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ラファフ地上侵攻への反対アクションが緊急で呼びかけられている:パレスチナの「最悪」を更新し続けるイスラエルに確実なBDSを!

★これまでBJBのブログ記事はnoteで公開してきましたが、この媒体について複数の問題が指摘されているので、段階的にこちらの媒体への引っ越しを予定しています。→https://bdsjapanbulletin.wordpress.com/

これまでパレスチナ人に対するイスラエルの暴力は様々な形で行われてきた。10月7日以降のガザ地区への物凄い攻撃の前にも、ガザ地区封鎖、ガザ国境付近でのデモ隊への発砲、ハマスへの反撃を口実にした度々の市街地空爆、子供への行政拘禁や長期にわたる政治囚の不当な拘束、入植による土地の収奪と自治区における移動の自由の制限、東エルサレムの家屋破壊などが続けられてきた。

これらのイスラエル政府による暴力は、その一つ一つの事例が国際法違反1かつ非倫理的なだけに留まらない。あらゆるパレスチナ人への個別の暴力が最終的に目標とするのは「パレスチナをパレスチナ人にとって居住できない環境にする」ことで、これは同地からパレスチナ人を抹消しようという試み、つまり民族浄化2の試みである。ガザ爆撃、家屋破壊、拘禁などは、その直接的な被害者となった本人だけではなく、「パレスチナ人」という集団を傷つけ、脆弱にし、惨めな思いをさせることを目的とする暴力である。

ラファフ(ラファとも呼ばれる、最後のフは正確には無声咽頭摩擦音ħ)地上侵攻が秒読みになる中で上述を先に確認する必要があるのは、これからラファフ地上侵攻が「最悪」の状態を引き起こすと書かなければいけない中で、これまでのパレスチナ人の状況が「最悪」の状態ではなかったという誤解を防ぐためである。早尾貴紀が『パレスチナ/イスラエル論』の中でパレスチナの状況を以下のように述べている。

パレスチナは、イスラエル建国の一九四八年とその前後の「ナクバ」(アラビア語で大災厄)以降、つねに危機的であり、次々とその危機の深刻さを更新しているような状況であるため、どの時点からそれを語ればいいのか困惑する。あるいはむしろ、どの歴史的時点から語っても最悪であり、そして次の局面ではその最悪が更新されてしまうのだ。

早尾貴紀. パレスチナ/イスラエル論. 有志舎, 2020, p. 11

10月7日以降、ガザ地区も、西岸地区も、世界中のあらゆるパレスチナ人コミュニティも様々な「最悪」を更新している。ガザ地区へのジェノサイド3としか形容しようのない熾烈な攻撃と封鎖による飢餓や病気の蔓延は筆舌を尽くしがたい。その陰では東エルサレムと西岸地区が約400名の死者と7,000名の逮捕者を記録している。また世界中のパレスチナ人またはパレスチナにバックグラウンドのある人々が、家族や友人の死や故郷の破壊、パレスチナ連帯の表明による解雇やコミュニティ追放等の政治的弾圧、周囲の無関心や無理解によって、経済的にも精神的に苦しめられていることも忘れてはいけない。

また、そのような更新され続ける「最悪」の中で、パレスチナ人の人権をめぐる世論の基準が坂道を転がり落ちるように低下していることも指摘したい。つまり、本来は許されなかったはずのパレスチナ人への人権侵害について、パレスチナ人を特に憎み敵視しているわけではない「中立」または「冷静」を自称する人たちの口から、「ハマスによるテロ攻撃の結果であり仕方ない」「ハマスを擁護しているのだから仕方ない」「イスラエルにも自衛権があるので仕方がない」ということが平然と語られている。またガザの状態があまりにも悪化しているため、東エルサレムや西岸地区の実態は語られにくく、ともすれば取るに足らないニュースになってしまう。そうした世論の感覚麻痺に呼応するように、イスラエルはガザ地区への暴力を空爆から地上侵攻へ、北部から南部へ広げている。

