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死後、フロッピーディスクから見つかった安部公房の遺作『飛ぶ男』が2月28日に発売

というタイトルの記事が目についた。

砂の女の記事で書いた通り、私は安部公房の作品のファンである。また、著者の死後にフロッピーディスクから遺作が見つかるというのは、日本文学史上初のことだと言われており、センセーショナルで非常に魅力的な見出しの記事だ。

しかし、よくよく内容を読んでみると「飛ぶ男」は、安部公房が急逝した翌年にすでに単行本で刊行されている。つまり、完全な新作が発掘されたわけではない。どういうことかというと、単行本化された原稿は、安部公房の死後に夫人によって編集されたもので、今回刊行されるものは、未完の状態のオリジナルの原稿(データ)そのもので、生誕100周年のイベントに合わせて、改めて文庫化をしたようだ。

なお、私は安部公房の作品のファンであるが、砂の女箱男などの代表作のほか、4冊程度しか読んでいない。なぜ未読の作品がたくさんあるかというと、私には受け入れられないからである。面白いと思える作品もあれば、読むのがしんどくなる作品もある。私がさほど読書に慣れていないために、難解で理解ができないのだと思うが、私に言わせてみれば、結構無茶苦茶な作品も多い。例えば、以前い書いた記事でも触れた、小島秀夫監督のDEATH STRANDINGに登場する「なわ」について、これも正直しんどいタイプの作品である。登場人物がそれぞれ全員ぶっ飛んでいて、さらに、物語の状況も、展開も、ストーリーも、全部ぶっ飛んでいる。淡々とぶっ飛んでいるので、読んでいてとても不安になる。そんなわけでファンではあるけど、未読の作品も多く「飛ぶ男」についても知らなかった。

前置きが長くなったが、でも「飛ぶ男」は購入した。
紙か電子かで迷ったが、今回はKindleで購入した。私にとって、電子はいまだに相対的に劣勢ではあるが、メリットもたくさんある。その一つが、読みたいと思ったその瞬間に読み始めることができること。
ワープロでタイプした文字が、文字コードの羅列として電子データとして保存され、紙に印刷されることなく、気まぐれな通勤中のサラリーマンの携帯電話端末に直接転送される未来を、安部公房は想像していただろうか。私は、きっと想像していたんじゃないかと思う。日本文学史上初めてフロッピーディスクから遺作が見つかる作家になったことも含めて。
そう考えて、この作品は電子で読むべきだと思った。

肝心の内容は、穏やかにぶっ飛んでいる。すごくいい。
Kindleで買ったのも正解だったと思う。

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