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アナログシンセサイザーのあるプログラミング教室

わたしの教室に置いてあるもので、一番らしくないものといえば、多分これですね。これは、日本の老舗シンセサイザーメーカーであるKORGのMS-20miniというアナログシンセサイザーです。もともとは1970年代に名機と呼ばれた シンセサイザーを、メーカー自らが2010年代に小型化して復刻販売したものなんです。3Dプリンターがあるプログラミング教室はよくあると思いますが(うちにもあります)、こんなものがあるプログラミング教室はちょっと珍しいのではないかと思ってます(^^)

実際にアナログシンセサイザーを教室に置いてみようと思った時はすでに復刻版も販売終了していましたので、メルカリで探してゲットしました(^^) ちょっとした家庭用プリンターと同じくらいの値段でした。

わたしの教室は「ロボット・プログラミング教室」と名乗っていて、どこにもSTEMとかSTEAMという看板はかかげていないのですが、わたし自身が永年学研の「○年の科学」という雑誌の編集に携わっていたため、まあそういう方面はわりと好きな分野なのですね。それに、アナログシンセサイザーというのは、音の物理的性質を体験するのに、これほど良い教材はないと、昔から思っていたのです。

教室では一応、音の解説〜セッティングの基本みたいな資料は作りましたし、はじめて触る子には、そこそこ説明しています。まず、基本的な部分として、「音」とは何かという話ですね。まあ当然これは「空気の振動」なわけです。そして、その振動が電気に姿を変えて伝わるというあたりが一番の基本です。

次に、その「振動」は「波」の性質を持っていることを説明します。まあこの辺になると、小学生がそんなに正確に理解出来るとはこちらも思っていないのですが、何となくでも、「そういうもんか」みたいな印象が残れば良いと思ってるのです。

ここで、よく見せるのが、Scratchのネコの鳴き声なんですね。

これが「波」だといっても、Scratch上ではなんかよく分からないんですが、わたしは、このニャーの音を書き出して、Audacityで開いて見せてます。

波形を拡大すると、こんな感じになります。

Audacityで波形をだんだん拡大していくと、上のように見えます。これを見せると、音が波の性質を持っていることが何となくわかると思うのですね。そして、ここからたたみかけるのです。では音の大きさと音程はこの波のどこに現れてると思う?と。

もちろん、こんなことを知ってる子はほとんどいません。たま〜にHz(ヘルツ)とかdb(デシベル)いう単位を知ってる子がいたりしますが、言葉を知っていても、中身はだいたいわかってないです。そこで、この波の縦の大きさが、音量(単位はdb)、この波が1秒間に何回繰り返すかが、音程(単位はHz)だと説明します。さらに、ラの音が440Hz、つまり1秒間にこの波が440回繰り返すとラの音になるのだというあたりの話をすると、まあだいたいが、へーという顔はしてくれるのです。

こうした前フリから、いよいよシンセサイザーに話をもっていくのですが、ここで、もう一つ質問をします。「では、ピアノの音とか、ネコの鳴き声とか、そういう音色の部分はこの波のどこに現れてると思う?」と。

これに正解した子どもは、まだ見たことがありません。大人でもなかなかこれは答えられない質問だと思います。正解は、「波の形」なんです。

つまり、「波の形」を電気的に作り出して、その波をいろいろと加工することによって音を作り出す機械が、アナログシンセサイザーということなのですね。この辺の前フリから、ここでアナログシンセサイザーの音の波の発生装置、VCO(Voltage Controlled Ocsillator)に話がつながるというわけです。

MS-20miniのVCO部分。この機種は、VCOを2つ搭載していて、それぞれの音を混ぜることができます。これでアナログ特有の「ゆらぎ」が発生するというのも、よく実演しています。これは実際に音を聞けば非常によく分かるので、いい体験になると思います。

実際教室では、このシンセサイザーで作った音をAudacityで録音して、それをScratchで作ったゲームのプロジェクトに持ち込むとかやっています。ただ、触る生徒さんがそんなに多くないというのも事実なんです。

というのも、これは特に必須のアイテムではないので、無理にやらせることをしていません。すると、「先生、これなんですか?」という質問すらしてくれない生徒が多いんです。教室では、集中力が切れて、Scratchに飽きてしまい、教室を放浪する生徒がたまにいます。すると、よくあるのは、棚に飾ってある今使ってないロボットとかをさして「これ、なんですか?」とか言うのです。こういう子は、単にScratchに集中できなくなって、時間つぶしにそういう質問をしているだけで、決してそのロボットとかがやりたいということではないのです。ところが、そういう子が何故かシンセサイザーだけは避けて通るんですよね。多分わたしが「触らせたい」と思ってるのを察して、「これなんですか?」をやると、とっ捕まって延々と説明を聴かされるのがわかっていて、近寄らないのかなぁ〜と思ったりするのです(^^)

ただ触ってみて、案外ハマる子も、そんなに多くはありませんが、いるんです。使いこなしてる子は、もう勝手にシンセをセッティングして、自分でPCと接続してAudacityで録音して、そのデータを書き出して自分のScratchに読み込むなんて事が、ひとりでできるんですね。ただ、こういうのが好きな子の中でも、用意したセッティングチャートをそのまま再現してるだけの子もいれば、全然セッティングチャートなんか見ずに、何となくそれなりの効果音作ってしまう子がいたりして、なかなか性格が出るというか、こういうものに対するセンスみたいなものも垣間見えたりして面白いのです。

あ、ちなみにわたしも楽器は全く弾けませんので、ただ音を作って喜んでるだけなんですけどね(笑)