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#102_【観光ガイド】ガイドを頼むお客様は、受け身の方ばかりとは限らない

対馬島外から来られる方から、

「対馬には、説明されないと分からないものが多い!」

とよく言われます。

例えば・・・

【欧米列強の進出に備え、幕末に積み直された金田城一ノ城戸(赤線が境目)】
【陸軍が軍道を通すために無数のダイナマイトを岩盤に仕掛けた跡】

最近も、こんなブログ記事を見つけました。

筆者のことを悪く言う意図はありません。
まさにこのようなことだ、という事例として持ってきたまでです。

そんな対馬で、観光ガイドは、今後どのようにあるべきか、考えてみることにしました。


受け手の行動を促すために何をすべき?

ここ数年、マスコミへの露出が増えてきましたが、なかなか島外に対馬の情報が出ていなかったもので、ご丁寧に

「情報発信が足りない」

と、どや顔で講釈を垂れる方をお見受けすることがあります。

「では、具体的にどのようなことでしょうか?」と尋ねてみますと、自分の情報収集力や洞察力のなさは棚に上げていたのか、要領を得た解決策を聞けたためしがありません。

「届けたい相手に応じ、触れやすい媒体や適当な量で情報を発信する」

広く捉えれば、それも「情報発信力」に含まれるのだろうと思いますが、見識のある人であれば、どのようにものを伝えれば相手が動くのかを考えて、言葉を発するものです。
実感が湧いてこない薄っぺらな説明では、受け手は言ったとおりに動かないどころか、反発すら起こすものです。

説明されなければ分からないのはダメなのか?

学校の授業を見学する機会を時々いただきますが、学ぶ姿勢や探究意欲で手に入る情報や知識が変わってくる、ということを感じます。
調査研究の世界、平たく言ってしまえば学びの場では至極当たり前のことですが、観光の世界だと、サービス業だからでしょうか、そんな指摘をするのは「御法度」という雰囲気を感じますし、かくいう私も、最近までそれが「正解」だと考えていました。
しかし、対馬のことを学ぶにつれ、説明されなくても理解できる程度のものしかなければ、「遠路はるばる日本のすみっこまで来る意味あるのか?」という考えも浮かびます。説明されないと分からないものだらけというのは、観光ガイドにとって、むしろプラス要素ではないかと。つまり、説明されないと分からないものを紐解くところに観光ガイドの価値や存在意義があり、裏を返すと、見れば分かるとか、本やネットで調べれば済んでしまう内容であれば、観光ガイドを依頼する意味がない、ということです。
とりわけ、私のように万人受けしない趣味や趣向を持っている者からしますと、見れば分かる程度の内容であれば、観光ガイドがいないほうが気を遣わずに周遊でき、むしろ都合がいいくらいです。

観光ガイドの位置付けの変化

普通の旅では、行き先をはじめ自分で決めて計画をするが、「島」に行くときは現地の知り合いに案内してもらう、という方がいらっしゃるのを、時々耳にします(私もそのひとりです)。
最近では、よほどのことがない限り「旅はひとりで」、という放浪癖のありそうな知人から、誰かの誘いを受け、誰かとともにする時間を主軸に据えた旅をしたところ、視点が増え、考察が多角的に進み、自分の感覚と思考がシャープになった、という話も聞きました。
逆に、観光ガイドを依頼しなさそうな若年層についても考えてみたところ、お金の問題が一番大きいのだろうとは思いますが、ガイドの大半は目上の方でしょうから(40代半ばの私ですらそうですが・・・)、自分のペースを乱されたくないとか、他人に考えを押しつけられたくないといった心理が働いていそうな気もします。
一昔前の観光ガイドは「分からない人に対して、一方的に教える」ものでしたが、双方向のコミュニケーションが取れる場面が増えた現在では、変化しているのかもしれません。

まとめ

長々書き連ねましたが、やっとタイトルの回収です。
いまでもツアーのお客様の多くは、手取り足取り行き届いたホスピタリティのあるサービスを求めていると想像しますが、スマホをはじめとした情報収集ツールが普及している今日、そのような方々ばかりではないようにも感じます。
特に偏愛が強い方は、ガッツリ下調べをしてから対馬に上陸しますが、それでも表に出ていない情報を探して、ガイドを依頼されることがあります。

このような現状を踏まえますと、今後観光ガイドには、

  • 受け手の心を動かす説明力

  • 「説明されないと分からないもの」が理解できる方への訴求とツカミ

  • 「お客様に伴走し、ともに学ぶ」姿勢のガイディング

が求められてくるのではないか、と考えます。

それに加え、対馬にある地域資源は深いものばかりですので、一生勉強しても理解が追いつかないだろうと感じています。
常に学ばねばならない一方、プロとしてそれで良いのかと思うところもありますが、現代社会の先行き自体が予測困難ですので、常に挑戦者としての心構えを持ちながら、高みを目指していきたいと考えるところです。

《さいごに》
文章を書きながら、顧客のターゲティングや、観光ガイドで提供する価値について考えていたところ、まさにドンピシャな内容の音声コンテンツがNewsPicksの「Re:gion Radio」にありましたので、紹介します。
産業の中心が第2次産業から第3次産業へと移ったことにより、対応の勘所がどのように変化しているのかが語られていますので、ぜひご参考に!

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