見出し画像

ビジネスパーソンとって「つくる」は「ヘルスケア」である


美大学生の「つくる姿」が脳裏に刻まれる

コトの始まり

それは昨年秋のデザイン思考プログラムへの参加がきっかけだった。
2ヶ月間、毎週土曜日に午前中は講義、午後は実習というプログラムで自らのデザイン思考を深めた。
プログラムを通じて、自分の「つくりたい欲」が爆発した。アーティストや建築家、デザイナーたちの話は非常に興味深く、特に美大に毎週通えることに感激した。それまでの毎週土日といえばフードコートで過ごしてきたフードコートダディ(ロングコートダディみたい)が、急に毎週美大に通えることは楽しかったし、まるで大学生に戻ったかのような気分だった。
しかし、そんな楽しい日々も2ヶ月で終わりを迎えた。夢から覚めたような感覚が。
ただその後も「つくる」とは何かという問いにモヤモヤしていた。

美大の学生たち

授業の中に、油絵、日本画、彫刻、デザイン、溶接、鋳造など様々な生徒を見学する日があった。絵具や木屑に塗れた手で学生たちが黙々と作業している。教室の机には自分の制作のために購入した材料が乱雑が置かれている。
初めはそんな彼らが、自由だなぁと思っていたが、話をしていると「とても素直で真面目だ」と思った。
同じプロジェクトに入ってくれた学生にも話を聞けた。彼女は1年生だったが、中学2年生から美大に行くことを決心し、毎日描き続けたそうだ。美大専門の予備校にも通って、受験の年の冬の作品を見せてもらったが圧倒された。

学生たちは、常にメモを持っていた。たくさんのイメージをスケッチやメモ帳にドーロイングしたり、Pinterestにアップしてフォロアーにみてもらったりした。自分なりの発見を毎日積み重ねていく学生の探究心に驚かされた。彼らはいろいろな試料を実験して新しい素材や現象を発見しようとしていた。横地 早和子の著書「創造するエキスパートたち: アーティストと創作ビジョン」には美大生に対して以下のような1節がある。

彼らの面白いものを見つけ出そうと実験に勤しみ、いろいろな制約や問題があっても自分が創りたいと思っていたものを”真面目に”制作する姿は、一般的に定着している美術家のイメージと異なっていると思われる。
美術家は必ず何かを考えて、真面目に実験し、その成果である作品を発表している。何を考えて実験したのだろう。そして、何を見つけ出したのだろう。もしかしたら、人間の特性である創造性を知る上でとても大切な事を実験しているかもしれない。

創造するエキスパートたち: アーティストと創作ビジョン (越境する認知科学) 2020/9/30 

ここで指摘がされている「人間の特性である創造性を知るための大切な実験」という部分がすごくしっくりきた。その特性(人間としての感性)を蓋閉じせずに生きること、が何かすごく大事なことのように感じた。

ぼやいていた日々

デザイン思考プログラムに参加する前、友人には「ここ数年、何も成し遂げられていない。怪我をしたスポーツ選手はこんな感じだろうな。」と話をしていた。仕事がつまらなかった。何か無性に虚しく思う。

時々、とても虚しくなる。虚しくなった時には何故か、喉の痛みが生じる。それを治すには漢方薬、さらにはサウナ通い。これで何とかバランスを保とうとするが、それは一時しのぎに過ぎない。自分のメンタルをケアすることで、仕事のつまらなさが和らぐわけではない。

虚しさの原因は、クリエティブな仕事をしていないことだろう。創造的な・独創的な意味の仕事をしていないコト。それがないと自分本来の生き甲斐を損なわせている本質にあるように思えた。

小学校の頃、漫画をモノマネして褒められたときのこと、ポスターを作って賞を取ったときのこと。ボンヤリと思い出す。じゃあ、何かやってみれば?簡単に言うが日常生活、家事、育児、しょうもない仕事に時間が潰されていく。そんな日々だった。

つくると体調変化のあいだを漂う

「そういえば体調が良くなった」

デザイン思考プログラムに参加して、「つくる」が定期的に訪れると何故か体調がよくなった。普段飲んでいる漢方の薬をやめた。その変化に驚きつつ、自身が意識的に行っていた「つくる」ことが、体調改善に寄与していたことに気づく。あくまでも体感的な話、私の感覚に過ぎないが何らか体調改善に寄与していると思えてならない。

「自分の薬をつくる」著者:坂口恭平にこんな一節がある。

どうやら人には2種類の力があって、一つはそのときその時の「気まぐれな力」で、その日の体調にかなり左右されます。
そして、もうひとつが毎日、生活を営む上で必要な安定した力です。日課を作ることで、この力を強めることができるわけです。
もちろん、これははっきりした区分けがあるわけではなく、私の感覚に過ぎないんですけど。

「自分の薬をつくる」著者:坂口恭平

ここで著者は「ただ良いものを提供したいという思いよりも、むしろもっと日課の中に取り込んで、それを毎日、少しずつやっていくことで自然と技術が身についていくという風にしたらいいのではないか」と主張している。その点も私は共感するのだが、それ以上に自分の日常が「安定した力」のみで駆動しており「気まぐれな力」を放出できないことが体調を調子を悪くする原因ではないかという事に気づけたのが大きかった。

思わずやってしまう行為

デザイン思考プログラムでは2ヶ月の間に数10個くらいのプロジェクトの企画のアウトプットを出した。採用されるか否かは関係なかった。この営みが無駄なようで自分に「健康という報酬」をもたらしてくれた。
仕事においては、一般的には「目的と目標の設定が最も大事である」とされる。目的は金銭報酬と非金銭報酬に分類され、非金銭報酬はスキル報酬、キャリア報酬、感情報酬などに分類される。
しかし、これらの報酬には人間には「つくらざるをえない」というベースとなる考え方が欠落していると感じられる。

「つくる」ことは、最終的には人間として、ヒトとして「思わずやってしまう」行為なのだ。それらは報酬だけではなく、自己満足や喜びを得ることが、持続可能なヘルスケアの一環となるように思える。

フジテレビアナウンサー宮司愛海さんのPodcastを聞いた

フジテレビアナウンサー宮司愛海さんがpodcastを始めて、オードリーの若林さんがゲストの放送回を聞いた。花形の職業で住む世界が違うと思ったが、意外と同じサラリーマンなんだなと思った。
https://open.spotify.com/show/3Maw7ZuQpGTgWB9aZAYUH7
本当にやりたいことと、仕事で演じる自分とのギャップが生じている。アナウンサーという職業であれば尚更、公の場でのイメージに縛られ、本当の自分を表現することが難しい。
自分も仕事では「別の自分が役割を演じている」という感覚がある。また、それが本当の自分のように振る舞わなければいけなくなる時もある。

番組全体を通じて「Podcastはメディアから叩かれる可能性もあるが、それを乗り越えて本来の自分を表現する場である決意」を感じた。同時に、そういう場所を作って、環境を変えて自分を解放していかない辛いようにも感じた。

この姿勢が自分が「つくる」を通じて求めていることに近いと感じた。
社会的な期待や制約から解放され、自分を偽らない自由さを感じながら、仕事と本当の自分の両立を模索する。その営みの報酬として一番デカいのは「自分に「健康という報酬」をもらしてくれる。のではないか、と考えるようになった。

以 上


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?