そんな中で、ネタニヤフ首相は次のラファフへの地上侵攻を宣言し、既に同地に苛烈な爆撃が開始。「最悪」の更新がまた行われている。

ラファフはエジプトとの国境に接するガザ地区最南端の街である。ガザ地区では現在、最後の逃げ場として大量の避難民が押し寄せており、もとは人口18万人程度であった地区に現在は100~150万人以上が身を寄せているといわれる。避難民は空き地に小屋やキャンプを建てて生活をしているが、食料や衛生用品・施設の不足で栄養失調や伝染病が蔓延し既に危機的な状況である。このような過密状況のラファフに地上侵攻が行われれば、攻撃、飢餓、病気等で殺害される人の数が急激に上がることは想像に難くない。ハマスは数万人の死者が出ると警告しており、OCHAやユニセフ等の国連機関も次々と強い反対を示す。

このラファフ侵攻は、次のレッドライン(超えてはならない一線)である。既に「最悪」を何度も何度も更新してきたパレスチナにおいては、これまでも何度も「後戻りできない」レッドラインが侵されてきた。これは、何度も何度も国際社会や(本来、イスラエル政府や軍の暴走を止める責任があるはずの)イスラエル社会がそれに失敗してきたことの証左でもある。

そして今回、ICJがジェノサイド防止の措置命令を出すに至った、10月7日以降のガザ地区への攻撃は「最悪」の歴史的な更新であり、ラファフ地上侵攻が行われれば、このジェノサイドという「最悪」の更新の総仕上げになる。

もうパレスチナをこれ以上裏切り続けることは許されない。このレッドラインを死守できるかどうかが、国際外交や国連システム、国際連帯の存在意義そのものを問うているといっても過言ではない。

日本からもラファフ地上侵攻を止める緊急アクションを取る必要がある。これまでBDS運動に取り組む市民は、無印良品のイスラエル進出や日本でのAHAVA取り扱い中止などの成果を上げた。直近では、伊藤忠アビエーションや日本エヤークラフトサプライがエルビット・システムズとのMoUを破棄するなど、ジェノサイドに直接加担する日本企業に待ったをかける力があることが証明された。日本政府へラファフ侵攻阻止への有効な措置とイスラエルとの外交政策見直しを求めるアクションを中止にBDS運動を加速させよう。

★BJBとして推進・提案するアクションを近日中にとりまとめ、公開します。また個人やグループによる各地でのBDSのイニシアティブや、有効と思われるアクションの提案を歓迎します。私たちBJBは「日本のBDS 運動の公式」の立場は取っていませんが、情報共有サポートや相談などに応じることが可能です。
★BDSのキャンペーンを作成する際には、必ずBNCの呼びかけやガイドラインを参照することが重要と考えます。
https://bdsmovement.net/call
https://bdsmovement.net/what-is-bds

  1. 国際人道法は狭義では1846年にジュネーブ条約により規定された戦時国際法を指し、追加議定書やハーグ条約の範囲についても慣習法化している。ジュネーブ法は戦時下における傷病兵・文民・捕虜・外国人を保護し、追加議定書は無差別攻撃を禁じる。ガザの封鎖という集団懲罰や民間施設を標的にした攻撃、入植と先住民の追放などは国際人道法違反であり、戦争犯罪に当たる。また分離壁の建設などは、国際人道法違反だけではなく人権規約違反にも当たると指摘されてきた。
    ↩︎

  2. 民族浄化はある地域で一つの民族が他民族を排除する過程を指し、1990年代の旧ユーゴスラヴィア紛争で定着した概念。現在、国際法下では個別の犯罪に定義されていないが、「人道に対する罪」「ジェノサイド」「戦争犯罪」からなる、人類に対する最も重大な「残虐な犯罪」にあたると考えられている。
    ↩︎

  3. 前述の通り「残虐な犯罪」の一つで、1948年国連総会で決議されたジェノサイド条約が法的根拠である。ある集団を破壊することを目的とした虐殺、危害、肉体を破壊する意図のある生活条件の強制、出生防止措置、子供の強制的な別集団への移動を指し、殺害だけではなく共謀、公然の教唆、未遂、共犯も処罰対象となる。 ↩︎

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