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日本におけるBDSガイドライン

★これまでBJBのブログ記事はnoteで公開してきましたが、この媒体について複数の問題が指摘されているので、段階的にこちらの媒体に移行します。最新のガイドラインはこちらの媒体に掲載しています。→https://bdsjapanbulletin.wordpress.com/

 本ガイドラインは、日本に暮らす人々がより効果的かつ戦略的にBDS(ボイコット・投資引き揚げ・制裁)運動を行えるようにするために作成されたものです。随時更新をしていく予定です。


BDS運動の目的

 2004 年7月9日、国際司法裁判所は、イスラエルがパレスチナ人を隔離する目的で建設していた分離壁(アパルトヘイト・ウォール)を国際法違反であると指摘し、国際社会に対して分離壁撤廃のために行動することを求めました。しかしイスラエルは、その後も分離壁建設を続け、それについて国際社会から制裁を受けることもありませんでした。BDS運動は、このようなイスラエルの国際法違反が放置される「不処罰の伝統」を終わらせるため、パレスチナ人によって開始されました。
 2005年7月9日、パレスチナ市民社会の170を超える団体が声明を出し、世界中の市民と政府に対し、アパルトヘイト期の南アフリカに対して国際社会が行ったように、イスラエルに対してもボイコット・投資引き上げ・制裁を行うことを求めました。そして、イスラエルが以下の3項目を実行し、それによってパレスチナ人の民族自決権を承認する国際的義務を果たすまで、イスラエルに対するBDSを続けると宣言しました。

  1. アラブ人の土地に対する占領と植民地化を止め、分離壁を解体すること。

  2. イスラエル内のアラブ・パレスチナ人市民の基本的権利を認め、平等に扱うこと。

  3. 国連総会決議194号で定められたパレスチナ難民の故郷への帰還の権利を尊重し、保護し、促進すること。

 現在は、ヨルダン川西岸地区の中心都市ラーマッラーに置かれたパレスチナBDS民族評議会(BDS National Committee;以下BNC)が全世界で行われるBDS運動を取りまとめ、NGOや組合、市民団体の間を調整する役割を担っています。

ヨルダン川西岸地区の分離壁
移動の自由を奪うだけでなく、
近くに住んでいた家族同士も分断する

日本におけるBDSのターゲット

 理想的には、イスラエルに制裁を行い、イスラエルのアパルトヘイト政策に加担する全ての企業の商品をボイコットし、投資を引き上げて圧力を掛けていくことが必要です。しかし、全ての企業や団体に対して同時にアクションを行おうとすると、圧力が拡散して効果が薄れてしまう恐れがあります。また、より多くの人に運動に参加してもらうためには、アパルトヘイトやジェノサイドへの加担の度合いが高く、倫理的問題が分かりやすい対象を選ぶことが効果的です。
 そのため、私たちBDS Japan Bulletin は、BNCとの調整の下、日本でのBDS運動をより効果的かつ戦略的に行うため、以下の企業や商品を日本におけるボイコットの優先的なターゲットとするように呼び掛けています(注1)

①伊藤忠商事株式会社

 伊藤忠が100%株を保有する子会社である伊藤忠アビエーション株式会社は、イスラエルの軍需産業を支えるエルビット・システムズと戦略的協力覚書を締結し、ジェノサイドの一端を担っている状態です。度重なる市民社会からの呼びかけにも関らず伊藤忠や伊藤忠アビエーションはこれを黙殺し、武器・軍事テクノロジという非常に直接的な形でイスラエルの戦争犯罪に手を貸しています。
 伊藤忠アビエーションが以下の通り市民が賛同する署名の提出後、2024年1月18日までに覚書を破棄すると発表しなかった場合は、私たちは伊藤忠商事とそのグループ会社に対して緊急かつ優先的なBDSを呼びかけます。

▲株式会社エドウィンの製品を買わない▲
 デニムを中心に扱うアパレルのエドウィンは伊藤忠商事が100%株主です。
アルファインダストリーズ、Lee、ラングラーなどもエドウィン傘下なのでご注意ください。

【お詫びと訂正】 BJBは伊藤関連会社ボイコットとして、エドウィンとその傘下ブランドを挙げてきました。当初呼び掛けに含まれた "Carhartt (カーハート)" に関して、現在は公式サイトにブランド名がありません。ライセンス事業を終了した可能性があります。確認が取れ次第ご報告をしますが、取り急ぎ呼び掛け対象から外します。混乱を招き申し訳ありません。(2024年1月22日追記)

▲アンダーアーマーのライセンス商品を買わない▲
 日本のアンダーアーマーの総代理店は株会社ドームで、同社は2022年に伊藤忠商事に買収され連結子会社化しています。

▲プリマハム株式会社の製品を買わない▲
 食肉加工品メーカーのプリマハムの筆頭株主は伊藤忠商事です。
香薫シリーズをはじめとするウィンナー、ハム、サラミ、サラダチキン等が主な商品です。食肉加工品購入時はメーカーの確認をしてください。また餃子や春巻きもあります。

