行列

お目当てのお店に出来ている行列に、並ぶか並ばないかの選択は、まず並ぶ前に心の準備が出来てるか出来ていないか、で選ぶことが多い。

心の準備というのは、前もって並ぶ事が分かっているかどうか。例えば、先日並んだパン屋さんも、調べた上である程度並ぶ事が予め分かっていたので、余裕を持って早めに列に並んだ。ラーメン屋なども同様で、ディズニーランドやシーも、ある程度並ぶ事は分かっていながら遊ぶので、あまり行列に対して嫌悪感は抱かない。

以前は並ぶのが嫌だった自分なのだが、こうした考えに終止符を打った一つの経験がある。

5年ほど前の冬だったか。友人から「限定スニーカーの列に一緒に並ばないか」という誘いがあった。
その時は確かナイキとどこかのダブルネームの限定スニーカーだったと記憶しているが、新宿伊勢丹のメンズ館で販売されるとのことで、たまたま1日空いていたし、僕で良かったらと話に乗った。

「列って何時ぐらいから並ぶの?」
「んー、朝6時かなー。」
「ふーん、6時ね。……6時!?」

友人に教科書のような二度見をしてしまって恥ずかしかったが、どうやら普通の事らしく、まあこれも経験かと、当日キチンと朝6時に新宿駅の改札に集まった。

駅から伊勢丹まで歩いて行くと、すでに多くの人が並んでいた。いわゆる徹夜組の方々。徹夜組が出るほどの行列に今まで並んだ事が無かったので、朝からまず一つ喰らってしまった。

行列に並ぶ前に、先頭から人をある程度を数えながら最後尾まで歩いた。2000を過ぎたあたりで諦めた。

最後尾に辿り着き列に並ぶものの伊勢丹の営業開始は朝10時。そこから約4時間弱、ただ並んでるだけだと時間が長く感じてしまうので、友人による限定スニーカーの取得方法のレクチャーを受けた。

この時のような店舗限定とかのスニーカーの場合はどうしても並ぶ必要が出るが、基本的にはナイキのアプリで抽選含めて購入出来ると。店舗限定でもアプリにも出ることもあるので、その場合はどちらもやるとのことだった。そして、今もそうだけど転売目的の方も並ぶので、毎度相当の列になってしまうとの事だった。

一通りレクチャーを受けた後に友人から、

「これで当たったら味しめて、これから並ぶことになるかもねー!」

なんて言ってはいたが、

「ちなみに今日は何足販売されるの?」

と聞いたら、

「100足。」

僕は先ほどの人数と、自分たちが並んでからも増えていく行列を踏まえて、当選確率を計算するのを諦めた。

行列は幸いにも新宿の地下を通る列になっていたので、風は凌げたが、時間との戦いであった。ほとんどスマホでTwitterを見ていて暇を過ごしていたと思う。この時間、何もしていない。これ以上ない贅沢な時間の潰し方だった。

10時過ぎになると少し列が進んだ。営業ならび抽選が始まったのだろうが、なかなか前に進まない。結局先頭まで至るまでに45分ほどかかった。

いざ先頭となり、ビニール袋に入ったくじを引き、くじを店員さんに渡し、ホチキスで止まったくじを開くと真っ白。すると早口で、

「残念でした!またお願いします!次の方!」

約5時間にわたる戦いはあっけなく終わった。

友人も外れ。すでに早めのお昼ご飯の時間になっていたので、近くにある並んでいないとんかつ屋に入り、昼食を済ませ、お互い帰宅した。なお、友人は並んでいた間に、アプリで申し込んでいたスニーカーの抽選も確認したようで、それも外れていた。セットで付いてきた豚汁が身に染みた。

この時の経験から、行列の先にちゃんと目的が用意されてあれば良いやと、少しだけ行列に対するハードルは下がって、冒頭に書いたパン屋やラーメン屋には並べるようになり、良い経験になった。

ただ、その日以来スニーカーの抽選には並んでいない。

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