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地震発生から3日後に避難所で無料コーヒーを提供してみた【北海道胆振東部地震】

昨日(9月9日)札幌市清田区の避難所でコーヒーやその他ホットドリンク、お菓子の無料提供をしてきました。
思っていたよりも喜んでくれる方がたくさんいて、思い切ってやってみてよかったなぁと思いました。
受け入れてくれた避難所の方々ありがとうございました。

どうして無料でコーヒーを提供することになったのか

まずは経緯を説明します。

僕は普段はゲストハウスのマネージャーとして働いていて、仕事とは別に個人でコーヒー豆を焙煎し、たまにイベント等でコーヒーの提供をやらせてもらってます。(半分趣味で)

今回、白老町の飛生芸術祭のカフェで提供するコーヒーに、僕の焙煎したコーヒー豆を使っていただけることになり、3kgのコーヒー豆を用意していました。

しかし、今回の地震により飛生芸術祭は中止となってしまったのです。

コーヒー豆3kgも消費しきれないよー!!!!!!!!

ってことで無料でコーヒーを提供することにしました。

同じく飛生芸術祭のカフェでホットドリンクやお菓子を提供する予定だった同居人に確認してもらい、無料でコーヒーを提供できることになりました。

本当は8日から動き出したかったけど、同居人が仕事だったり僕は姉の引っ越しを手伝ったり、そもそもガソリンがなくて車が出せなかったりとすぐには動けない状況でした。

ようやくある程度の体制が整い、動き出せたのが8日の夜。
翌朝からすぐにコーヒーの提供ができるよう必要な備品などを用意しましました。

提供場所を探す

無料提供させてくれれば場所はどこでもよかったのですが、どうせなら避難している方たちにほっと一息入れてもらいたいと思い、ツイッターを使って被害の大きかった清田区の避難状況を調べて、その情報を同居人に伝えました。

9日朝、同居人が役所に確認の電話をしてくれて、まずは一番多くの避難者がいる平岡南小学校へ行くことが決まりました。

想定外のいろいろ

避難所には9時頃到着予定と伝えていましたが、紙コップなどを買い足すためにスーパーへ行くと5台可動しているレジにそれぞれ20~30人ほどの列ができており、買い物を済ませるまでに40分ほどかかってしまったため、結局避難所に到着したのは10時頃でした。まさかそんなに並ぶとは想定外でした。

避難所となっている体育館の入口前で提供準備を始めると、避難所のスタッフの方がアナウンスをしてくれていたらしく、すぐにたくさんの方がコーヒーやホットドリンクを求めて外に出てきてくれました。

到着後すぐに提供を始められるようにお湯をポットに入れて持っていったのと、すぐにお渡しできる水出しコーヒーをたくさん作って行ったので、はじめは待たせることなく提供できていました。

しかし、想定していたよりも多くの方に来ていただいたので途中からホットコーヒーの提供に時間がかかってしまいました。

避難している方だけでなく、仮設トイレを設置してくれていた業者の方や、給水車を持ってきてくれていた方や、自衛隊の方など、多くの方にコーヒーなどの飲み物をお渡しすることができました。

子どもたちもいて、みんな嬉しそうにお菓子や飲み物を受け取ってくれて、こちらも楽しみながら提供できました。
普段自分たちが通っている小学校が避難所になって、いつもとは違う学校の雰囲気になんだか少し気持ちがソワソワしてるのが見ているこちらにも伝わってきました。

実際に動き出す前は「避難所でコーヒーなんて求められているのだろうか?普通に水とかの方が喜ばれるんじゃないか?」と少し不安に感じていましたが、行ってみると「コーヒー飲みたかったのー!うれしー!」と言ってくれる方が意外にもたくさんいてめっちゃ嬉しかったです。

