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第47章 ~ 第53章、奴隷商人 Ⅺ、第54章、クレオパトラ最終戦闘、前章

第47章 ~ 第53章、
奴隷商人 Ⅺ、第54章
クレオパトラ最終戦闘
前章

奴隷商人 目次

奴隷商人とその時代
奴隷商人とその時代 (続き)

奴隷商人 Ⅺ 以下はチャート、地図なし、PIXELサイトが完全版

砂漠行のまとめ。

第47章 ●奴隷商人45、紀元前46年
 ●アルシノエの苦情
第48章 ●奴隷商人46、紀元前46年
 ●クレオパトラの目論見
第49章 ●奴隷商人47、紀元前46年
 ●砂漠行 1
 【砂漠行3日目】 50キロ
 【砂漠行4日目】 80キロ
 【砂漠行5日目】 110キロ
 【砂漠行6日目】 140キロ
 【砂漠行7日目】 170キロ
 【砂漠行8日目】 200キロ、オアシス
第50章 ●奴隷商人48、紀元前46年
 ●砂漠行 2
 【砂漠行9日目】 200+30キロ
第51章 ●奴隷商人49、紀元前46年
 ●砂漠行 3
 【砂漠行10日目】 200+60キロ
第52章 ●奴隷商人50、紀元前46年
 ●砂漠行 4
 【砂漠行11日目】 200+90キロ
第53章 ●奴隷商人51、紀元前46年
 ●砂漠行 5
 【砂漠行12日目】 200+120キロ

第54章 ●奴隷商人52、紀元前46年]
 ●クレオパトラ、最終戦闘 👈 未

奴隷商人 Ⅰ

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第1章 第4ユニバースの絵美と純粋知性体
第2章 ●純粋知性体
第3章 ●奴隷商人1、奴隷市場ホール、紀元前47年
第4章 ●奴隷商人2、絵美の奴隷売買成立、紀元前47年
第5章 ●奴隷商人3、コーカサスの女、紀元前47年
第6章 ●奴隷商人4、ムラーの家、紀元前47年
第7章 ●奴隷商人5、侵入者、紀元前47年
第8章 ●奴隷商人6、侵入者、紀元前47年

奴隷商人 Ⅱ

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第9章 ●奴隷商人7、パトロヌス、紀元前47年
第10章 ●奴隷商人8、アヌビスの屍体、紀元前47年
第11章 ●奴隷商人9、オチをどうするの!、紀元前47年
第12章 ●奴隷商人10、古代ローマの食事、紀元前47年
第13章 ●奴隷商人11、ジュリアが忍んでくる、紀元前47年
第14章 ●奴隷商人12、見破られた!、紀元前47年
第15章 ●奴隷商人13、海賊ピティオス、紀元前63年
 ●ムラーのピティオスへの依頼
第16章 ●奴隷商人14、ペトラとアイリス、紀元前50年
第17章 ●奴隷商人15、クレオパトラの異母妹、紀元前47年

奴隷商人 Ⅲ

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第18章 ●奴隷商人16、プローブユニット不完全体、紀元前47年
第19章 ●奴隷商人17、ジュリアとペトラとアイリス、紀元前50年
第20章 ●奴隷商人18、人さらい、紀元前46年
 ●第三期ポエニ戦争とそれに続く東地中海のヘレニズム国家との戦争
 ●ポンペイウス軍の海賊討伐
 ●人さらい
 ●説教
第21章 ●奴隷商人19、シーザー暗号、紀元前46年
第22章 ●奴隷商人20、ボウガン、紀元前46年
第23章 ●奴隷商人21、吸収、紀元前46年

奴隷商人 Ⅳ

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第24章 ●奴隷商人22、フェニキア港、紀元前46年
 ●フェニキア港
第25章 ●奴隷商人23、地中海1、紀元前46年
 ●地中海1
第26章 ●奴隷商人24、地中海2、紀元前46年
 ●地中海2
第27章 ●奴隷商人25、紀元前46年
 ●ヤッファ(テルアビブ)、紀元前46年
第28章 ●奴隷商人26、紀元前46年
 ●イシス、紀元前46年
 ●アレキサンドリア 1、紀元前46年
第29章 ●奴隷商人27、紀元前46年
 ●シナイ半島沖合、紀元前46年

奴隷商人 Ⅴ

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第30章 ●奴隷商人28
 ●純粋知性体
 ●4つのユニバース
 ●純粋知性体の飛来、1万年前
 ●クレオパトラと純粋知性体
第31章 ●奴隷商人29
 ●紀元前八千年
第32章 ●奴隷商人30、紀元前46年
 ●アレキサンドリア市内
第33章 ●奴隷商人31、紀元前46年
 ●タップ・オシリス・マグナ神殿

奴隷商人 Ⅵ

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第34章 ●奴隷商人32、紀元前46年
 ●リビア沖
第35章 ●奴隷商人33、紀元前46年
 ●アフロダイテ号船長室
第36章 ●奴隷商人34、紀元前46年
 ●大スフィンクス
 ●神殿巫女
 ●ムラーの寝室 1
第37章 ●奴隷商人35、紀元前46年
 ●神殿巫女・奴隷娼婦の選別

奴隷商人 Ⅶ

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第38章 ●奴隷商人36、紀元前46年
 ●ムラーの寝室 2
 ●マンディーサ
第39章 ●奴隷商人37、紀元前46年
 ●ジュリアとムスカ
 ●値段交渉
 ●トンネルの掘削
第40章 ●奴隷商人38、紀元前46年
 ●マンディーサとムスカ
第41章 ●奴隷商人39、紀元前46年
 ●絵美とアイリス
第42章 ●奴隷商人40、紀元前46年
 ●斥候
 ●飛行

奴隷商人 Ⅷ

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第43章 ●奴隷商人41、紀元前46年
 ●遭遇
第44章 ●奴隷商人42、紀元前46年
 ●戦闘
第45章 ●奴隷商人43、紀元前46年
 ●クレオパトラの狙い
 ●マンディーサ
第46章 ●奴隷商人44、紀元前46年
 ●アフロダイテ号のイシス
第47章 ●奴隷商人45、紀元前46年
 ●アルシノエの苦情
第48章 ●奴隷商人46、紀元前46年
 ●クレオパトラの目論見

奴隷商人 Ⅸ

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第49章 ●奴隷商人47、紀元前46年
 ●砂漠行 1
 【砂漠行3日目】 50キロ
 【砂漠行4日目】 80キロ
 【砂漠行5日目】 110キロ、実質4Pです
 【砂漠行6日目】 140キロ、アイリスと飛行訓練
 【砂漠行7日目】 170キロ、絵美様と飛行訓練
 【砂漠行8日目】 200キロ、オアシス
第50章 ●奴隷商人48、紀元前46年
 ●砂漠行 2
 【砂漠行9日目】 200+30キロ、アルシノエはどこの生まれなんだ?
第51章 ●奴隷商人49、紀元前46年
 ●砂漠行 3
 【砂漠行10日目】 200+60キロ、今日は絵美と二人きり

