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〇〇の国デンマーク

出張で北欧デンマークへ行ってきた。
自身初のヨーロッパだったので、日本とは根本から異なる文化をめちゃくちゃ肌で感じた。そのうち4つを備忘録代わりに文字起こししておく。

◾️信頼の国デンマーク🇩🇰


一つ目のキーワードが「信頼」だろう。言葉のとおり人や組織同士が信頼し合っているのを心底感じた。 

所得税の税率が約55%で世界一高いと言われ、そこに25%の消費税がのしかかる。しかし、国民は「税金を取られてる」とか「納めてる」という意識がないらしい。自分たちが医療福祉・教育その他サービスを受けるためにお金を預けているという感覚なのだとか。
この国民と行政の信頼関係はなぜ生まれているのか?

個人的な答えの一つがキャリアの流動性。
デンマークは欧米で一般的なジョブディスクリプションが明確であり、それに基づき、採用が行われる。つまり、「コレをやれるポスト・能力」で採用され、その目的が達成されれば、辞める・もしくは解雇が普通らしい。行政機関でもだ。

ゆえに人生で8度ほど転職するのが平均らしく、同じ会社(職位)に長い間身を置くのは逆に評価されない要素になってしまうのだという。日本のような新卒一括採用からの終身雇用とは程遠い社会だ。

ここに信頼を生む要素があると個人的には感じている、結局は誰もが行政機関に勤めることがあるのだ。お互い様であり、いつか自分がその立場になることが普通にあり得るのだ。ゆえに組織に閉鎖性はなく、短い期間でも明確な目的達成のために取組む、オープンな社会なのだ!だからこそ国民と行政はもちろん、個々人の信頼関係にも繋がっていると感じた。

もう一つが「利用者目線」の徹底だ。
様々なサービスでコレが徹底されていること。

日本の福祉現場は分からないけど、老人ホームでは職員のトレーニングルームがあって、様々な対応を体験できる。その際、施設利用者側で職員が体験し、相手の立場を理解しようとするらしい。

また、デジタル化の様々なシステムにおいても開発段階でユーザーにとっての使いやすさをめちゃくちゃ意識するとのこと。だからこそシンプルであり、使いやすいからこそ国民に馴染むのもあるのだろう。

こういった意識がそこらじゅうにあるからこそ国民は国や行政をはじめ、お互いを信頼する関係が当たり前なのだろう。相手目線で物事を考えるのが常識なのだから。

デンマークは信頼が基盤にあって成り立っている国だった。

◾️インセンティブの国デンマーク🇩🇰


次に「インセンティブ」である。
デンマークの代名詞としてデジタル化が挙げられる。1968年にCPR(個人番号)が発行され、今ではこれに紐づくサービスが2000以上あるという。

今、日本のマイナポータルから享受できるサービスとの差は歴然だろうが、その中身も面白い。

一つのサービスに行政機関からのメールがある。というのも2011年に国は国民への通知で行政が紙を使用することを禁じたのだ。

普通ならデジタル機器が苦手な高齢者からの反発あっても良いようなものだ。もちろん日本のように講習会等で使い方は教授しているとのことだが、医者からの診断書がない限りメールシステムが絶対とのことで紙を使わないことに頑なにこだわるら、

ではなぜ受け入れられるのか?
その答えがインセンティブの設計だ。というかメールを見ないと損するようになっている。

給付金などの類もすべてこのメールで案内が届き、自分で対応しなければ給付金はもらえない。気付かないと言った言い訳は通じないらしく、自己責任になるらしい。

ちなみに兵役の案内もコレで届き、従わないと罰則が発生するとのこと、何とも恐ろしいモノだがデジタル化の歴史をみるに、試行錯誤してきたのだろうが、しっかり国民が享受できるサービスが整った段階でこのメールシステムを入れてるように感じた。

もう一つ印象に残ったのが缶やペットボトルのデポジットシステムだ。

デンマークのリサイクル率は世界有数の高さらしい。シンプルと言えばそうなのだが、ビールやジュースなどの販売額には1クローネ〜3クローネが付加されてる。

1クローネは20円強なので20円から60円を余分に払っているということになる。ちなみにビールの場合、スーパーだと300円くらいで買えたが、コンビニに行くと600円くらいはする。

