5分でわかるソーシャルメディアマーケティング

1. ソーシャルメディアマーケティングにまつわるふたつの誤解

さて、企業活用の方法が分からないというお客様のお話をよくよくうかがってみると、ソーシャルメディアマーケティングに対する理解を妨げている要因として、次のふたつの思い込みが多いように見受けられます。

ソーシャルメディアマーケティングとはバズを起こして世間の話題をかっさらうことである
ソーシャルメディアマーケティングには炎上のリスクがあり、危険である

このふたつの思い込みはちょうど裏表の関係になっています。裏表の真ん中にあるのは「ソーシャルメディアは口コミで急速に情報が拡散するプラットフォームである」という発想。この発想が根強く頭を支配しているがゆえに、「良い話も悪い話も一気に広まる」と結論してしまうわけです。

けっして間違いではないのですが、これはソーシャルメディアの一側面を表しているに過ぎません。

2. ソーシャルメディアにはバズ以外にも多くの情報流通経路がある

Modern web social media network scheme. Flat design concept

ソーシャルメディアとはそもそも、人、企業、団体などのアカウントが有機的につながり、それぞれが情報を発信し合い、フィードバック関係を持つコミュニケーションプラットフォームのことです。つまり、これは我々が普段生活し、働いている社会そのものの縮図であると言えるのです。まさにソーシャルという言葉そのものです。

私たちの社会で流通する情報には、急速に広まる話題もありますが、少しずつ広まっていく情報もありますし、特定の狭い範囲の人たちにしか届かないニッチな情報もあります。

ソーシャルメディアにしてもまったく同じことで、その上でやり取りされる情報はバズったり、炎上するものばかりではありません。

そして、バズったり炎上するもの以外の情報を、人々が見ていないというわけでもないというのも当然リアルな社会と同じです。世間の話題の中心でなくても、その人にとって重要な情報であれば、目にする、耳にするものですし、それらの情報を(いわゆるクラスタと呼ばれる)自分と同じ関心や属性を持つ人々の間で話題にしたり、共有したりするものなのです。

例えば、企業がソーシャルメディア上にアカウントを持てば、そのような人々に公式情報を届けることができます。それは、バズを起こすものではないかも知れませんが、企業が出す信頼度の高い情報として、関心の高い人々の役に立つことができます。

その逆で、アカウントを持たなければ、出典の不確かな誤った情報が流通し、それが企業や製品、サービスに対するイメージを形成していくということにもなりかねません。ソーシャルメディア上で活動を行わないことが、炎上のリスクを高めるということすら考えうるのです。
3. ソーシャルメディアを欠いたマーケティングはなぜ時代遅れなのか

例えば、公式情報ならウェブサイトを見てくれれば問題ないと思われるかも知れません。しかし、それではもう不十分になってしまっているのがインターネットの現状です。

2000年代に電通が提唱した購買行動プロセスモデルは「AISAS」でした。これはマス広告時代のモデルAIDMAに替わるもので、インターネットという要素が入っています。

AISASはAttention(注目)→Interest(関心)→Search(検索)→Action(購買)→Share(情報共有)の頭文字を表しています。その順番通りの頭文字が表すプロセスを経て、消費者は購買にいたると説明されていました。

Search(検索)というパス(通過点)が当時のインターネットがどういうものであったかを如実に示しています。つまり、検索プラットフォーム(GoogleやYahoo!など)が主導するインターネット空間です。

Share(共有)というソーシャルメディアらしいところもあり、それが新しいAttention(注目)を生んでいくわけですが、それにはブログやネット掲示板、リアルの口コミなども含まれます。あくまでインターネットのみを表したパスはSearchです。

しかし現在ではこのSearchという行動が起きにくい、あるいは起きてもそれはソーシャルメディア上で行われるということになってきているのです。

例えば、次のデータをご覧ください。以下はオンラインメディア向け解析ツール「Parse.ly」が約400のオンラインメディアのユーザー流入元を解析したグラフです。

2014年頃からインターネット上の送客数がFacebook経由とGoogle経由で並び始め、2015年7月の段階ではFacebookがGoogleを上回っています。

米国企業のデータなので、主に英語圏のメディアを取り扱ったものですが、米国の数年後を後追いするのが日本のITだという通説に従えば、私たちの環境も早晩このように変化するのは明らかです。

実際、弊社のクライアント企業のウェブサイトでも、ソーシャルメディアからの流入が検索流入を上回っている事例は珍しくありません。

検索を経て情報を集めなくても、ソーシャルメディアをはじめとするインターネットメディア上に多くの情報が行き交っているので、それを消費するだけで、可処分時間は費やされてしまいます。

一時期ネットサーフィンという言葉が流行りましたが、今は興味関心のあるアカウントや友人とつながったソーシャルメディア上にボートを浮かべて寝そべっているだけで、自分にとって面白いと感じるありとあらゆる情報が、向こうからどんどんやって来てくれる時代なのです。

若い世代になればなるほど、検索エンジンよりも、ソーシャルメディアを情報収集源とする傾向は強くなります。

また、ITのトレンドは若者から始まり、上の世代に波及していくのが通例であることを考えれば、全世代的に検索からソーシャルメディアに、情報収集の手段がシフトすることも、時間の問題かもしれません。

ということが何を示すかといえば、ソーシャルメディアを欠いたウェブマーケティングはもはや充分ではないということです。ウェブサイトを充実させたり、SEOやSEMを一生懸命やってもリーチできないインターネットユーザーが増えてくるからです。

4. バズと両輪をなす、長期的なアカウント運用

バズを起こすソーシャルメディアマーケティングは重要です。うまくいけば費用対効果も非常に高く出るでしょう。しかし、話題の中心になれるかどうかというマーケティングには、イチかバチかという性質がどうしても付きまといます。

ギャンブルのように確率が低いとは言いませんが、五分五分であることはどうしてもまぬかれません。

一方で、アカウント運用やソーシャルメディア広告、ソーシャルメディア上でのキャンペーン活動を適正に行い、一歩一歩着実に消費者との関係を積み上げていくという方法もあります。

ソーシャルメディアは社会の縮図であるということは前述しました。そう考えると、アカウント運用、それを中心に行われるソーシャルメディア広告やキャンペーンは、企業としてスポンサーするテレビ番組を持つ、スポット広告を出す、プロモーションキャンペーンを行うということに置き換えて考えることもできます。

それらを企業としてより消費者と近い距離で、時間と場所に制約されず、より直接的でインタラクティブに行えるのがソーシャルメディアと理解していただけるとイメージしていただきやすいかも知れません。そして、各ソーシャルメディア上での活動は、長期間にわたり運用されるアカウントという一貫性を通して、ユーザーとのつながりを生み、コミュニティを形成していきます。

企業や製品・サービスのカラーは出しながらも、ユーザーにとって役立つ情報を配信したり、少しくだけた親しみやすい顔を見せてみたり、ユーザーの疑問質問に真摯に答えていくことがコミュニティの核になっていくのです。

コミュニティで積み重ねたコミュニケーションの履歴は、そのまま企業に対する信頼度、好意度、親密度となって跳ね返ってきます。ソーシャルメディアマーケティングで多用されるいわゆるエンゲージメントという言葉で表される関係性です(それらが数字で確認できるのもソーシャルメディアの強力なメリットです)。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?