奴隷商人 Ⅹ

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第52章 ●奴隷商人50、紀元前46年
 ●砂漠行 4
 【砂漠行11日目】 200+90キロ、ベルベル人の奴隷の子どもたち
第53章 ●奴隷商人51、紀元前46年
 ●砂漠行 5
 【砂漠行12日目】 200+120キロ
 【砂漠行13日目】 200+150キロ
 【砂漠行14日目】 200+180キロ。大スフィンクス

登場人物

ムラー     :フェニキア人奴隷商人、知性体アルファのプローブユニット
森絵美     :知性体ベータに連れられて第2に来た第4の21世紀日本人女性、
         人類型知性体
エミー     :黒海東岸のアディゲ人の族長の娘、巫女長
絵美/エミー  :知性体の絵美に憑依された合体人格

アイリス    :エジプト王家の娘、クレオパトラの異母妹、
         知性体ベータの断片を持つ
ペトラ     :エジプト王家の娘、クレオパトラの異母妹、アイリスの姉、
         将来のペテロの妻、マリアの母
ペテロ     :ムラーの港の漁師
マンディーサ  :アイリスの侍女

キキ      :20才の年増の娼婦
ジャバリ    :ピティアスの海賊の手下

ソフィア    :ムラーのハレムの奴隷頭、エチオピア人
ジュリア    :ムラーのハレムの奴隷頭、ギリシャ人
ナルセス    :ムラーのハレムの宦官長
アブドゥラ   :ムラーのハレムの宦官長
パシレイオス  :ムラーのハレムの宦官奴隷、エチオピア人
アルシノエ   :アイリスたちの侍女頭

ピティアス   :ムラーの手下の海賊の親玉
ムスカ     :ムラーの手下、ベルベル人、アイリスに好意を持つ

クレオパトラ7世:エジプト女王、知性体ベータのプローブユニット
アヌビス    :ジャッカル頭の半神半獣、クレオパトラの創造生物
トート     :トキの頭の知恵の神の半神半獣、クレオパトラの創造生物
ホルス     :隼の頭の守護神の半神半獣、クレオパトラの創造生物

イシス     :エジプト王家の娘、クレオパトラの従姉妹

アフロダイテ号 :大スフィンクス攻撃のためのムラーの指揮するコルビタ船
アルテミス号  :大スフィンクス攻撃のためのピティアスの指揮するコルビタ船

第47章 ●奴隷商人45、紀元前46年

●アルシノエの苦情

 小テントで、ムラー様、絵美様と私、イシス、マンディーサとムスカ、侍女頭のアルシノエが一緒に夕食の席についた。ムラー様がツンデレのマンディーサが、やっと告白したか、おめでたいというので、二人を招待したのだ。

 いやぁ、マンディーサをやっちまわなくて良かったぜ、とムラー様が言って絵美様に思いっきりつねられた。この下品な男め!と睨みつけられている。あなた、マンディーサとアルシノエに手を出したら承知しませんからね!アイリスと二人で火あぶりにいたしますよ!と怒っている。まあ、アルシノエも15才でかなりの美少女だから、ドスケベのムラー様が目をつけるかもしれない。

 絵美様がアフロダイテ号から羊肉とマグロの肉を持ってきたので、串焼きのシシカバブにした。無茶苦茶おいしい。イシスが横に座っているが、元気がない。夕食もあまり食べていない。

「どうしたの?イシス?元気が無いわよ?食欲が無いわね?今日ベルベル人に拉致されかけたのが、ショックなの?」と聞いてみた。
「いいえ、アイリスお姉さま、クレオパトラ女王の第一の狙いが私だと聞いて。私、戦闘力もないですし、みんなに守られるだけで足手まといだなあ、って思いまして。情けないです。女王が私の体を狙っているなら、いっその事、殺していただいたほうがいいじゃありませんか?」

 串焼きのシシカバブをパクついていたムラーが「イシスに戦闘力がないって?アイリス並みにあるけどな?ハイファの港を後にして、テルアビブに向かう途中で海賊船からイシスと奴隷女を奪っただろう?それで俺がイシスをやっちまった時、クレオパトラが植え付けた思念を吸収したが、4年も思念が中にいたから、その思念がなくなった空洞をそのままにしておくとイシスは死んじまう。だから、俺の断片を植え付けておいたんだよ。つまり、イシスも実は俺らの仲間の化け物だ」
※地中海2
※ヤッファ(テルアビブ)、紀元前46年
※イシス、紀元前46年

「な、なんですって?ムラー、あなた、そんな大事なことを黙っていて!」
「絵美とアイリスが激怒して人の話を聞こうとしないからだぜ。絵美は俺の頬を引っ叩くし」
「でも、じゃあ、アイリスは?アイリスはベータのプローブの断片を持っているんでしょ?それだって、悪しき思念かもしれないじゃない?」

「ああ、アイリスを買ったのは、紀元前50年で、まだムラーの体にプローブが入っていない時だ。それでムラーがアイリスの処女をいただいて、その後、アイリスはムラーに自分の存在を忘れさせちまった。去年、絵美と俺でアイリスを犯した時、ベータの断片じゃあ、いくらアイリスがいい子でも、潜在的に邪念がないとも限らないと思って、イシスと同じく、ベータの断片を吸収してアルファの断片を空洞に注入しておいた」
※第16章 ●奴隷商人14、紀元前50年
※第17章 ●奴隷商人15、紀元前47年
※第18章 ●奴隷商人16、紀元前47年

「ムラー、あなたは、セックスする相手に断片を注入して回っているんじゃないでしょうね?あなたにやられたハレムの女がみんな知性体の化け物になってないでしょうね?」
「絵美、お前な、アイリスとイシスは、元々、クレオパトラのベータの断片を持っていたんだぞ?彼女ら以外で、俺がそんなことをするわけがないじゃないか?」
「ちょっと待ってよ!私だって、知性体なんだから、私にもセックスしてなにかしたの?」
「絵美、お前は特別。純粋知性体のアルファ本体が、死んだ森絵美から思念、意識、記憶を取り出して知性化した。プローブごときの俺は何もしてない。その人類ベースの知性体にアルファ本体がギフトを加えた。それだけだ。絵美/エミーとやるときは、純粋にコーカサスの美少女とやるのを楽しんでるんだよ」

 イシスがムラー様に「じゃ、じゃあ、私もアイリスお姉さまや絵美様のように、念動力が使えたり、空を飛べたりできるんですか?」と聞いた。

「潜在能力があるってだけだ。訓練しないと使えねえぜ。絵美とアイリスに聞いて練習しな」
「わかりました。練習したら、クレオパトラと闘えるんですね?」
「そりゃ、無理だろ。あっちはプローブ本体だからな。だが、半神半獣や人間相手は闘えるだろう」
「よかったです。私、訓練次第で、足手まといじゃなくなるんですね!ムラー様、ありがとうございます。私、ムラー様のためなら何でも致します!」
「え?何でも?じゃあ、今晩、イシスとアイリスの従姉妹で3Pを・・・」今度は私が思いっきりつねってやった。このドスケベ!