コレをスーパー等に回収する機械が設置されている。ここで面白いのが、現金では還元せず、その店舗で使えるポイント・割引券に変換するのだ。デンマークは超キャッシュレス社会かつ物価が高いからこそ、このインセンティブは効果的だと思うし、リサイクル率に貢献していることは間違いない。

要するにデンマークという国はサービスをデザインする際のインセンティブの設計が非常に上手なのだ!コレは先ほどの利用者目線にも通ずるところがある。

◾️自転車の国デンマーク🇩🇰


そして、まちづくりの中で最も印象的だったのが「自転車」を最優先交通手段としていることだ。コペンハーゲン周辺に滞在したので郊外は少し異なる可能性があるが、都市部での交通手段はもっぱら自転車だ。

しかも日本のような細い自転車道ではなく、車道幅員と同レベルで整備されている道路も珍しくない。交差点では自転車利用者が足を掛けて待てる設備があったりして、ユーザー想いだ。

そして驚きなのは歩行者との優先順位。日本では歩行者優先であり、車両である自転車が譲るのが一般的であるがデンマークは違う。自転車が優先であり、歩行者が気をつけなければならないのだ。バスから降りる際に通訳からしつこく言われたのが「自転車をよく見てから降りてください」だった!自転車にぶつかりそうになって怒られてる歩行者を見かけたケースもあり、文化の違いを感じた。

郊外はともかく都市部でなぜここまで自転車道が整備できるのか??
車道を削っている(片側1車線道路が結構多いのは事実)だが、それでもセンターに公園や憩いの空間を設けている道路も多くある。ゆうに30mを超える幅員の道路が多いのだ。

コレはあくまで仮説だが、軍事用に設けられた道路を活用しているのでないかと推測する。コペンハーゲンの建物は基本的に200〜300年以上経過している歴史ある建造物ばかりだ。つまり、何百年も前からこの幅員なのだ、その当時になぜこんな幅員が必要だったのか?と考えると一つの答えが軍事用だ。結果として自転車中心の社会を可能にする要因の一つとなっており、2025年でカーボンニュートラルを目指す環境立国の一つ要素になっているのではないか。※もちろんメインは風力発電等だろうが。

◾️幸福の国デンマーク🇩🇰


最後に「幸福」だ。
デンマークは世界一幸福度の高い国と言われている。高い税金によって保障される医療福祉サービスが影響しているのは間違いない。

が、個人的にコレだと感じたのは「自身で選択していること」だ。どういうことかと言うと、シンプルなのが高齢者福祉施設で、延命治療を希望するか否かを個人が選択しており、それを全職員が理解できる体制を整えていた。個人の意思や尊厳を重んじているのだ。

また、子どもに対する親の選択では、小学校入学を6歳か7歳の歳のいずれかで選択できるとのこと。つまり、小学校時点で同級生と言いつつ同い年ではないのだ。その子の成長に合わせた選択肢ができるようである。

さらに、ジョブディスクリプションが影響していると思うが、仕事においても責任と意思決定が現場に降ろされている印象を受けた。無駄な会議は極力避け、現場やお客様と向き合う時間の確保に注力しており、意思決定を上の役職で持ちすぎず、現場に降ろしているのだ、デジタル化の目的もやはりそこにある印象だった。

その意思決定のための要素をデータとしてきっちり可視化して、それを判断材料として改善を繰り返していく。もちろんそのために必要なメンバー間の会議は最小限のメンバーで行う。非常に合理的で効果的だと感じた。

話は逸れたが、要するにデンマーク人は日常茶飯事で自分が色々な選択をしている。むしろ社会が自身で選択させる仕組みを軸にできている。自助→共助→公助の役割がハッキリしていて自助の範疇が結構多いのだ。

自分の人生を、自分で選択して生きられる社会。だからこそデンマーク人は幸せなのではないだろうか。

また、コペンハーゲンこそ都市であり日本にもある娯楽の類も多少あるだろうが、一歩郊外に出るとそれとは異なる雰囲気を感じた。モノや娯楽等の消費による幸福感を得る国民性では無いのではないかと思う。

◾️まとめ


土台がまったく日本と異なる国デンマーク。
もちろんそのまま日本に転用できるモノなどほぼないだろう。文化が違うのだから当たり前だ。それでも12年振りの海外はやはり刺激をたっぷりもらえたし、糧となる材料もあった。ウェルビーイングとデジタル化に向き合っていく中で決して無駄な国ではなかった、ありがとう。

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