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宮城編:福よし@気仙沼①

仙台駅から気仙沼間を運行する高速バス・ミヤコーバスで約三時間、気仙沼駅前に到着したのは昼間眩しく爽やかな青空が、茜色に変わり始めた夕方6時前だった。

バスに乗っていた殆どが若い一人客、それぞれが気仙沼の静かな町に歩き消えてゆく。

駅には、一人若い女性。実家に帰ってきて、親の迎えを待っているのだろうか?
駅前の時計台には「ようこそ気仙沼へ」の文字。
沢山の観光客がここを訪れていたのだろう。
だが、そのような感じはなくただ小さい田舎の駅前に立っているだけ。

駅前にはタクシーが数台並ぶ。
「居酒屋の福よしまでお願いしたいのですが。。」
「はい。と一言。」
何だか愛想がないが、ただ元気がないものだと、そう思うようにした。
タクシーは昔の車で乗り心地はあまりよくない。

駅前の道路を港方面に走る。道路脇には民家というより小さい店が並びよくある田舎の風景で地震の影響は全くないように見える。
だが、緩い坂道を下り港が見える辺りの町は建物が全くなかったり、津波の影響か一階部分が全損、また今にも崩れそうな建物。特に洋風の建物が素晴らしかった酒蔵・男山本店の姿は痛々しい。

本当に家が建っていたのかと思えない寂しい景色だ。
それでも、復興の思い、その形がみえる気仙沼復興屋台村なるちょっとした横丁があった。
気仙沼で有名なホルモン、ラーメンや居酒屋、うどん屋に鮮魚店や海産物、八百屋まである。
一夜ここで呑んでも飽きないだろう。
宮城で有名な海産物と言えばホヤだか。それをキャラクターにしたホヤ坊やは力強く刀をあげる。

港が見えた時、海と地面の高さがあまり変わらないことに少なからず恐怖感を感じた。これで津波が来たんだ思うと建物がなくなったことも、車が流されたことも全く疑問を抱かない。
なのに、実際本当にあったということが信じられなかった。

気仙沼湾には漁船が港に浮かぶ。静かな港で鳴くカモメと海辺に映る灯りが何だか寂しい。


「お客さん、着きましたよ。」

あっ!福よしだ!

着いた!

一階は駐車場?。
二階に店があり、下に建っていてもお客さんの声がもれてくるようで、暖かい雰囲気がここまで伝わってくる。

あ~。着いたんだ。
やっと、来た。
来たんだ。

立派に店が完成しているのに感動した。
凄い。
凄いことだよ。

しばらく、港側から福よしの姿を眺めていた。
「凄い。凄い。。」と呟きながら、、

つづく。

■居酒屋ロマンティクス 2012年8月25日 自身のblogより

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