時給が良く、家から近いというだけで選んだコンビニのバイト。

普段は夜中しか入らないのだが、たまたま人が足りなく夕方に勤務することになった。

なんか起こりそうだなぁと思いながら全く感情のこもっていない接客を続けていると1人の少年がアイスを片手にレジへきた。

いつも通り商品のバーコードを読み取り｢160円になります｣と言うと少年が急に涙目になった。

え、なんか俺悪いことした！？と焦りに焦ったが少年がポッケから150円を取り出し｢これしかない…｣と今にも号泣しそうな震えた声で言った。

子供の涙には滅法弱いので、とりあえず10円はいいから持っていきなと言いその場は事なきを得た。

もちろんその後自分の財布から10円は出しておいた。

たった10円でその子が喜んでくれるならそれでいい。

その子の親では無いし厳しく接する理由も無いのでこれで良かったのだと思う。

仮に少年が嘘をついていたとしても別にいい。

いつか大人になった時に気付いてくれれば。

そして他人に優しく出来る人になってくれれば。

それからまた態度の悪いおっさんなどの接客をしていると先程の少年がまた来ていた。

横には母親らしき人もいた。

少年に呼ばれたのでレジをもう1人に任し少年のところへ向かうと10円とチョコレートを1つ手渡された。

母親らしき人が｢先程はうちの息子がすみませんでした。ありがとうございます｣と私に頭を下げた。

気にしないで下さいという旨を伝え少年に｢アイス美味しかった？｣と聞いたら｢美味しかったよ！｣と笑顔で答えた。

あそこで追い返していれば決して見れることがなかった笑顔。

たった10円でこの少年が笑顔になってくれたなら私は10円以上のものを返してもらえた。

その後一緒にバイトをしていた高校生に｢なんか嬉しそうですね｣と言われ恥ずかしかったが…笑

子供の笑顔って凄いなぁ…

なんで見るだけでこっちも笑顔になるんだろう。

何も曇りのない純粋な心が真っ直ぐ伝わってくる。

だから私は子供が大好きなのかもしれない。

嬉しい時も悲しい時も真っ直ぐ感情を伝えてくる。

いつかは汚れた大人の世界を知りその純粋さも失われていく。

せめて今だけは心から笑っていて欲しい。

子供の笑顔がこの世で1番美しいのだから。