被害の差と被災の実感

飲み物の注文も落ち着いてきた頃、ホットコーヒーのストックをたくさんポットに入れ、13時ごろに撤収し、次の避難所に向かいました。

移動中、道路が陥没して通行止めになっている箇所や、大きく傾いた家がたくさんありました。
同じ札幌市内でもこんなに被害に差があるのかと驚きました。
いつもはニュースで見ているような災害の現場が、今自分の目の前にあると認識したときに初めてことの重大さを実感しました。

清田区の避難所で2番目に避難者が多いと聞いていた美しが丘小学校は、すでに多くの方が自宅に戻られていましたが、まだ十数人の方が残られていました。
ポットに入れたコーヒーとお菓子などを配って帰りました。

避難所のスタッフの方によると、他の避難所はもうほとんど人がいないとのことだったので、連絡をもらっていた知り合いの古着屋さんでフリーコーヒーの提供をさせてもらうことにして、一旦家に帰りました。

普段の生活に戻った中心街

午後5時から中央区の「HAM」という古着屋さんでフリーコーヒーの提供を始めました。

たまたま来た友達や、わざわざ来てくれた友達、お買い物中のお客さんにフリーコーヒーを提供し、日中とはまた違った雰囲気の中で楽しくコーヒーを淹れることができました。

さっきまでいた清田区があんなに悲惨な状況だったにも関わらず、中心街ではすでにいつもどおり飲食店に人がたくさんいて、古着屋さんにも買い物客が来る。

この状況を「不謹慎」に感じる人がいるみたいだけど、僕は全くそうは思わなかった。
だってみんな言ってる。
「早く普段の生活に戻れるように」って。

中心街はたまたま被害が小さく、早く"普段の生活"に戻れただけ。
清田区はたまたま被害が大きくてまだ"普段の生活"に戻れてないだけ。

1日で両方を体験し、両方で同じようにフリーコーヒーを提供してみて、なんだか不思議な気持ちになった。
同じく無料で、同じく喜ばれる。
けどそれぞれで「無料」の意味や「喜び」の種類が違ってくる。

避難所での「無料」は「チャリティー」で
古着屋での「無料」は「サービス」で

避難所での「喜び」は「安堵感」で
古着屋での「喜び」は「ラッキー」で

なんかそんな風に感じました。
どっちも良いんですよ。
カルディのコーヒー試飲だって普段は「ラッキー」だけど災害時にはめっちゃ「安堵感」あると思うし。

復興、復旧のために一生懸命働く人たちと
家に帰れず避難している人たちと
いつものようにショッピングを楽しみ、居酒屋でお酒を飲む人たちと
それぞれが同じ街に存在してる。
自分の住む街が被災地になって初めて見えた景色だった。

心の余白を作るコーヒー

いずれにしてもコーヒーを手にとって一息入れる時間ていうのはちょっとだけ心にゆとりがうまれるというか、時間がスローになって緊張が和らぐと思います。

避難所でも古着屋でも、みんながなんとなくまったりしてくれてるのを感じて、「あぁ俺はこのためにコーヒーをやってるんだなぁ」と思いました。

それは人のためってことじゃなくて、自分がこういう時間を過ごしたくてコーヒーを淹れてるんだなってこと。

今回初めて「避難所」に行きました。
これまでもいろんな災害が日本を襲うたびに「何かしなきゃ!」と思いつつ何も行動に移せない自分がいました。
きっとこれを見ている方の中にもそういう経験をしたことがある方もいると思います。

今回どうして僕が避難所でフリーコーヒーを淹れるという行動を起こせたのか。
昨日銭湯のサウナで一人考えていました。
いろんな要因があるなと思いました。
このことについてはまた別エントリーでまとめようと思います。

今回は本当にたまたまできただけ。
できることやるだけなんだよな。本当に。

停電していた25時間を振り返るエントリーも書きましたのでよかったらどうぞ。
はじめての経験だったし、たくさん感じて、たくさん考えて、たくさん学びました。


コーヒー1杯分くらいのサポートを頂ければ 夜寝る前と朝起きたときに感謝の祈りを捧げます。