 今度はアルシノエが元気がない。「アルシノエ、今度はあなた?」

「イシス様も足手まといでないなら、この42人で足手まといなのは私だけです。私は侍女のお役目しかできません。みんなが命をかけて闘う時に、私だけお留守番とかお茶の準備とかしかできません。旦那様、私ごときで申し訳ありませんが、私の処女を旦那様に捧げます。私にも知性体の断片とやらを下さい!」
「アルシノエ、そりゃあ、お前は可愛いし、いい子だけど、絵美もアイリスもイシスも元々知性体を持っていたから仕方なくいろいろやったが、彼女たちだって、できれば普通の女でいたかったと思う。いいかい、俺たちゃ、バケモンなんだ。普通の生活は送れない。普通に恋愛もできない。お前はお前のままの自然の姿でいるのがいいんだ。誰もお前を足手まといなんて思わないよ」

「だけど、旦那様!」
「マンディーサを見てみろよ。究極のツンデレ女、天然ボケ女で、ムスカが近づきゃ噛みつく、自分の気持ちに素直にならなかった。だけど、アルシノエ、考えてもみろよ。もしもだよ、俺の絵美とかアイリスが怒り狂うだろうが、仮に俺がマンディーサをやっちまって、知性体の断片をマンディーサに入れちまったら、マンディーサはいくらムスカが好きでも、もう一緒になれない。ムスカは普通の人間だからな。」
「・・・」

「旦那様、究極のツンデレ女で天然ボケ女で悪うございました。だけど、アルシノエ、旦那様の言われていることは正しい。普通の人間が良いのよ」とマンディーサが言う。
「でも、私、普通の人間ですけど、戦闘ができない普通の人間ですわ。体術もできない、筋力もありません!」
「そんなもん、武器はいろいろあるから、別に体術とか筋力とか必要ない。銃の腕があれば狙撃だってできるってもんだよ。大スフィンクスに着くまで時間がある。未来の飛び道具の使い方なら教えてやれるよ」
「・・・目は良い方です」
「だったら、レールガンでの遠距離狙撃から始めるか?」
「お願い致します」

「なんだ、つまんねえな。別に、普通にセックスする分には、マンディーサとアルシノエ、二人相手にセックスしても俺はかまわないけどな?」絵美様がムラー様のほっぺたを引っ叩いた。私は彼の太腿をつねり上げた。

第48章 ●奴隷商人46、紀元前46年

●クレオパトラの目論見

「まあ、しかし、問題は、クレオパトラ7世をぶっ殺して、未来の工業製品と人造半神半獣製造工場をぶっ潰しても、それだけじゃあダメってことだ」とムラー様が言う。
「どういうことでしょうか?」
「つまりだ、クレオパトラ7世、彼女に憑依しているベータのプローブを抹殺したとしても、クレオパトラ7世という存在は、この世界の時間軸、歴史を変えないためには必要だってことだ。現在のエジプトの政治情勢をおさらいしよう」

●今から5年前、紀元前51年、プトレマイオス12世が死去した。
●クレオパトラが18歳の時だ。
●プトレマイオス12世の遺言によって弟のプトレマイオス13世と共同で彼女は王位に就いた。
●ローマの内戦で、シーザーと争ったポンペイウスは、二年前の紀元前48年8月9日、ファルサルスの戦いでシーザーに敗れた。
●その頃、プトレマイオス13世は、妹のアルシノエ4世と共謀して、クレオパトラを幽閉して実権を握った。
●紀元前48年、シーザーに敗れたポンペイウスは、エジプトに逃れてきた。
●エジプト王国は、当初ポンペイウスへ協力的な姿勢を示していたが、内部での話し合いの中で、ポンペイウスを殺害することを決定した。
●二年前、紀元前48年9月29日、大型のガレー船でエジプトのペルシウム港へ到着したポンペイウスは、ガレー船から離れたと同時に小舟の中に潜んでいたエジプト軍の刺客によって殺害された。
●紀元前48年10月、シーザーはエジプトへ到着したが、ポンペイウスの死を知ることとなる。
●プトレマイオス13世は、従者にポンペイウスの首をカエサルに届けさせたが、カエサルは怒り狂ってその従者を殺してしまう。
●ポンペイウスの4人目の妻ユリアは、カエサルの娘だった。仲は良かった。
●カエサルはアレクサンドリアを訪れ、追放されていたクレオパトラを召喚した。
●有名な絨毯の中からシーザーの前へ現れた、というお話だ。
●まあ、その晩、シーザーはクレオパトラを抱いたんだろう。
●シーザーは、ローマに敵対するプトレマイオス13世を攻め殺し、アルシノエ4世を捕らえた。
●クレオパトラは、去年、紀元前47年に、シーザーとの間にカエサリオンを産んだ。

「さて、俺がわからないのは、両性具有で、生殖能力がない、ガキを作れないクレオパトラがだ、どうやって、シーザーを騙して、ガキを作ったのか、わかんねえんだ。まず、クレオパトラを抱けば、シーザーはそこにチ●コがあるのがわかるだろう?マ●コもある。これじゃあ、絶世の美女だとしても、驚いて子供なんて作んねえよ。第一、クレオパトラは子宮がないから、受胎できない。イシス、お前、なにか知ってるか?」

「ムラー様、知っています。今、クレオパトラの妹、アルシノエ4世はローマ軍の捕虜となってますね?実は、アルシノエ4世には双子の妹がおります。カエサリオンを産んだのは、アルシノエ4世の双子の妹です。セレネという名前です。クレオパトラは、アルシノエ4世を辱めたいがために、彼女の双子の妹を侍女にしたんです。もちろん、セレネもクレオパトラを憎んでいます。ただ、クレオパトラの精神操作の暗示で、彼女は真実を誰にも話せません。ムラー様にお会いする前の私のようなものです。クレオパトラは、自分の両性具有が知られないように、シーザーがセックスを求めた時、セレネをシーザーの元に送りました。シーザーはクレオパトラと思い込んで、セレネを抱き、妊娠したのです。実の妹ですから、セレネもクレオパトラによく似ております」

「ほほぉ、そういう仕組みだったのか」
「セレネも私と同じ、クレオパトラに犯されておりました。邪悪な思念を注入されています」
「クレオパトラにとって、アイリスはクレオパトラの異母妹で、イシスは従姉妹、セレネは実の妹。アイリスは6世から偶然にプロー図の断片を転移させられたが、イシスとセレネは犯されて、思念を注入されたってわけか。それで、セレネをシーザーに犯させて、カエサリオンを産ませて、自分の息子と偽っているということだな」
「その通りです」

「なるほどな。じゃあ、これから二年間くらいの間に、本来の時間軸なら何が起こるかというと・・・」

●シーザーは、去年、紀元前47年に独裁官任期を10年延長することに成功している。
●今年、紀元前46年7月、カエサルはローマへ戻り、凱旋式を4度にわたって挙行する。
●凱旋式の際に、クレオパトラはプトレマイオス14世とカエサリオンと共にカエサルのティベリス川沿いの別荘に滞在する。
●キケロらローマの有力者と面会する。
●紀元前44年2月には永久独裁官となる。
●紀元前44年3月15日に暗殺される。
●前年の紀元前45年9月15日にシーザーは遺言状を既に書いていた。遺言状の中身は、
 1)シーザーの後継者に自分の妹の孫にあたる
   オクタヴィアヌスを指名する。
 2)シーザー所有の資産の4分の3は、
   ガイウス・オクタヴィウスとアティアの息子、
   オクタヴィアヌスに遺す。
 3)第一相続人オクタヴィアヌスは、相続した時点で
   カエサルの養子となる。
 4)息子となったオクタヴィアヌスはカエサルの名を継ぐ。
●この遺言状が公開されて、シーザーの右腕のアントニウスは失望した。
●ローマにカエサリオンと共に滞在していたクレオパトラも、遺言状の中でカエサリオンについて一言も言及しなかったことに失望した。

