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早稲田の国際教養学部に入ったこと、後悔してる?

卒業、やったね

先日、やっとのことで早稲田大学国際教養学部(通称SILS、読み方はシルス)を卒業しました。良かった……

就活や卒業など、大きな心配ごとが落ち着いてきた時点で、最近よく考えることがあります。

それは、「私の進んだ道(大学・学部)は本当に正解だったのか」ということです。

就活でも「なぜこの大学・学部を選んだのですか?」とたくさん聞かれて、そのたび私はもっともらしくてステキなことを答えていたし、それはそれで本心のつもりだったのですが、でも今一度立ち止まって考えてみると、早稲田大学もSILSも本当に最良の選択だったのかなあ……と考えこんでしまうので、ちょっと頭の中を整理するために、このnoteを書いています。大学選びに悩んでいる高校生がこのnoteにたどり着くとは思えないけど、なにかしら誰かの参考になったらいいなあ。

私が所属していた早稲田大学国際教養学部(SILS)の主な特色はこんな感じ↓

・授業はすべて英語

・1年間の留学を義務づけられている

・学生の約3割が留学生。その他の日本人学生の多くが帰国子女、もしくは入学前から英語が堪能

・教養学部(≒リベラルアーツ)なので、特定の分野を深く学ぶわけではなく、自分の好きなことを学べる

・学生ラウンジでパイ投げをする。都市伝説のように思われているが本当にする

などが挙げられます。この1つ1つについて、私が感じたことについて書いていきます。

授業はすべて英語

当たり前だけど、本当にすべて英語です。「英語が話せる・読めるようになる授業」ではなく、全部英語で大学レベルの専門分野の講義が行われます。ちなみに、SILSに必要な語学力は、一般的に英検準一級程度と言われています。さらにちなみに、私は高校2年生の時に英検準一級に落ちています……

日本語が必要ないので、留学生の比率は日本の大学の中ではトップレベル。日本語が話せないけれど日本に留学したい、という人には最適な環境と言えるでしょう。

しかし、私のように、地方の進学校ですらない高校の中では英語ができる人、というレベルでは、ものすごく苦戦します。その苦戦ぐあいについては、川代さんという方の「国際教養学部という階級社会で生きるということ」を読んでみてください。かなり「わかる……」となりました。でもどうにかなるもので、英語には1年あれば慣れます。SILSの一般入試を突破できた人なら、今まで留学経験や特別な英語の学習経験が無くてもギリギリなんとかなると思う(ただし最初は地獄だよ)、というのが私の意見です。

ちなみに、1年目だけは学生の英語力のレベルに合わせて語学の授業も行われます。ある程度語学力のある人は免除されます。

1年生の頃は「私以外みんな英語出来すぎてつらい」と思っていたけれど、今思えば、最初は英語の苦手な人もまあまあいたかなと思います。私もできない方でしたが、語学クラスのレベル的には真ん中くらいでした。ただ語学は免除の人も多いから、学部全体で見たらやはり下のほうだったと思います。

授業において、最初にネックになるのはリスニングでした。教授が何話してるか分からなくて90分スピードラーニングだった時もあるけど、まあ慣れた(よく分かんないけど授業出る、っていう状態に慣れたって部分もある……)。例えばセンター英語のリスニングで満点を取れる人なら、リスニングにはついていけるようになると思います。後述するように、SILS生は留学が義務づけられているので、英語力に自信のない生徒は英語圏に留学すれば大抵のことはなんとかなるようになります。

だから、こういう厳しい環境に自分を追い込んだおかげで今のそこそこの英語力があると思えば、英語の授業の学部を選んでよかったな、と思っています。

1年間の留学義務

学生たちには、1年間の留学「義務」があります。留学先のプログラムにはざっくりわけて「L」と「R」があります。たしか、Lがランゲージの略で、Rがレギュラー。語学研修的な側面が強いのがLのプログラムで、Rが現地大学の講義を受けられるよ、というような感じだったはず。私はRのプログラムで、アメリカの大学の舞台芸術学科に留学しました。

