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推し 芥川比呂志

幼稚園の頃から何かのオタクをして生き、オタクではない自分が想像できない人間こと僕です。

そんな僕は、高校の頃から芥川龍之介の長男で俳優の芥川比呂志を推してます。文字通り、推しとして応援しています。

1.芥川比呂志

Wikipediaに載っているようなことをいまさら書く必要もないように思いますが、一応基本情報。
芥川比呂志は1920年3月30日生まれの日本の俳優です。
主な活動舞台はミュージカル(チェーホフやシェイクスピア)で、劇団四季の名付け親としても有名です。
文学座の弟子には、橋爪功や樹木希林、北村総一朗など名だたる俳優がいます。比呂志さんすごいね。
他にも映画やドラマにも出演しています。エッセイストとしても活動しており、三冊のエッセイ集を発売しています。(違ったらごめん)
61歳の時に肺結核で亡くなるまで、日本演劇界に大きな影響を与えました。

弟は作曲家の芥川也寸志(三男。次男多加志は戦死)。数々の映画音楽やドラマ音楽も作曲した日本を代表する昭和の作曲家の一人です。芥川家の血すごいね。

2.芥川比呂志との出会い

当時日本の古い映画なんて一本も観ていなかった僕がどうやって芥川比呂志に出会ったのか。

きっかけは2018年3月に放送された小泉今日子の音楽番組『マイ・ラスト・ソング』でした。当時又吉直樹のオタクだった僕は、彼がゲスト出演したこの番組を見ていました。
そこに同じくゲスト出演した樹木希林が自分の女性観、女優観について語っていました。そのなかで印象的だった「女性は古風なほうが美しい」(一言一句同じではありません。こんな感じだった)という言葉。
おかしなことを言うなあ。樹木希林はどちらかというと前衛的ではなかったかな。と思いました。
その言葉は、自分の尊敬する師匠芥川比呂志のものだと続けて言っていました。
中学の頃、芥川龍之介を読んでいた僕は、その変わった名字に興味を持ち、すぐに検索しました。するとやはり、芥川龍之介の息子でした。

そんなことより、その容姿の美しいこと。
三船敏郎や勝新太郎や石原裕次郎のような男くさい(この言葉が正しいかは分かりませんが羅生門の三船のような感じ)昭和俳優しか知らなかった僕は、甘い顔立ちにタートルネックが似合う昭和の俳優を見て度肝を抜かし、そこからはあっという間に「沼に落ち」ました。

気づいたときには彼のエッセイ集を集め、DVDになっている映画を買い、オークションで写真と写真集とサイン色紙を集めていました。オタクの鑑かな。

そのエッセイからにじみ出る知性にますます惹かれていきました。俳優としての理念や勉強熱心な姿勢はいつまでも謙虚な人であるように感じます。
芥川龍之介は彼にとって一人の父親だということがにじみ出る愛らしい龍之介パパのエピソードを読みながら、こんなかわいがっていた息子をおいて死んでしまうなんて、と内なるリアム・ギャラガーがわめきました。

孫弟子にあたり、芥川比呂志を敬愛する橋爪功はバラエティに出るとよく比呂志さんの話をしてくれるのでチェックしています。
エッセイからは読み取ることのできない、比呂志さんの酒癖など破天荒な部分を聞くことができて最高です。
特にホテルのバーでバーテーブルに乗り、傘でフェンシングを始めたというエピソードが好きです、かわいいね。

3.映画俳優・芥川比呂志『煙突の見える場所』

ミュージカル俳優として活動していた比呂志さんですが、昭和の頃は撮影していなかったのか、その映像は一度も見たことがありません。悔しい……

映画俳優としての芥川比呂志は、若いころから頭の良く優しいキャラクターを演じることが多かったように思います。

そのなかでも僕が特段お気に入りの映画は1953年公開、五所兵之助監督の『煙突の見える場所』です。
椎名麟三の小説『無邪気な人々』が原作の今作には、見る場所によって見える本数の違う〈お化け煙突〉がある北千住で暮らす二人の男女とその二階で下宿をする二人の若い男女のもとに一人の赤ん坊が置き去りになるという物語です。

比呂志さんは二階に下宿する、税務署で働くまじめだけどどこか抜けている若い男久保健三を演じています。
この映画のすばらしさはまた論考を書くとして、とにかく比呂志さんの可愛さについて言いたい。話したい。

隣の部屋に下宿する高峰秀子様演じる仙子さんのことが気になる健三は壁に「仙子さんに気をとられるな勉強に専心せよ」と書いた紙を貼っています。はいかわいい。
その紙を仙子さんに見られて笑われた健三はその紙を急いでぐちゃぐちゃに丸めます。はい、かわいい。
その後、たい焼きをプレゼントします。部屋に一枚しかない座布団を仙子さんに渡して。そんな仙子さんには「なーんだたい焼きか」とか「あんた出世しないわね」とか言われる始末。不憫すぎてかわいい。

四人のもとに赤ちゃんが訪れた時は、赤ちゃんに驚きながらも、脱いだ手袋を使って赤ちゃんをあやします。え??????なに??????すき!!!!!!!

高峰秀子様は自立した女性像を演じることが多いですが、なかでもこの仙子さんはいわゆる男性に頼る(自分で選択することを面倒くさがる)同期に対し、「結局は自分で決めるほかないんじゃないの」と言うなど先進的な女性像が色濃く反映されており、健三とのパワーバランスもなかなか面白いものです。
昭和映画に触れたことがない人でもスッと入り込める映画として、映画自体もおすすめです。

比呂志さんの演技はどこか現代的な側面があるように感じます。
もちろん言葉遣いやイントネーションは昔の東京の人らしいのですが、ミュージカルをやっているからか、表情の使い方、目線、立ち姿など非常に繊細で画質が良くなった現代の映画でよく見られるような演技だと感じます。僕だけかな?

4.まとめ

とにかく芥川比呂志は最高だと僕が思っていることが伝わったなら嬉しいです。
僕は初版本や古本にはたいして興味はありませんが、比呂志さんの直筆サインがあるなら話は別です。
某初版収集家の研究者の方が企画した芥川比呂志直筆サイン入り初版本は絶対に手に入れたい思いでグッズをかき集め写真を撮ったことを覚えています。もちろんいただきました。(マウント)
比呂志さんが亡くなって40年が経ちましたが、亡くなられた樹木希林や橋爪功が師匠の話を語り継ぐように、僕もいつまでも彼を愛したいと思います。

映画見てね。たぶん、もうパブリックドメインだと思うよ。

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