「こういうことが起こるはずなんだ。これらのことが、俺たちがクレオパトラをぶっ殺せば、クレオパトラはいない、起こらないことになる、そうなると、歴史が変わっちまう」
「ムラー様、どうすればいいんでしょう?」
「アイリス、思案中だよ・・・う~ん・・・」

「まず、俺の知っている未来の起こるだろう歴史を彼女も知っているはずだ。同じプローブなんだから。クレオパトラが歴史を変えるとすると・・・彼女はどこで歴史を変えるか、だ」

 ローマ帝国はローマ人の元老院の人間の支配しか受け付けないだろう。エジプト女王がローマ皇帝にはなれない。帝国がすぐ崩壊してしまう。

 紀元前31年、アクティウムの海戦が開始される。兵員の数ではアントニウス・クレオパトラ連合軍が上回っている。両軍が少し交戦した時点でクレオパトラの艦隊が戦線を離脱。アントニウスはこれを追って撤退。指揮官を失ったアントニウス軍は陸海ともに総崩れとなって潰走。オクタヴィアヌスの勝利となる。これが歴史上、起こることだ。

 だが、この時、クレオパトラが謎の戦線離脱をしなかったら?アントニウスとクレオパトラが勝っていたかもしれない。だから、彼女は、紀元前31年まで何もしない。オクタヴィアヌスに勝ったアントニウスは、大ローマ帝国の終身独裁官、いずれは皇帝となる。クレオパトラの傀儡として。

 クレオパトラのカードは、セレネに産ませたシーザーの忘れ形見のカイサリオンと、これから産まれるアントニウスとの子供の双子の姉弟。これもセレネに産ませるつもりだろう。

 それで、クレオパトラ7世の体を捨て、双子の姉に憑依して、クレオパトラ8世になる。彼女をカイサリオンか双子の弟と結婚させる。エジプト王国は、大ローマ帝国の皇帝直轄領にならず、独立を保てる。そして、クレオパトラ8世は、ローマ皇帝になったアントニウスの妻。

 さて、俺たちが幸運にもクレオパトラをぶっ殺したとする。そうなると、起こることは、シーザーの暗殺は、クレオパトラがいようといまいと起こるだろう。敵が多いシーザーなら、紀元前44年3月15日に暗殺されなくても、いずれは暗殺されるだろう。

 オクタヴィアヌスは、アントニウスと三頭政治でしばらくしのぐだろう。しかし、アントニウスの後援者のクレオパトラはもういない。エジプト王国の支援が期待できないアントニウスは、オクタヴィアヌスに戦いを挑んで自滅するか、単なるローマの将軍として一生を終わる。紀元前31年のアクティウムの海戦は起こらない。

 クレオパトラ亡き後、アントニウスに恩も義理もないエジプト王国は、アントニウスに肩入れしてローマに反抗することはない。だから、ローマに支配される理由もなくなる。エジプトがローマ帝国の皇帝直轄領になることはない。

 クレオパトラの夫だった弟プトレマイオス14世は生きている。プトレマイオス13世と共謀してローマに反抗したアルシノエ4世は、ローマで行われたカエサルの凱旋式で、市中を引き回され 辱めを受け、ただ、シーザーが望んだので死刑は免れる。彼女はトルコ西部の小アジアの都市、エフェソスの居宅に幽閉されるはずだ。

 カエサリオンを産んだ本当の母親、セレネは、アルシノエ4世の双子の妹。将来、アルシノエ4世は妹セレネと共謀して、弟プトレマイオス14世を殺すか追い出すだろう。そして、アルシノエ4世がエジプト女王、カエサリオンが共同統治のエジプト王となる。セレネがクレオパトラ8世になるかもしれない。

 つまり、クレオパトラを俺たちがぶっ殺すと、エジプトは独立を保ち、ローマの皇帝属領にはならなくなり、ローマの同盟国として生き延びる。そして、エジプト王カエサリオンは、亡きシーザーの忘れ形見。エジプト王国はオクタヴィアヌス率いるローマ帝国に対して影響力を持つ、ということになる。

「俺たちが失敗してクレオパトラが生き残ったら、彼女が歴史を変えちまう。成功して、ぶっ殺せても、たぶん、アルシノエ4世とセレネ、カエサリオンが歴史を変えちまうってことだ」

第49章 ●奴隷商人47、紀元前46年 ●砂漠行 1 【砂漠行3日目】 50キロ

 25キロ、オアシス方向に進む。4年前、テーベからアレキサンドリアに招集されて王宮で暮らしていたが、今までラクダに乗って長距離を旅したことがなかった。昨日のホルス、アヌビス、ベルベル人の襲撃があったので、絵美様、アイリスは、低空で進行方向に飛行して斥候をしている。私も早く飛んで戦闘できる能力を身につけないといけないと思う。飛行するイメトレは習ったので、浮いてチョコチョコ飛ぶ程度はできるようになった。

【砂漠行4日目】 80キロ

 今日は砂丘が少なく、迂回しないですんだので、30キロ、オアシス方向に進む。今日の斥候はアイリスだけが行って、絵美様は残った。私に飛行を教えるためだ。砂漠スレスレを低空飛行してキャンプから少し離れた。ホルスが飛んでいたら気づかれるためだ。「自分の周囲の空気を一緒に運ぶつもりで動くのよ」と絵美様が言う。言うほど簡単じゃない。体の向きと進行方向が違う時、進行方向に対して空気抵抗を減ずるように、自然にベストの空力形状にするのが難しい。

