これから歯科医療と公的保険の話をしよう

昨日は、歯科医療と公的保険は相性が悪いという話を書いた。

もちろん、保険の治療が全て良くないと言いたいわけではない。

歯科治療の対象となる部分は、当然のこと。顔にある。その為、治療結果が見た目と結びつくことが多い。

この他にも、噛み合わせや歯並びが元々悪い人が歯を失った場合に、失った部分を回復しようにもその悪い歯並びを改善しないことには回復することが難しい事も多々ある。

1歯並びや噛み合わせに大きな問題が無い 2むし歯がそれほど大きくない 3歯周病の問題が無い

この様な場合はどんな歯科医師が診断しても治療のやり方や治療の結果に大きな差は生じないだろう。

しかし、それぞれの問題が複雑に絡み合っている患者さんの治療に関しては歯科医師の診断力によって、大きな差が出てくる。ここで問題になってくるのが治療費のことである。

複雑になればなるほど、保険の範囲でできない事をやらないと行けなくなってくる。多くの患者さんは、歯並びに問題があり、そのママでは複雑な治療ができない。しかし、治療費の関係で「保険の範囲で治してほしい」と言われれば、上手く噛み合わないまま、或いはすぐに悪くなる事が想像されるまま治療を進めていかなければいけない。

前歯の治療を例に挙げれば、元々ねじれて生えていた歯を怪我で折ってしまったとする。ねじれていたのだから、両隣の歯との幅は元々の歯の幅よりも小さいはずである。そこに、綺麗な歯をまっすぐに入れて欲しいと要求されると、前歯4本から6本をトータルで考えないと、患者さんの希望に沿った治療結果にできない事は良くあることだ。

また、上の前歯を治すときにその歯に対する下の歯の並びがでこぼこであったなら、上の歯を綺麗に並べることが難しく下の歯を削ったり、下の歯を綺麗に並べたりする事もある。

この様に、歯科医師がより良い治療を患者さんに提供しようとすると患者さんが想像していたよりも大がかりなことになる事が多いのである。

この様な事を全て保険診療で賄うように保険制度を設計するならば、保険料や税金を高くするか、激安の治療費にしないとまず無理だ。

これ以外にも、歯を抜く抜かない等も保険制度に影響を受ける。国民の考え方が社会保障制度に反映しているとも考えられるし、保険制度に国民の意識が引っ張られているという側面もある。

次回は、歯を抜く抜かない問題に関して考えてみよう。


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