留学のために、SILS生は大きく2つの努力をしなければなりません。1つは「1年生の1学期に良い成績(GPA)を取ること」。もう1つは「TOEFLの受験」です。自身の語学力を証明するために、1年生の10月頃までにTOEFLでよい点数を取る必要があります。どちらも、元々英語ができる人が有利。もしあなたが海外の名門大学に留学したければ、GPAはほぼ満点、TOEFL(iBT)は100点以上を必要とします。大学生のTOEICの平均スコアは580点だそうですが、これはTOEFLで換算すると約60点、満点の半分です。ちなみに、今調べてみたところIBTのスコアが60点で行ける大学は10校しかありませんでした。もしあなたがイギリスに行きたければ、イギリス英語に特化したIELTSというテストを受けなければなりませんし、英語圏以外に行きたければ第二外国語の語学力を証明するスコアが必要です。

SILS生は、入学時点で既に高い英語力を持っていることが期待されています。「SILSに行って英語力を磨いてから、海外の有名な大学に留学してみたいな」と思っている人にはSILSは向いていません。入学後半年で飛躍的にTOEFLのスコアが伸びることはないと思います。

つまり、何が言いたいかというと「名門大学に留学するなら、入学前に高水準の英語力が必要だよ。逆に言えば英語力さえあればなんとかなるよ。英語力が無い人も語学学校のプログラムを選べば安心だから、学部に入っちゃえば留学できちゃうよ」ってことです。どこでもいいから留学したい!っていう人は、SILSに入れば絶対に留学できます。

個人的にはこの留学必須制度にはとても感謝しています。留学は私の大学生活の目標のひとつでしたが、普通の学部に行っていたら、「まあ、留学しなくてもいいか、今日本にいるの楽しいし……」と思ってそのまま留学しなかったかもしれません。それに、留学に関する書類を用意するのって、ものすごーくお金と労力がかかるんです。どこかで「めんどくさい!もういい!」と投げ出していた可能性もあるかも……高校時代の私、ナイス!留学が必須でよかった!!!!!!

留学生と帰国子女の多さ

学部生の約3割は留学生です。SILSの学生にはSP1から4まで4種類の学生がいて、詳しくは忘れたけれどSP1が日本語を母語とする学生、SP2は日本語が母語ではない、いわゆる「留学生」扱いの学生です。この「留学生」の中には「海外暮らしが長い日本人」「日本人だけど日本語が話せない人」なども含まれます。SP2の日本人学生がけっこう多いのが私はびっくりでした。

逆にSP1には「ずっと日本で生まれ育ってきた外国籍の人」も含まれます。そういう人もかなり多いです。名前や風貌でその人のルーツを類推できないし、しない方がいいと思う。基本的に「日本語は通じない」と思っておけばOKです。

ちなみに、SP1の学生の中でも、特に「留学経験のない、英語が第一言語ではない学生」のことを特に「純ジャパ」と言います。他の大学でも使われる表現みたいですね。この言葉、「純粋な日本人=両親がどちらも日本人」みたいな意味にとらえられがちですが、生まれのルーツ以上に「日本の文化で暮らしてきたか」が重要視されている気がします。例えば「日本でずっと育ってきた韓国人」が「純ジャパ」を自称する時もありますし、そういう人で「純ジャパ」という呼称を選ばない人もいます。「純ジャパ」の中でも、英語ペラペラの超人もけっこういます。

私も、おそらく厳密な純ジャパではありませんが、個人的にSILSにおける「純ジャパ」の要素は
・言動やファッションなど、自分を作り上げた文化的背景が主に日本(国籍はあまり関係ない)
・英語圏・西洋への在住・長期留学経験がない
・英語に苦手意識がある(ここが一番大事!)
だと思っているので、私は「純ジャパ」を自称していました。

でもこの「純ジャパ」って言葉、たぶん数年以内にはなくなるでしょうね。「純粋な日本人」ってなんか、分断を生みそうだし、そういうことしないためのSILSなのでは……?って個人的に思います。それはさておき、様々な国から志を持ってやってくる外国人留学生や、何より多彩なバックグラウンドを持つ日本人学生に出会えたことが、私にとっては刺激になりました。