【砂漠行5日目】 110キロ

 30キロ、オアシス方向に進む。「絵美様は嫉妬心がお強いですね?よほどムラー様が好きなんですね?」と聞いてみた。
「どうなんだろう?私はムラー以外できない体だし。二千年の未来では一夫一婦が普通だったのよ。だから、その組合せの理由付けで愛情なんて感情が発明されたと思う。一種の接着剤。相手が法律的なパートナー以外とやったら不倫と言われて非難される」
「面白そうな世界ですわ。紀元前では愛情なんて感情は贅沢品だと思います。男に限らず女でも相手を養えるなら何人でもいてもいい。一夫一婦なんて言っていたら、養えない社会階層は結婚できなくなるか、結婚しても家族が餓死します。それに7、8人産まないと半分以上死んでしまうので、産むためにはセックスしないといけません。家族が多くないと一家が衰退します。だから、男中心のハレムは必要ですよね?女中心のハレムだっていいですが、子宮はひとつしかないので、産める可能性が低くなります」
「エミーもそういうのよ。ムラーに自由にセックスさせてやりなよ、他の部屋でイジイジするのがイヤなら参加しちゃっても良いわけだし、って。それがこの世界では正しいってわかってはいるんだけどね」
「安心で安全な安全保障環境におかれているから、愛情なんて言えるんです。たいがいが男のほうが財力、権力を持っていますから、力を持つ方は愛情なんて気にしません。力を持たないほうが、女のほうが愛情なんてので、相手を縛りたいってことなんでしょうね?でも、愛情なんて実態のないもの、形而上的なものなら、肉体関係と愛情は別、と思い切ってしまえないんでしょうか?不倫ってイメージできないなあ」
「単純な肉体関係ならいいのよ。でも、不倫相手が乗っ取りを企むとかするから、不倫は避けないといけない関係だったわ」
「第二夫人が第一夫人の座を狙うような?アイリスが絵美様を蹴落として、第一夫人になろうとするみたいな?」
「第一夫人が第二夫人を知らないで、第二夫人が密かに第一夫人になろうとしているみたいなものよ。アイリスと私じゃ不倫の例にならないわ」
「ハレムで、旦那様が忙しい時、玉なし竿ありの宦官に代わりにやらせるのは不倫なんですか?」
「う~ん、各々の家庭で環境が違うものねえ。20世紀の倫理をあてはめちゃいけないわね。少なくとも、ムラーの一家はこれでうまく運営できているってことなんだわね。仕方ない」
「絵美様、今晩、ムラー様と三人でいかがでしょうか?」
「イシス!あなた目覚めたの?」
「アフロダイテ号で旦那様にされてから、体が疼きます。クレオパトラの意識もなくなりましたので、邪念もなくて楽しめそうです」
「じゃあ、お願いしましょうか」
「だって、絵美様、アイリス、私は、他の普通の人間としたら、相手が死んじゃうんですから、選択の余地はないですもの。あれ?アイリスはムスカと試して相手が死んじゃうとわかりましたが、私は試してませんね?もしかしたら、相手は死なないかも?」
「止めておいたほうがいいわよ。相手がもしも射精したら、止まらなくなって、血まででてきて死んじゃうかもしれないんだから。私なんてどうなるの?相手が爆発でもするのかしら?」
「じゃあ、今晩は3Pということで」
「体は3つですが、エミーもいるので、実質4Pです」

【砂漠行6日目】 140キロ

 昨晩は、ムラー様と絵美/エミー様に可愛がっていただいて大変満足。絵美様が、私が16才の時、そんなに性欲があったかしら?と言う。エミー様が、12才頃から始めないとガキを十分産めねえじゃねえか、絵美の生きていた時代は安心安全で贅沢だったんだ、この時代は、早熟じゃないと生き残れないんだよ、と言う。なるほど。あの堅物の侍女頭のアルシノエも性欲あるんだろうな?

 30キロ、オアシス方向に進む。最初の予定では、オアシスまで150キロ、オアシスからネクロポリスの大スフィンクスまで180キロ、1日目標20キロ、人家を避けて進む予定だ。2週間ちょいで着くはずだったが、ベルベル人と半神半獣の攻撃もあったので、進行速度を速めた。攻撃されたから迂回路をとったので、ムスカがオアシスまで残り60キロぐらいじゃないか?と言う。とすると、明後日にはオアシスに到着するんだろう。

 今日はアイリスと飛行訓練。だんだん、意識しなくても空気抵抗を減らすベストの空力形状に空気層を変形できるようになってきた。一緒に移動する空気層の容積を減らして、イルカのような紡錘形にすればいいのがわかった。ただ、あまりに空気層の容積を減らすと呼吸が難しい。空気層の容積を加減して空気の入れ替えをするタイミングを練習しないと。

 アイリスと上方直上をとる練習をする。まず、私がアイリスの上方直上の位置について、急降下して、すれ違いざま、相手を真っ二つに切り裂くイメージ。武器は40センチの刃長のグラディウスを使った。

「アイリスお姉さま、間違って本当に切ってしまったらどうしましょう?」
「頭、心臓以外だったら、またはえてくるから大丈夫よ」
「私、手脚がはえたことありません!」
「私だって、旅の最初の日にホルスに腹を裂かれた時の経験だけよ」
※第43章 ●奴隷商人41、紀元前46年、遭遇
「どうやるんですか?体の再生って?」
「意識があったほうが良いわね。意識がある方が再生速度が速いとムラー様が言っている」
「じゃあ、無意識でも再生はできるってことですね?」
「でも、意識がなくなったら、相手の次の攻撃でやられちゃうでしょ?」
「ああ、なるほど。それで?」
「治れって念じるの。治れ、治れ、治れ、でも、チチンプイプイでもなんでもいいから、負傷部位を意識して念じるのよ」
「痛そうですよね?」
「死にそうになるくらい痛い!だから、痛覚を遮断するの」
「練習しないとそれ難しそう」
「練習できるかな?手か脚を切断して試してみたほうが早いかもしれない」
「・・・それはまたの機会にいたしましょう・・・」

【砂漠行7日目】 170キロ

 30キロ、オアシス方向に進む。今日は絵美様と飛行訓練。

「今日は手加減なし。本気でやりましょう」と絵美様が言う。ゲェ~、本気?「もちろん、私はあなたへの頭、心臓への攻撃はなし。それ以外は自由。あなたは頭でも心臓でもどこでも自由。最初は、イシスに上方直上を取らせてあげるわ。さあ、来なさい」

 絵美様よりも千メートル、上方まで急上昇した。反転した。隼が翼を畳んで落下するイメージだ、と言われた。彼女に飛びかかる。40センチの刃長のグラディウスで切り下げる。寸前で飛び下がられた。短剣が空を切る。急ブレーキをかけて反転上昇した。彼女も並走して上昇している。短剣がかち合って火花が飛ぶ。彼女が右手の指をそらせて手のひらの付け根を見せた腕を突き出して念動波を送ってくる。ドンッ。吹っ飛ばされる。ズルい!・・・いや、短剣しか使わないとは言ってなかったわね。

 吹き飛ばされた分、上昇が遅れた。彼女に上方をとられた。真っ逆さまに襲いかかってきた。あっという間に横をすり抜けられたと思ったら、右腕の肘から先がない。本気でやりましょう、ってそういうこと?!肘の切断面から鮮血がほとばしる。痛い!痛い!痛い!

 下方で反転してきた。逃げようとするけど逃げ切れなかった。今度は左腕を切断された。意識が遠のく。痛覚を遮断する。ダメだ。「もう、勘弁してください」と地上に降りた。

 両手がない。これ、本当にはえてくるの?治れって念じるのよね。治れ、治れ、治れ、負傷部位を意識して念じるのよね?一生、両手がないなんて勘弁して!治る!はえる!

 ・・・腕の切断部から、何かが出てきた。骨が形成されて、赤い血で覆われた肉芽がみるみる膨らんで骨を包んでいく。肉芽が筋肉になる。筋肉が連結していき、その上で皮膚がみるみる張ってくる。数秒のことだった。自分で見ていても気持ち悪い!

