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大阪編:白雪温酒場@西九条

源泉衛渡の交差点に着いた。辺りは殺風景で夜はとても薄暗いところだ。

アーケードの店は閉まっていて廻りを見回しても明かりの点いているのは最後の目的地「白雪温酒場」だけだ。

白字で白雪温酒場の色褪せた紺暖簾が揺れていた。真ん中の温のだけ大きく書いてあり、富士山がシンプルに描かれている。

酒を出していた店とわかりやすいように昔、アピールの意味もあって温の字だけ大きくしたのだろう。今では大阪で二軒だけの貴重な屋号だ。

ここはメニューがない、値段もわからないから緊張の初入店だ。店入口の戸が開いてるからお客様がいるのはわかる。

創業昭和5年の店内は薄暗く、L字のカウンターで奥まであり縦長の造り。壁とカウンターの幅は狭いが、エプロン姿に黒ゴム長ぐつ、短髪の無愛想なご主人の立つ厨房はやけに広い。手前の席に腰かけた。

注文はこちらからだ。ビールは必ずあるだろうから「瓶ビール下さい。」ご主人は「瓶ね」と一言。無愛想だが嫌な感じはない。何があるか厨房真ん中のガラスケースを裏から覗き込んでいると、「真ん中席空いてるよ」と一言。
「あっ、じゃぁ」とその流れでガラスケースの前の席へ、お客さんの背中越しを「すみません」と移動。

しかし、広い厨房だ。右側奥に業務用の銀色のでかい冷蔵庫。右側手前は大きなまな板があり。真ん中奥は洗い場、真ん中手前はガラスケース。左側奥は焼き場、コンロが隣で左手前には燗付け器がある。清酒白雪のポスターが二枚貼られている。

ここの酒は白雪だ。まず注文。せっかくガラスケースの前だ。ここから選ぼう。タコにマグロ、カツオ、分厚いベーコン、トマトがある。上のトレーには松茸と葱の串が並んでいる。

「すみません!タコ下さい。」「酢と醤油どっち?」酢と醤油?とっさに「酢で」
大阪の居酒屋はきずしもそうだが酢を良く使う。
酢でいってみよう!

取り出したタコを大きなまな板で捌く姿はまるで魚屋のようだ。
キャベツを敷いた皿に新鮮なタコが盛り付けられ、三杯酢がたっぷりかかっている。
タコは新鮮だし、また酢が甘酸っぱくて美味い。

さて次だ。
左側にある厚切りベーコンが気になる。どういう調理、料理になるかわからないので「ベーコン下さい。」と一言。

「ベーコンね」と一言。
フライパンを取り出し炒め始める。香ばしい香りが店中に充満する。
周りの客がベーコンにひそかに想いを馳せているのがわかった。
焼きあがったベーコンは醤油の香りが食欲を誘い、口に入れた瞬間その美味さは言葉に出来ない。脂は甘く嫌味もない。新鮮なレタスも忘れてはいけない。
タコに続き新鮮な食材がシンプルながらもその素材の良さがわかる調理法だ。

そろそろ燗酒が欲しい。
タイミングを見計らい、「燗酒下さい。」

重量感ある錫チロリと丸い「白雪」名前入りのグラスおちょこが届いた。
「白雪」の大衆的な味がここにはピタリとはまる。

となり客がベーコンを頼んだ。やはり狙っていたな。
後、一品は頼みたい。
注文=見知らぬとなり客への挑戦となっている(笑)

アルミトレーにある松茸と葱の串にロックオン。
「松茸と葱の串焼いて下さい。」
すると「これ焼かなくて炊くんだけど。」

しまった。。走り過ぎた。
「それで大丈夫です。お願いします。」

関東だき(おでん)のおつゆで軽く炊いた味。関西の味。

奥では焼き鳥を焼き始めた!焼き鳥あったのか!?

デカイ冷蔵庫にはまだ未知のメニューが潜んでいるに違いない!

白雪温酒場の挑戦はまだまだ続きそうである。

その富士山のような頂きは遥か彼方だ。

■居酒屋ロマンティクス 2010年10月25日のblogより

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