リベラルアーツ教育

SILSの特色として、「リベラルアーツ教育」を掲げている、というのがあります。リベラルアーツとは「一般教養学」とも呼ばれ、平たく言えばひとつの専門分野に縛られることなく、多様で多彩な分野を学際的に学んでいこう、というものです。

SILSの授業は7つのクラスター(分野)に分かれており、ざっくり分けると「科学」「哲学・歴史」「経済」「政治」「言語」「表現・アート」「文化・社会学」から興味のある授業を何でも受けられます。自分で何でも決められるので、他の大学や学部と比べて、かなり自由度が高くて楽しいです。私は前期は生物学、政治学、社会学、芸術系、心理学などの授業を取ってました。バラバラ!後期からは特に興味を惹かれた芸術教育やジェンダー系の授業・ゼミを取るようになりました。

このように、私の興味のある分野を探すことができてすごくハッピー!ではあるのですが、この「リベラルアーツの制度」には不満もあります。なぜかというと、それは「SILSの授業だけでは、4年間で専門性を深めることができないから」。確かにSILSには様々な分野の先生がたくさんいらっしゃいます。その分、ちぐはぐ感は否めません。舞台芸術の講義群を例にします。SILSでは「アイルランド演劇史」は学べる一方、「西洋演劇史」の授業はありません。「パントマイム」の授業はあるけれど、「舞台芸術論」についての講義は開催されていないのです。

このように、全ての分野についてキャッチ―に、誰でも興味が持てるようにと門戸を開いた結果、体系的な学びがしにくくなっている。これがSILSの現状です。元々、海外のリベラルアーツカレッジは大学院への進学を想定しており、「色んな分野の講義をつまみ食いしてみて!ここで学びたい分野を探せるといいね」というスタンス。対して、日本のリベラルアーツ教育は大学院進学率が低く、なぜか「留学」や「グローバルな視野をもつこと」と結びつけられやすくなっています。そして、結果的にそういった教制度が「英語が話せるだけで、勉強してきた中身は薄い大学生」を生み出すことになってしまっているのです。国際交流やインターンなどはやりたいと思えばいくらでもできます。英語力を活かして外資系企業に就くこともできるでしょう。だからSILSは就職に強いと言われています。ただ、専門性を深めたい学生にSILSは不向きです。

私はこの「SILS」としての弱い部分を、幸運にも「早稲田大学」という部分でカバーすることができました。早稲田大学には、副専攻の制度があり、他学部のジェンダーや舞台芸術の授業を受けることができたのです。私はジェンダー論を副専攻し、日本語の授業を取ることで少しずつ基礎的な知識や考え方を養うことができました。

また、早稲田大学の構内では、よく「早稲田の学生が無料で聞ける公演会」が開催されていました。ジェンダーやフェミニズムに関する講演会も頻繁に開かれており、そこに行くことで学びがありました。

このように、私は他学部の授業でなんとかその専門性を補填することができました。同じリベラルアーツカレッジでも、もし私がICUや国際教養学部などの単科(リベラルアーツの学部しかない)大学に行っていたら、専門性を深められないという短所を埋める方法が見つからなかったかもしれません。

もしくは、もし私が留学生や日本語の苦手な学生だったなら、他学部の授業はハードルが高く、SILSの授業内容に不満を持ち続けていたかもしれません。

じゃあ最初から専門性の高い学部を選べば解決か?というわけでもなく、私はSILSで色んな学問を学んだからこそ、ジェンダーをもっと学びたい!と思えたので、結果的にSILSでリベラルアーツを学ぶ➡興味ある分野を副専攻科目で学ぶ、という流れは自分に合っていたな、と思っています。

学部の文化と風土

前述した国際色の豊かさから、SILSは様々な人がいます。よくジェンダーの授業で「文キャン(文学部・文化構想学部のキャンパス)」に行くと、様子の違いにとても驚きました。

まず、ファッションが違います。文キャンの女の子たちはいわゆる女子大生っぽい服装で、ナチュラルメイクをしている子が多いイメージ。そうじゃない子もいるけどね!SILSはもう、ごった煮。バチバチに気合入った化粧でピアス全開のグループもいるし、下着レベルの露出度の子もいるし、普通の女子大生もいるし、すっぴんの子もいます。教室でカップラーメン食べてる子もいた(注意されてなかった)。