「荒療治だったけど、一度はやっておかないとね。本番で慌てふためいたら死んじゃうから」
「絵美様、ひどいなあ。はえてこなかったら、どうするつもりだったんです?」
「あら?ムラーの血清を持ってきたから、大丈夫なのよ。痛覚を戻しなさい」
「痛覚を・・・あ!あ!あ!痛い!痛い!」
「そりゃあ、皮膚の中で再生が進んでいるから。まだ指は曲げられないでしょ?」
「まだ無理です」
「神経の連結が終了していないから。だから、覚えておいてほしいのは、みかけ再生が終わったように見えても、数分は元のようには使えない、ってこと。その間は、敵の攻撃を避けて逃げるの」
「あの、皮膚の色が違うんですけど・・・」
「日焼けをすれば数日で見分けがつかなくなるわよ」
「しかし、あそこで念動波かあ。複合技を身につけないと・・・」
「ビームで心臓をやられたらお陀仏だったわね」
「20世紀で格闘術でもやられていたんですか?」
「まさか。心理学専攻の学生だったわ。戦闘の時は、エミーが出てくるのよ。最近は、状況に合わせて、クルクル出たり入ったり。BLACK LAGOON の二挺拳銃(トゥーハンド)のレビィとバラライカが同じ体に入っているようなものだわ」
「誰です?それ?」
「え?ああ、こっちの話。未来のマンガの登場人物」
「?」

【砂漠行8日目】 200キロ

 30キロ、オアシス方向に進んだ。上空からオアシスが見えてきた。到着は日没寸前。キャラバンに戻って、オアシスの位置を報告した。

 ムスカが旦那様に「オアシスの脇にベルベル人の村があるはずです。水利権を守るために武装してます。仁義を通して使わせてもらいましょう」と言う。旦那様とムスカが村の方に行く。女は後ろに下がってろ、女のいるキャラバンは襲撃されるからな、と言われた。襲撃されても皆殺ししちゃうんだけど、目立たないようにことなかれで行動しないといけない。

「銀貨で払ってやったよ。それと酒をプレゼントした。それから、オアシスに直接入るのは水質保全の問題でダメだ、って言うから、じゃあ、浴場を脇に作ってやって、水を引き込んで浸透槽を作ってやると言っておいた。他の人間も使えるようにしておく。浴場付きオアシスなら入浴料も取れるぜ、と言っておいた」と言う。

 確かに、ここは低地で、地下水が湧き出た泉というところ。42人が水浴びして、ラクダが水を飲んだらオアシスが汚れてしまう。

 絵美様が村人から見えない砂丘の陰で、くぼみを作って、直径10メートルくらいの浴槽を作った。浴槽面は硅砂の溶けたガラス質になっている。ラクダの水飲み場も作った。オアシスに向けて細いトンネルを導水路としてうがって水を引く。上下の引き上げ板でバルブ代わりにした。排水路の終点で、十数メートル井戸を掘って、浸透桝にする。お風呂に入れる!!!

 オアシスは、水面と周囲にはえているヤシの木などの植物からの水の蒸発で周辺の気温は低くなる。さらに夜になると急激に温度が下がるので水の温度はさらに下がる。日没あたりがちょうどいい。ぬる湯だ。

 砂漠の民は、オアシスに住んでいる人間でも入浴の習慣はない。体を拭う程度。絵美様の言う20世紀の映画で、オアシスを見つけて、ドボンと飛び込んだら、水質汚染になるわよね。でも、排水設備付きの浴場なら、水浴びしても大丈夫になる。

 みんなで水浴びした。ラクダにも水を飲ませる。こいつら、どれだけ飲むのかしら?150リットルくらい飲むんじゃないかしら?ムラー様が言うには、ラクダがコブに水を貯めるなんて間違いだ、と言う。飲んだ水は血液中に吸収され、大量の水分を含んだ血液がラクダの体を循環する。ラクダ以外の哺乳類では、血液中に水分が多すぎるとその水が赤血球中に浸透し、その圧力で赤血球が破裂してしまうが、ラクダは水分を吸収して2倍にも膨れ上がっても破裂しないのだそうだ。なるほど。

 水浴びして生き返った。もう体中、ジャリジャリ。あそこもネトネト。一昨晩、いっぱいムラー様に出されたけど、洗える水もなくって、海綿スポンジで拭いただけだもん。やっぱり、砂漠のセックスは砂は入るしベトベトになるから、ダメだね。それでも砂漠の民は平気なんだよねえ。

 夕食の準備をする。ムラー様がバーベキューにしようと言う。村人も呼ぼうと言う。村は、15家族ぐらいだった。代々ここに住んでいる。全員で150人くらいだ。

 村の長(おさ)が村人を引き連れてきた。ムラー様が、浴場の使い方を教えている。この引き上げ板で、引き入れる水の量を調整するんだ、とやってみせている。ちゃんと掃除すればずっと使えるぜ、と言う。

 ムラー様の横に村の長(おさ)が座った。羊皮紙に書かれたボロボロの家系図なんかを見せている。数十代続いているようだ。ベルベル人もオアシスのメンテがあるから、ここを襲うものはいないとのこと。

 ムラー様が村人たちに酒を振る舞った。もちろん、水で薄めて。村人からデーツやナッツなどを買った。こちらも綿の反物、糸や針などを売った。払いはアウレウス金貨じゃなくて、デナリウス銀貨、セステルティウス青銅貨、アス銅貨で支払う。アウレウス金貨は25デナリウス銀貨で、デナリウス銀貨1枚は約二千円の価値がある。

 1アウレウス金貨     約5万円、デナリウス銀貨25枚
 1デナリウス銀貨     1デナリウス銀貨=2千円
=4セステルティウス青銅貨 1セステルティウス青銅貨=約500円
=16アス銅貨         1アス銅貨=約125円

 オアシスの民にとって、金貨5万円とか銀貨2千円をもらっても、交易で相手がお釣りをもっていないのだ。逆も同じ。小銭がありがたがられる。ムラー様は小銭もたくさんもってきている。

 村の長(おさ)が、若いのを二十人ほどどうだい?そっちも女奴隷がいるだろう?交換しないか?と言う。こういう閉鎖的な村では、若い人間を入れ替えしないと、プトレマイオスの一家のように近親婚になってしまうのだ。だから、近隣の村と若い男女を嫁婿入りさせたり、奴隷に売ったりする。

 ムラー様が、ウチの女奴隷は売り先が決まってるんでダメだ(まさかクレオパトラとの戦闘で使うとは言えない)が、若い男女は買おうと言う。村の長(おさ)が、各家族に言って、50人ほどの12~18才くらいの子たちを連れてきた。

 絵美様とアイリスが頭をなでるふりをして、意識を読んでいる。利発で性格の良い子を選んだのだろう。二人が相談して、子供たちを選別した。女の子8人、男の子10人。ラクダを9頭。

 ムラー様が、ラクダ込みで金貨54枚でどうだ?と言う。村の長(おさ)が、旦那、それは殺生だ、100枚はいただかないとと言う。だいたい、相場の4分の3と相場の3分の4から初めるみたい。お互い上げて下げて、75枚に落着。

 一人約金貨4.2枚、21万円。これが流れ流れて、アレキサンドリアやフェニキアでは、一人金貨10~30枚になっていくんだろう。ローマの貨幣が流通したから、奴隷商売も活発になったわけだ。物々交換なんてしてたら、支払いに困る。

 買われていく子どもたちが両親に泣きついている。儀式みたいなものだ。私たちの女奴隷や娼婦が、彼らの両親にこの旦那のところは待遇が良いんだ、フェニキアで農園も持っていると説明している。

 ムラー様に「この子どもたちはどうされるんですか?」と聞く。「まさか、戦闘に参加させるわけにもいかないでしょう?」

「女の子は、アルシノエに面倒をみさせよう。あいつはタフだから、これくらいは統率できるだろう。ゆくゆくはソフィアとジュリアの代わりだからな。男の子は、ラクダの面倒とか雑用を見させる。手下どもは雑用から離れてて、戦闘訓練をもっとしないと。戦闘の際は、ラクダと荷物の番をさせる」ソフィアとジュリアの代わり?じゃあ、その内、アルシノエもハレムに入れて抱くんですね!

