍は安定して読めるようになってきたわけです。

後世に残していくという意味では、「蓬莱学園」も電子書籍化は必須ですが、ただ電子書籍化しただけでは知られる機会が殆どありません。書店での書籍販売という形態は、色々問題がありつつも残っているのは、書店に書籍が並ぶということ自体が、大きな宣伝としての意義を持っているからと言えます。

ただライトノベルの二次文庫は、どこの出版社でも苦戦しているというのが実情です。色々と考えたのですが、ラノベの二次文庫が成立するには、以下の3条件が整わないといけません。

1)ライトノベルとして最初に出た書籍が、時を超えた名作であること
2)そのライトノベルに影響を受けた商業作家が、輩出されていること
3)書籍販売として成立する最低部数を二次文庫でもクリアすること

ただこれはなかなかに厳しい条件と言わざるを得ません。1)の条件を満たすには、単に発売当初に大ヒットしたというだけでは満たすことが出来ません。読者が大人になって再読しても名作と思える要素がないとダメだということが、だんだんと分かってきます。

また2)に関して言うと、「このライトノベルが好きだった、影響を受けた」というふうに公言してくれる作家がとにかく少ないのです(この問題は後々取り上げていきます)。

そして3)に関して言うと、事前にこの最低部数をクリアできるという条件が整うかどうか見極めるのが極めて難しい。1次文庫でどれだけ売れていたとしても、読者層が入れ替わりがちなライトノベルでは本当に保証にならないということを私は幾つも見てきました。

そうした厳しい条件の中で、お、これはと目を引いて、ライトノベル二次出版を成功させたのが、古橋秀之『ブラックロッド(全)』だったのです。


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