解析入門I - 順序1


この記事は解析入門I (杉浦光夫 著)の読書ノートです。


集合$${X}$$に対し、その直積$${X \times X = X^2}$$の部分集合のことを$${X}$$上の二項関係という。ある二項関係を$${L}$$とし、$${(a, b) \in X^2}$$が$${L}$$に属しているとき、$${a}$$と$${b}$$は$${L}$$の関係にあるといい、$${aLb}$$とかく。

順序は次の性質を満たす、集合$${X}$$上の二項関係$${\le}$$として定義される。

  1. すべての$${a \in X}$$に対して、$${a \le a}$$

  2. $${a \le b, b \le a}$$ならば、$${a=b}$$

  3. $${a \le b, b \le c}$$ならば、$${a \le c}$$

順序となる関係の例として、ある集合$${X}$$のべき集合$${P(X) \equiv \{A: A \subset X\}}$$に対する順序があげられる。$${A, B \in P(X)}$$に対し、$${A \le B \stackrel{\mathrm{def}}{\Leftrightarrow} A \subset B}$$と定義すると、これは順序となる。

順序を議論する際によく出てくる記法を定義しておく。まず$${b \ge a}$$は$${a \le b}$$として定義される記法である。また$${a \le b}$$であるが、$${a \neq b}$$であることを$${a \lt b}$$とかく。同様に$${a \gt b}$$も定義される。$${a \lt 0, a \gt 0}$$であることをそれぞれ$${a}$$が、$${a}$$がであるという。この$${\lt, \gt}$$の定義より次の同値関係が成り立つ。

$$
a \le b \Leftrightarrow a \lt b または a = b
$$

順序の性質に加えて任意の要素間に関係が定義されている、つまり

  • すべての$${a, b \in X}$$に対して $${a \le b}$$または$${b \le a}$$

が成立するような順序を全順序という。

前回登場した体$${F}$$に対して全順序が定義されており、かつ次の性質を満たすとき、$${(F, \le)}$$の組を順序体と呼ぶ。

  • $${a \le b}$$ならば、任意の$${c}$$に対して$${a + c \le b + c}$$

  • $${a \ge 0, b \ge 0}$$ならば、$${ab \ge 0}$$

順序体$${F}$$に対して次の性質が導かれる。

  • 任意の$${a, b \in F}$$に対して、$${a \lt b}$$、$${a = b}$$、$${a \gt b}$$のいずれか一つが成り立つ

  • $${a \ge 0 \Leftrightarrow -a \le 0}$$

  • 任意の$${a \in F}$$に対して、$${a^2 = (-a)^2 \ge 0}$$

  • $${1 \gt 0}$$

  • $${a \le b}$$ならば$${0 \le b-a}$$

  • $${a \le b \Leftrightarrow -a \ge -b}$$

  • $${a\le b, c\le 0}$$ならば、$${ac \ge bc}$$

  • $${a \gt 0}$$ならば$${a^{-1} \gt 0}$$

  • $${a\le b, c\le d}$$ならば、$${a+c \le b+d}$$

  • $${a\le b, c\lt d}$$ならば、$${a+c \lt b+d}$$

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