 なるほど。確かに、砂漠の旅って、雑用が多い。寝場所とトイレの設営をしないといけない、ラクダの糞を集めないといけない、食事の支度、お茶の支度、衣服の繕い、夜のお勤め・・・夜のお勤め!ああ、そういうのも目的の一つか。

 絵美様はじめ、私たちは5人。手下どもは手を出せない。女奴隷3人、娼婦6人の合計9人だが、マンディーサやキキ、その他、だんだん相手も決まってきた女には手が出せない。しかも、キキの言う、生きて戻れば金貨100枚なんだから、無理に体を許す必要もない。男と違って、女は定期的に抜く必要はないのだ。

 女の子8人だけじゃなく、男の子10人も後ろの穴でできるわけだから、人数的には十分なんだろう。女の子、男の子も手下からお小遣いをもらえてホクホクだ。後は、取り合いなんかで喧嘩にならないようにすればいいけど、ソフィアとジュリアがいるから大丈夫。

 これって、数万人、十数万人の軍団の場合、溜まるんだろうなあ。どうしてるんだろう?侵略した国家で、暴行するのも当たり前なんでしょうね?絵美様だと憤慨するんでしょうけど、紀元前とか言う世界なんだから、仕方ないのよね。

 絵美様もだんだんわかってきたけど、未来の人間なら『ひじんどうてき』!とか言うんだろう。じゃあ、どうするの?ってこと。この村の民が、人間の交流無しで、親子兄弟姉妹で子供を作って、やがて奇形が増えて、死に絶えるのを待つってことかしら?

 未来の常識は、この時代の非常識なのよ。

第50章 ●奴隷商人48、紀元前46年 ●砂漠行 2 【砂漠行9日目】 200+30キロ

 夕飯で、エミー、アイリス、イシス、アルシノエ、ソフィア、ジュリアと飯を食う。

 胡座をかいて、イシス、アルシノエを左右に侍らした。横すわりになった彼女らは俺にしなだれかかる。二人の肩を抱く。他の四人は俺を睨みつける。だってしょうがねえだろ?俺がハレムの長(おさ)だぞ?何したって自由なはずだ!睨むんじゃない!

「旦那様、イシス様は良いとして、アルシノエはまだハレムに入れた覚えはありませんよ!彼女は侍女頭の小娘です!」とジュリアがアルシノエを睨みつけて言う。アルシノエがビクッとして俺にしがみつく。

 偶然に彼女の小さな手が俺の腿の付け根に触った。

「イシス様もイシス様です。事実上の第3夫人なんですから、ちゃんとハレムのしきたりを守って、奴隷たちに目を光らせていただかないと!」と今度はイシスを睨みつける。今晩のジュリアは怖いぜ。しばらく、抱いてやらなかったからかな?

 こういう時、絵美なら「まあまあ」とか言って肩をすくめて仲介するが、運悪くエミーが出ている。アイリスも機嫌が悪そうだ。おいおい、俺は、手当たり次第に旦那の権限を振りかざして、女奴隷を抱いてるわけじゃない。知性体プローブならまだしも、ムラーの体に入り込んでいるから、人間の属性の性欲は発現してしまうが、それでも自重しているんだよ。

「まあ、ムラーは我慢しているんでしょうけど、それにしても、4年ぶりにイシスを思い出して抱くのはいいとして、アルシノエもですか?イシスは王族で、知性体が入っているけど・・・」とエミーが頬を張りそうな感じでネッチリと言う。こいつ、本当にホッペタをおもいっきり叩くからな。
「ムラー様は、私の妹のイシスで満足できないんでしょうかね?アルシノエは、まだ躾けが足りませんわ」とアイリスも言う。こいつはおもいきり腿をつねる。

「アルシノエもそろそろ16才になるからな。男を知ってもおかしくない年齢だと思う」
「ムラー、絵美が言うには、16才は未来で言う高校1年生、20世紀の論理を振りかざすのはなんですが、まだ若い!と言ってるよ」
「いつまで待てばいいのかね?そんなことを言っていたら、アルシノエも17、18才、年増になっちまう」と答えたが、エミー、ソフィア、ジュリアは年増の部類になる。3人が俺を睨みつける。

 偶然俺の腿の付け根に触っていたアルシノエの手が、俺が勃起したものだから、それに気づいてサワサワと4人に気づかれないように俺のを触りだした。小娘とはいえ、こいつも女だ。狡猾だ。

「アルシノエは知性体が入っているわけじゃない。こいつを第4夫人にするつもりはない。ゆくゆくは素質があれば、ソフィア、ジュリアの次をやらせてみてもいいかな?と思うんだが・・・」と言うと、
「アルシノエを私とジュリアの次ですって?旦那様、私とジュリアはどうするおつもりです?」とソフィアが食いつく。俺はキミらの幸せを願っているんだぜ?

「いやぁ、お前らもよく仕えてくれた。もしも良い相手がいれば、解放奴隷にして、結婚をさせようかと思っているんだが・・・」開放奴隷にするのに、俺がわざわざ二人の価値の5%をローマ行政府に払うんだ。解放奴隷なんざ、富裕層はよくするが、商人層ではそれほどない。持参金だって持たせてやるんだ。何の文句があるだろう?

「もしも良い相手がいれば、ですって!旦那様のところよりも居心地の良い家がどこにありますか!」とソフィア。「私もジュリアも死ぬまで奴隷身分で結構でございます。ずっと奴隷頭を務めます。代わりなんて必要ありません!」
「エミー、絵美を出せ!」
「絵美は、面白いから見てるわ、と言ってるよ」
「あの野郎!」

「あ、あの、私はみなさんが羨ましいです。絵美様、エミー様、アイリス様、イシス様、ソフィア様、ジュリア様、みなさま姉妹のようで、私も旦那様に抱いていただけたら、みなさまのお仲間になれるんじゃないと願ってます。戦闘力も足りませんが、マンディーサさんに習って武器の使い方を学んでます。頑張ります。どうか、旦那様に抱いていただくことをお許し願えませんか?今、私が差し出せるのは私の処女しかございませんが、決してみなさまの足手まといにならないよう努力いたします」とアルシノエがみんなに平伏した。

 絵美が急にエミーの体に出てきた。「あなたたち、もう良いでしょ?アルシノエが嫌がっているんじゃなく、抱いて欲しいって言うなら、ムラーに抱かせなさい。ここまで言うなら、いいじゃないの?マンディーサだったらムスカもいるから私も怒るけど、アルシノエだったら、私たちの仲間にいれましょう。どうせ、後、数日。私たちもクレオパトラ相手に生きていられるかどうかわからないわ。ほら、みんな解散。ムラーとアルシノエだけにしてあげましょう」さすが、絵美、ちゃんとわかってる。「だけど、ムラー、大スフィンクスまであと150キロ、5日でしょ?アイリス、イシス、ソフィア、ジュリアと毎日交代で可愛がるのよ。私はエミーと二人分ね」毎日かあ。

 イシスも立ち上がろうとした。アルシノエが彼女の手を掴んだ。「ムラー様、イシス様もご一緒にお願いします。初めてですからイシス様に一緒にいて欲しいんですが、ダメでしょうか?」イシスが真っ赤になった。

 ああ、イシスは三人というのは経験してなかったな。絵美が高校1年生の可愛い処女と高校2年生のクレオパトラそっくりとやるのね?いいご身分ですこと、と言いそうだ。いつか、言い返してやる。お前の意識は27才の日本人女性だが、入っている体は大学1年生の金髪碧眼の白人女なんだぞと!紀元前にJKとかJDを持ち込まれても困るんだよ!

