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ルイ・マルってすごいのよ「死刑台のエレベーター」

「死刑台のエレベーター」はヌーベルヴァーグの映画でもかなり有名ですよね。
マイルスデイヴィスのフリーセッションのジャズを音楽として使ったのが非常に効果的で、マイルスデイヴィスの名前の方が売れちゃって、「あー、あのフリーセッションのジャズの映画ね」みたいな言われ方をしちゃうんですけれど、後ろに隠れた監督のルイ・マルは、ヌーベルヴァーグの映画監督たちの中でも、一番監督として巧かったと思うんです。

死刑台のエレベーターはそうですね、クライムムービーのジャンルに入るんでしょうね。
悪女役をやらせたらとことんワルになる、フランスが誇るコワモテ女優のジャンヌモローが、夫(お金持ちの会社社長)殺しを企て、若い恋人とトンズラしようとする話なんです。
これ、それなりにちゃんとエンターテイメント性を意識したストーリーですよね。

ルイ・マルはそれができる人なんですよ。
観客が映画になにを求めているか、それが分かっているから、一作ごとにガラッと作風を変えて、「この監督はこうだ」って固定概念を観客に与えないんです。

「鬼火」「地下鉄のザジ」「さよなら子どもたち」これみんなルイ・マルの監督作品です。
天才的で職人肌のこんな監督はそうたくさんはいないと思います。
日本で言えば、木下恵介辺りが近いポジションかも知れません。

夫殺しの計画は完全犯罪となるはずだったのに、ちょっとずつ計画にズレが見られて、そしてふたりの計画は白日の下に晒されちゃうんですけれど、エレベーターの中に閉じ込められた愛人を探して夜の街を彷徨うジャンヌモローの美しいこと。
ここはフランス映画の名シーン10選にぜひエントリーしていただきたいところです。

死刑台のエレベーターはルイ・マルにとって、監督デビュー作なんですけれど、デビュー作でいきなりこのクオリティとかすごいと単純に思うんです。
その割にはあまり監督自身が評価されていないところが残念だったり口惜しいな、って思ったりします。




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