解析入門I - 実数列の極限3


この記事は解析入門I (杉浦光夫 著)の読書ノートです。


自然数、整数、有理数、実数が定義できたところで実数列の定義を再度見直すことにする。

自然数$${\mathbb{N}}$$から実数$$\mathbb{R}$$への写像$${f}$$を実数列という。しばしば$${a_n \equiv f(n)}$$と記述し、$${f \equiv (a_n)_{n \in \mathbb{N}}}$$と書く。$${a_n}$$を数列$${(a_n)_{n \in \mathbb{N}}}$$の第$${n}$$項という

実数列

この数列に対し、極限というものを定義する。「これは$${n}$$が十分大きくなる時、$${a_n}$$が近づく値」として定義される。近い、遠いの概念は距離$${d(a,b) \equiv |a - b|}$$によって定義される。

さて、数列$${(a_n)}$$が限りなくある値$${a \in \mathbb{R}}$$に近づくということは、$${|a - a_n|}$$の値が限りなく$${0}$$に近づくことに等しい。実際に距離が$${0}$$になるということは、何かしら$${n \in \mathbb{N}}$$が存在して$${a_n = a}$$となることだが、この性質はそこまでは要求しておらず、あくまで限りなく$${a}$$に距離が近くできるということを言っている。

厳密に定義すると、次のようになる。

実数列$${(a_n)_{n\in\mathbb{N}}}$$を仮定する。任意の$${\varepsilon \gt 0}$$に対し、ある$${n_0 \in N}$$が存在し、$${n \ge n_0}$$なる全ての$${n \in \mathbb{N}}$$において$${|a - a_{n}| \lt \varepsilon}$$が成り立つような実数$${a}$$が存在するとする。このとき、実数列$${(a_n)}$$は収束するといい、$${a}$$を実数列の極限という。極限は$${a \equiv \lim_{n \to \infty} a_n}$$と表す。逆に数列$${(a_n)}$$がどんな$${a \in \mathbb{R}}$$にも収束しないとき、$${(a_n)}$$は発散するという。

収束・発散と極限

実数列に限らず、より一般的に距離空間として収束を議論するときは$${\varepsilon}$$近傍という概念が使われる。これを定義すると次のようになる。

$${a \in \mathbb{R}}$$と$${\varepsilon \gt 0}$$に対し、$${U(a, \varepsilon) \equiv \{x \in \mathbb{R}: |a - x| \lt \varepsilon\}}$$を$${a}$$の$${\varepsilon}$$近傍という。

近傍

近傍の定義を使うと、収束の概念は次のように置き換えられる。

実数列$${(a_n)_{n\in\mathbb{N}}}$$を仮定する。任意の$${\varepsilon \gt 0}$$に対し、ある$${n_0 \in N}$$が存在し、$${n \ge n_0}$$なる全ての$${n \in \mathbb{N}}$$において$${a_n \in U(a, \varepsilon)}$$が成り立つような実数$${a}$$が存在する

収束の同値条件1

これをもっといいかえると、$${n_0}$$を選択したら、その先のすべての$${n \in \mathbb{N}}$$については$${a_n}$$が$${\varepsilon}$$近傍に入ればよい。つまり、数列$${(a_n)}$$から有限個を取り除いたすべての$${a_n}$$が$${\varepsilon}$$近傍に入ればよいとなる。

実数列$${(a_n)_{n\in\mathbb{N}}}$$を仮定する。任意の$${\varepsilon \gt 0}$$に対し、有限個(いくつかは$${\varepsilon}$$の値によって変わる)を取り除いた全ての$${a_n}$$において、$${a_n \in U(a, \varepsilon)}$$が成り立つような実数$${a}$$が存在する

収束の同値条件2

この収束の定義の言いかえによって、次が成り立つ。

数列$${(a_n)}$$と$${(b_n)}$$において、有限個の要素のみが異なる $${\Rightarrow}$$ 数列$${(a_n)}$$と$${(b_n)}$$は収束するか発散するかは等しい。また収束する場合、その極限は等しい

有限要素の取り換えと収束

実際、$${(a_n), (b_n)}$$の中で要素が異なるような有限添字集合を$${I = \{n \in \mathbb{N}: a_n \neq b_n\}}$$としよう。これは有限集合なので、最大値$${\max I}$$が存在する。この時当然$${\mathbb{N}(\max I +1)}$$も有限集合である。$${\tilde{\mathbb{N}} \equiv \mathbb{N}-\mathbb{N}(\max I +1)}$$と置くと、任意の$${n \in \tilde{\mathbb{N}}}$$に対して$${a_n = b_n}$$である。
以上から、$${(a_n)_{n \in \mathbb{N}}}$$の収束条件と収束する際の極限は$${(a_n)_{n \in \tilde{\mathbb{N}}}}$$と等しく、ゆえに$${(b_n)_{n \in \tilde{\mathbb{N}}}}$$や$${(b_n)_{n \in \mathbb{N}}}$$とも等しい。

つまり同様にして、数列の収束条件と極限は有限個の要素の操作によって変わることはないことが示せる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?