そう!割とSILSの教室って授業中に何か食べてる子が多いんだよね。文キャンで誰も食べてなくてびっくりしたんだけど!私の周りが食べてるだけなの?ちなみに私の最高記録は八ツ橋です。

とにかくSILSって自由です。いわゆる「海外志向っぽい前髪かきあげ系女子」が多いのは事実だけど、それ以外の子も別に浮かない。はず。

あと、私が取ってたメディア系の授業では映画のワンシーンを見て周りの人と感想を言い合う、っていうのが多かったんですけど、文キャンの人は映画見てもリアクション取らないんですよ!SILSの授業だと、割と皆で笑ったり、誰かがデカい声で茶々入れたりしながら映画見るので楽しいです。

もしかして、SILSの生徒ってモラルない……?なんか不安になってきたけど、授業や学生の雰囲気はちょっぴり海外っぽいんじゃないかな、と思います。だから、日本の風土になじめない~って言ってた帰国子女の友達は、SILSがすごくのびのびして楽しい!って言ってました。逆に、SILSの雰囲気が合わない人はとことん合わないかも。パイ投げするし……

私自身は、学部の雰囲気に対しては「まあ、別によくも悪くも……」という感じです。人のパイ投げ見るのはまあまあ楽しいし、派手な古着着ていってもトイレで知らない人がいいねって言ってくれるし、カップラーメンが食べられない教室よりは食べられる教室のほうがなんかイイじゃん……

その他

いろいろ他にもこまかい「早稲田」でよかったこと・悪かったこと、「SILS」でよかったこと・悪かったことをまとめてみました

「早稲田」でよかったこと

・サークルがたくさんある
・早稲田だから、で得したことが正直たくさんある
・早稲田がオープンでメガだから、早稲田の人とも早稲田大学以外の人ともたくさん会えていろんな繋がりできた(主に演劇)
・まあまあ給付型の奨学金がもらえた(足りない)

「早稲田」で悪かったこと

・すぐ「早稲女」と言われる
・慶応と比べられる(でも個人的にはちょっと楽しい)
・学費が高い
・東大とかにも挑戦すればよかった:絶対無理だと思ってたけど、挑戦だけでもすればよかった

「SILS」でよかったこと

・早稲田の中の学部ヒエラルキーから抜け出ているから楽
・色んな友だちできた
・話したり聞いたりするのは日本語のほうが断然楽だけど、学術的な文章はなぜか英語の方が読みやすいし書きやすくなった
・英語論文を割と気軽に読めるようになった
・色々許容度は上がった

「SILS」で悪かったこと
・学費がバカ高い:SILSは早稲田文系の中で最も高い
・純ジャパはなんだかんだ授業キツい
・英語力の伸びに見合わないくらい日本語が下手になった

これらを踏まえた私の結論はこんな感じ

・英語はなんとかなったから、深く悩まずにSILSに進学してよかった
・SILSに行けば英語が完璧になると思ってたし、劇的に上手くなった。でも完璧にはならなかった。それでもまあなんとかなる
・リベラルアーツの学部に行くなら、専門分野の知識を補填する手段を考えるべき➡大学院進学、副専攻履修など
・ネームバリューがあってなんだかんだよかった
・学費がバカ高い➡奨学金じゃどうにもならん、奨学金の種類と額増やしてください、慶應みたいに寄付で黒字経営してください、万が一ビッグになったらいっぱい寄付するから……

つまり!!!!

早稲田のSILSでよかった!!!!!ワーイ!!!!!!!!でもこれは結果論だから!!!!!SILSでどん底だった未来もきっとある!!!!!!

というより真面目な話、どんな大学のどんな学部に行っても現状に満足しないで自分なりに試行錯誤していくことが大学生活大事だったのかも

おしまい!


いつもはこんなnoteを書いています

ビートルズを知ったかぶりたい 

ごく短い詩的脚本『捨てる、その過程』

ポエトリー『ずっと前から好きでした』

#オープン学級通信

写真: 早稲田大学HPより引用

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