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ハイランド讃歌の話その2

河野企画代表、チューバ奏者、指揮者の河野一之です。

前回に引き続き

フィリップ・スパーク作曲のハイランド讃歌についての話その2。

もくじ

さてそもそも

ハイランドとは?

というところから書いていく。

HIGHLAND

ハイランド= Highland、その名の通り”高地”という意味がある。反対の意味はロウランド=Lowlandだ。

この名が示す通り(正確には決められていないが)、スコットランドの北西部の半分がハイランド、南東がロウランドと呼ばれ、日本で言えば関東や関西のような地域区分として名前がついている。

ケルト系の言語であるスコットランド・ゲール語やこのゲール語に影響を受けたハイランド英語と呼ばれる言葉を話す人がいたが、1707年のイングランドとの合同以降、キルトやバグパイプの禁止といったスコットランド独自の文化の取り締まりにより多くの話者を失った。

Scottish Gaelic


Highland"s"というSが付いた題名が付いているのでこの地域に住む人々や自然、城、文化、それら全てを総称しHighlands=ハイランズと表し、それらを讃える歌=HymnとしてHymn of the Highlandsという名前が付いている。

最強の傭兵、バグパイプと共に現れるHighlandersScottish Gaelの文化は読んでみるととても面白いので強くオススメする。

ARDROSS CASTLE

その1で書いた通り、地名や城の名前が各曲に付いているこの組曲の第1曲目。Ardrossはカタカナで無理やりつければ「アードロス城」という名前となる。

スコットランドの第2の都市、グラスゴーから約200kmほど北に行った地域。Google mapやweb siteをみてもらえればわかるが本当に何もない、自然豊かな場所だ。

スパーク自身も書いている通り、地名や城の名前を題名にしただけでそれらにまつわる旋律や描写というのは実際はほぼ無い。

実際のArdross Castle

城自体は19世紀に建造されたスコットランドの男爵クラスが住まわれるような建築様式をとられ、現在では結婚式、会談、プライベートな会食など様々な会で使われる場所となっている。

このArdross Castleを指揮する上でイメージしている良い写真があったので共有しておく。

画像1

Ardross Castleからはじまる物語。

奏者の方々に理解してもらいやすいように曲から感じるインスピレーションを言葉で説明することがある。

それは第六感のように、音を聞いたら色を感じる人のごとく、僕は音楽を聞くと映画のように映像や雰囲気も同時に伝わってくる。それを言葉にしたものだ。

もし持っていたら音源や楽譜と一緒に読むとわかりやすい。

冒頭
霧に包まれる緑の丘

2小節目〜(0.08~)
T.Hornソロは現世で演奏される旋律
Baritoneソロは過去で演奏されている旋律
この2つが共演される。そして13小節目に向かって徐々にBaritoneがいる過去のArdrossへ

13小節目〜(0.56~)
霧が晴れていくと共に現世からいつの間にか過去の世界へタイムトリップ
合間に入ってくるPerc, Bass, Trom, Corは風や天使の梯子を表す。

14小節目〜(1.08~)
草原にある丘の上に佇む一人のバグパイパー

24小節目〜(1.43~)
場面が変わり草原の街道を歩く進む馬車の描写が車輪から徐々に全体像が映るように出てくる。

27小節目〜(1.55~)
主人公的な青年が街道を歩く様子、あまり裕福ではない中世の農民が着ているような少し粗末な服。麻の袋には生活用品が入っている。

35小節目〜(2.27~)
湖の場面、湖の湖畔で遊ぶ乙女。
そばにあるその乙女が住む城下町は活気があって楽しげ。英国には珍しく陽の光も降り注ぎ快活な感じ。

42小節目〜(2.58~)
アードロス城の城門の場面。城門が開くシーン。
城の門が開き威風堂々の姿が映し出される。

54小節目〜(3.47~)
馬に乗った鎧を着た兵士たちが城のそばで演習を行うシーン。

144小節目〜(5.09~)
雨上がりの城、自室から外を眺める姫の横顔。
一輪のバラ、石造りの城に垂れる一筋の雫

154小節目〜(5.41~)
城、城下町、Highland地方を徐々に移していくような上空からの全体図。
カメラが引いていくと共に大河や湖も映し出されてくる。

165小節目〜(6.17~)
二人の姫の歌

170小節目〜(6.38~)
リスなどの小動物が森の中で活動している様子。

Ardross Castle、河野のイメージはこんな感じ。

その3に続く。

PS:
Youtubeに音源はアップもされているし、実際のArdrossの写真を貼ればより早く分かりやすい記事をかけるのはわかっているけれども、このnoteで使用しているのは全て著作権フリーのもののみ。Youtubeに違法アップされている音源をここにあげることはブラスバンド業界の衰退を招くという思いから自重している。



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