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ゲストハウスのおもしろさと、この仕事を続ける理由。

6年くらい前、夏の終わり頃のはなし。

当時大学4年生だった僕は、札幌市内の小さなゲストハウスでヘルパースタッフとして働いていた。

カフェみたいにオシャレなリビングスペース
高い天井にシーリングファン
ロッキングチェアとカリモクのソファ
古いアップルのコンピューター
BGMはアルフレッドビーチサンダルのアルバム「One Day Calypso」

クーラーはなかったけど窓を開けると気持ちの良い風が通って涼しかったのを覚えてる。
すすきのから歩いてすぐなのに静かな場所にあって、本当に素敵なゲストハウスだった。

ヘルパーの仕事は基本的には掃除と洗濯、ベッドメイクなど。
たまにチェックイン/チェックアウトの対応をしたり。
日本中、世界中から来るゲストとお話して仲良くなったり、自分の知らない遠い世界の話を聞いたり、文化の違いにカルチャーショックを受けたり、とても刺激的で、毎日ワクワクしながら過ごしていたと思う。

働きはじめて数ヶ月経ち、クリスマス間近のある冬の日。
札幌でSMAPのコンサートとフィギュアスケートの大会が同日に開催されたことがあった。

SMAPファンと高橋大輔ファン、羽生結弦ファンでゲストハウスは満員御礼。
こういう日は決まってチェックインの時間に遅れてくるゲストがいる。
この日も遅くまでチェックインを待っていた。

リビングにはその日のコンサートの話で盛り上がるSMAPファン数名と
必死で翌日のチケットを確保しようと携帯をピコピコしている高橋大輔ファンの女性がいた。

時計の針が11時を回った頃
その日のチェックインも残り1名となり、SMAPファンのみなさんは「おやすみ」と言って2階の寝室へ入っていった。

高橋大輔ファンの女性だけはまだ必死に翌日のチケットを探し求めて携帯をピコピコしている。

その女性は携帯をピコピコしながら、いろんな話を聞かせてくれた。
ゲストハウスに泊まるのが初めてだということ、高橋大輔のこと、家族のこと、パートでラブホの受付をしていて、知り合いの不倫現場を目撃してしまった話など。
とにかく色んな話をしてくれた。

僕は眠たかったけど彼女の話がとても面白かったので、「へー!」とか「マジすか!」とか言いながらずっと話を聞いていた。

時計の針が12時を回った頃
結局その女性は翌日のチケットを諦めて寝ることにした。
「おやすみなさい。遅くまで付き合ってくれてありがとう。」
そう言って彼女は2階の寝室へと階段を登っていった。

その後すぐに最後のゲストがチェックイン。
館内の説明をし、ベッドの場所を伝えて無事その日の業務は終了。

僕はそそくさとスタッフルームに入り、吐く息が白く見えるくらい寒くて散らかった部屋で急いで布団にくるまった。

するとすぐに
コンッコンッ!
とドアがノックされた。

開けるとそこにはさっきチェックインしたゲストが立っていた。

「あの〜部屋にカギがかかっていて中に入れないんですけど〜」

マジか。

めちゃくちゃ焦った。
ゲストには玄関のカギとロッカーのカギは渡しているが
部屋のドアのカギは渡していない。
部屋はドミトリーで、どうやら先に入った人が中からカギをかけてしまったらしい。

もう12時回ってるし他の寝ているゲストを起こすようなことはできない。
困った。
必死で合鍵を探したけど見つからない。

そこで僕は閃きました。

さっきの高橋大輔ファンの女性ならまだ起きてるかも!電話してみよう!

チェックインフォームからその女性の電話番号を見つけ出し、かけてみました。
すぐに電話に出てくれて、中からカギを開けてくれました。

一件落着。
無事にゲストの皆さん、そして僕は床につくことができました。
めでたしめでたし。

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そして今日、2018年7月11日。

「絹張さんですか?私覚えてます?」

僕が現在働いているゲストハウスやすべえに、あのときの「高橋大輔ファンの女性」が泊まりに来てくれました。
しかも旦那さんと一緒に。

あのときの宿泊がきっかけでゲストハウスにハマったらしく、札幌の他のゲストハウスもよく利用しているらしい。

僕がやすべえで働いていることをどこかで知って、泊まりに来てくれたそうだ。

ゲストハウスで働いているとこういう驚きの再会がある。
毎日いろんな人に出会えることも、もちろんこの仕事の楽しいところではあるけれど、こうした驚きの再会があるのもまたこの仕事のおもしろいところの1つだなと思う。

あとは運命の出会い。
ゲストハウスで働いていると、その後の自分の人生を変えるような考え方や人生観に影響を与えるような人と出会うことがたまにある。
そういう人と出会うと「また会いたいな」と思う。
「また会いたいな」と思える人とたくさん出会えることも、僕がこの仕事を続けている大きな理由だ。

「人を大事にしなさい」
こないだおばあちゃんに言われた言葉。
これは、人にやさしくするってことももちろん含まれてると思うけど
人との出会いや繋がりを大事にしなさいって意味も込められてるのかもしれない。

せっかくたくさんの人に出会える仕事をしてるんだから、1つ1つの出会いを大事にしていこう。

コーヒー1杯分くらいのサポートを頂ければ 夜寝る前と朝起きたときに感謝の祈りを捧げます。