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最高の休日10

カチッと音がする。ケトルが沸騰したようだ。真帆はマグカップに湯を注いだ。カップの中にはとむぎ茶のパックが入っている。今日買ったものではない。冷蔵庫のドアポケットに以前買ったものが残っていたのだ。
寝室の2段ベッドをのぞくと、理人と奏人が寝息をたてていた。ボーダー柄のパジャマを着ている。

何という1日だったんだろう。
キッチンに戻り、マグカップを手にシンクの前に座り込む。はとむぎ茶の香りが鼻まで届く。一口飲むと、大丈夫、ちゃんと味が感じられた。

「アナフィラキシーですね」
真帆を診察した医師はそう言い奥のベッドで横になるよう指示をした。すぐさま点滴が必要らしい。
「アーモンド…?でも、前に食べた時は…」
「大人になって体質が変わることもあります」
医師は表情を変えず答える。真帆は看護師に促され、奥の処置室に移動した。そこでは別の看護師がベッド脇に立ち、点滴の準備をしているようだった。

「じゃあ、おくすり入れていきますからねー、途中具合悪くなったりしたら、またいってくださーい」
看護師は横になった真帆の返事を待たずに右腕に針を指した。ここから薬が体内にまわるらしい。

ポタポタ、パックから薬が落ちてチューブに流れる様子をみる。首だけ右に傾けているうせいか、だんだん肩も痛くなってきた。だが、薬の効果だろうか、とてつもない身体のだるさが和らいでいき、意識がどんどん鮮明になってくるのがわかった。

スタバで食べたお菓子でアナフィラキシーを起こすなんて…。でも病院が同じ施設の3階にあったのは良かった。あの母親、すごく心配してたけど振り切ってきちゃったな…。そういえば紙袋、3つとも椅子に置いてきちゃった、あとでとりにいかなきゃ。点滴1時間ぐらいかかるんだっけ?2時には家に居られるよね、良かった、奏人が帰ってくる時間には間に合う…。
真帆はさっきまでの出来事、今の状況やこれからのことを考えた。点滴が落ちる音が妙に大きい。




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