▲株式会社ファミリーマートの自社ブランド「ファミマル」「コンビニエンスウェア」「FAMIMA CAFÉ」を買わない▲
 コンビニチェーンのファミリーマートは伊藤忠商事が50%株主です。身近な存在かつ多くがフランチャイズ契約の経営であることから、まずは全面的なボイコットの前段階として、自社ブランド「ファミマル」製品のボイコットを呼びかけます。

②イスラエル産の農産物およびその加工品

 イスラエル産の農産物や加工品を消費することには、複数の大きな問題が絡んでいます。まず、スーパーに並ぶイスラエル産の農産物には、パレスチナ人の土地を国際法に違反して奪取した違法入植地の農地で栽培されたものが多く含まれています。しかし日本ではイスラエル産と入植地産の産地表示を区別する決まりが無いため、全てが「イスラエル産」として表示されています。しかし、特にデーツ、アボカド、ワイン、花きを中心に相当数の入植地産農産物が輸入されています。
 さらに、入植地産あるいはイスラエル領域内におけるイスラエル農業の繁栄の裏には、建国時にパレスチナ人農家の土地やそこで育まれた品種を奪ってきた歴史的経緯があります。イスラエルは農地として条件の良い肥沃な土地や水源を優先して占有しており、パレスチナ人の農業は苦境に置かれてきたほか、パレスチナ産農産物や加工品は、生産・輸出においてもイスラエル軍から妨害を受けています。軍や入植者によるパレスチナ人の畑を焼き払ったりオリーブの木を切り倒す行為も繰り返し報じられています。
 また入植型植民地主義の本質が先住民から土地を奪い取り、その土地から先住民を追放する行為であることを鑑みれば、土地と密接に関わる産業としての農業の発展は象徴的な意味合いがあります。イスラエルはイスラエル産農産物の普及とそのブランディングによって、土地との結びつきを正当なものだと主張する道具としています。

そこで私たちは以下のアクションを呼びかけます。
▲イスラエル産の農産物と加工品を買わない▲
▲イスラエル産の農産物と加工品を取り扱う大手スーパーに取引中止を要請する(メール・お問合せフォーム・電話・抗議活動など)▲
▲イスラエル産の農産物と加工品を取り扱う個人スーパーに人権侵害に加担しないよう、情報提供する▲
▲ビック酒販・エノテカ・リカーマウンテン・にイスラエルの入植地ワインを取り扱わないように抗議する▲

イスラエル農業の問題点についてより深く知りたい方はこちらの記事も参照ください。


③HP(ヒューレット・パッカード)

 HPは、イスラエルがアパルトヘイト政策、占領政策、入植者植民地主義に基づきパレスチナ人を「管理」するシステムを維持するためのテクノロジーを提供・運営しています。またイスラエル軍と警察にサービス提供をして違法な占領とガザ包囲に加担している他、イスラエル域内のパレスチナ人に対するアパルトヘイト政策に加担する「アビブ・システム」、占領下のヨルダン川西岸地区の違法入植地に住むイスラエル市民の情報をまとめた「イエシャ・データベース」にも技術提供をしています。
 人権侵害のテクノロジーを提供するグローバル企業に対する危機感から、以下のアクションを呼び掛けます。(注2)(注3)

▲パソコン、モニター、プリンターを含むHPの製品を買わない▲
▲自分の職場や学校がHP製品を導入している場合、IT機器のリースや購入の担当者に対しHPについて情報提供をする▲
▲家電量販店に対してHPの取り扱い中止を呼びかける▲

④ソーダ・ストリーム

 ソーダ・ストリームは2015年にBDS運動の圧力を受け、西岸地区の違法入植地における工場は閉鎖しました。一方で新工場が建設されたネゲヴ砂漠も、イスラエル政府による先住のベドウィンの強制立ち退き政策が進む地域のため引き続きボイコット対象になっています。

▲ソーダストリームの製品を買わない▲
▲家電量販店に対してソーダストリームの取り扱い中止を呼びかける▲


 イスラエルの戦争犯罪やアパルトヘイト政策に加担するより多くの企業・団体を知りたい方は、https://www.whoprofits.org や、「戦争犯罪加担企業リスト」(随時作成・更新中)からも情報収集が可能です。また、BDS運動の最新の動向は、https://bdsmovement.net もご覧ください。
 なお、近日、学術・文化ボイコットに関するガイドラインもアップロード予定です。


(注1)本ガイドラインは、ここに記載されていない企業や商品に対するアクションを止めるように呼びかけるものではありません。全ての人がより良い方法を模索し、自分に合った形でBDSに参加することが出来ます。一方で根拠のないボイコットの呼びかけはBDS運動の信頼を損ねるものになりかねず、ボイコットの対象を選択する際には、対象とする企業・団体・商品がアパルトヘイト政策に加担していることを明確に説明できるようにしておく必要があります。
(注2)HPブランド企業には分割されたHPEとHPIや各国の法人がありますが、現在BDSはHPブランド企業全体を対象にしています。
(注3)BDSは既に購入した製品を全て廃棄するように求めるものではありません。パソコンなどは高価なものですので、既にHP製品を使用してしまっている場合に無理な買い替えを行う必要は無いと考えます。

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