「ところで、アルシノエはどこの生まれなんだ?」と聞いた。彼女はびっくりした顔で「ご存知なかったんですか?」と言う。「フェニキアを出港する時、バタバタしてたから、侍女の人選はソフィアとジュリアに任せてたんだ。お前はどこ出身なんだ?」

「ムラー様、私に関心がないのはわかっていましたが・・・」
「侍女頭だから、勝手にお前だけ関心を持つのもマズイだろう?俺はご主人さまなんだが、今のやりとりでもわかるだろう?俺は女どもに逆らえないんだよ」
「ハイ、わかりました。ご主人さまとはいえ、窮屈なご身分なんですね」
「ハレムが天国なんていうヤツの顔を見てみたいよ」
「あの、私の父はピティアスです。父の第3夫人の長女です」

「え!アルシノエはピティアスの娘!・・・お前、道中、ピティアスと何も話してないじゃないか?父親、娘って素振りが今までなかったぞ?」
「ご奉公しているんですから、そんな素振りを見せてはイカンと父に出港前に命じられております」
「ピティアスに似てないな?」
「ハイ、母親似です」
「おい、ピティアスの第3夫人って、昔、俺のハレムから解放奴隷にして、ピティアスに嫁がせたあの子か?」
「ハイ、母は旦那様に可愛がっていただいたといつも申しております」
「なんか複雑な気分だな」
「お気になされませんように。私はピティアスの娘です。ムラー様が母を嫁がせてから1年以上経って産まれた子供です。旦那様の血は入っておりません。ご安心下さい」
「・・・プトレマイオス王家みたいなことは勘弁だからな」と言うと、イシスが、
「ムラー様、そのプトレマイオス王家の直系なんですが、私」とイシスが言う。

 確かに、イシスは、クレオパトラ7世の母、6世の妹が母親で、プトレマイオス12世の弟が父親。アイリスはプトレマイオス12世が父親だが、母親はプトレマイオス王家の遠縁の子の7世の異母妹で、血筋ではイシスのほうがアイリスよりもクレオパトラに近い7世の従姉妹だ。ベータのプローブの断片を俺が吸収したとはいえ、小さい頃から両性具有の7世に犯されていて仕込まれている。アイリスは賢いが、房中術はアイリスとは比べ物にならない。絵美の言う高校2年生だが、すでにローマの将軍を手球に取っている7世と同じく、普通の男だったらイシスに溺れてしまうだろう。ただ、イシスは天然ボケの性格だから、自覚していない。アルシノエは、生真面目な学級委員長タイプだから冗談が通じない。
※第28章 イシス、紀元前46年
※第18章 アイリス、紀元前47年

 厄介だ。片方はガチガチの堅物の処女、片方は天然ボケで生まれながらに男を狂わす娼婦。マッチングミスだよなあ。セックス大好きのエミーか、仕切るのが大好きなアイリスでもいればよかったぜ。

「ところで、イシス、アルシノエ、避妊薬は飲んでいるか?」と聞いてみた。この旅を終わるまで妊娠したら厄介だ。

 紀元前のローマ時代に避妊薬なんてあるのか?と思われるが、それがあるのだ。北アフリカ沿岸のリビア付近のキュレネという都市国家がある。キュレネの外の平原に広く自生する野生のハーブがあった。『シルフィウム』と呼ばれる薬草だが、地中海地域全体で、発熱から夫婦の性生活まで、あらゆる治療に効くと考えられ大変重宝された。

『シルフィウム』は媚薬であり、避妊薬でもある。古代ギリシャ人がキュレネに植民して、『シルフィウム』が薬用になることを発見、この植物の茎や根からエキスを抽出する方法を編み出した。このエキスは飲み薬としてもよく、エキスに浸した海綿スポンジを膣に挿入する避妊方法でも使えた。

「ハイ、いつでもムラー様のお召しがいつ有っても良いように飲んでいます」とイシスが言う。俺の勃起したものを指で包んで揉みだした。反対側に横座りしているアルシノエの手を掴んで俺の股間においた。アルシノエもおずおずと俺のを触りだす。イシス、この小娘、生まれつきの好き者の娼婦だ。

「私もジュリア様から頂いて飲んでいます。あの、その、生理が止まるので旅の間は飲んでおけと言われました。決して、イシス様のようなお召しがあるというのを予想したわけではありません」と真っ赤になって言い訳をしている。「あ、あの、ムラー様、こ、この固くて大きいものが私の中に入るんですか?とても入るとは思えませんが・・・」

「アルシノエは自分で慰めたりしないの?」とイシスが聞く。
「じ、自分で慰めるですか?他の侍女たちが夜内緒でしているのを見たことがありますけど、自分でしてみたことはありません」
「なぜ?気持ちいいのに?」
「こ、怖いです」
「じゃあ、侍女同士で抱き合うこともしないの?」
「・・・誘われたことはありますが、拒否いたしました、私は侍女頭ですので」

「ムラー様、この子、厄介ですわ。体をほぐさないと暴れそうです」とアルシノエの方に這いずって彼女を仰向けにしてしまう。「さあ、良い子だから、私に体を見せてね」とアルシノエの膝丈のチュニックを脱がし始める。薄くて小さな腰布と胸帯だけにしてしまった。胸帯を緩めて下から胸を揉みしだく。

 イシスがクレオパトラに奪われ、ベータのプローブを転位させられたら、クレオパトラ7世以上の悪女になるかもしれないな、と俺は思った。

「イシスがクレオパトラに奪われたら大変なことになるかもしれんな」とアルシノエの乳首を愛撫してなぶっているイシスに言った。手をアルシノエの腰布の中で動かしている。彼女は乳首から口を離すと「旦那様と絵美/エミー様が私とアイリスを守ってくださると信じています。それでもクレオパトラの手中に落ちたら、私を殺してください」と言う。話しながら、手も脚も動かし続けて、アルシノエの体中を弄っている。

「さあ、アルシノエ、旦那様にご奉仕するのよ。まずは、旦那様のあれをお口に含む練習からしましょうね」

 これはとてもじゃないが、高校1年生の可愛い処女と高校2年生のクレオパトラそっくりとやるなんてものじゃなくなってきた。そう言えば、アルシノエの母親もかなり好きものだったような気がする。やれやれ、絵美とまったり話しながらするのと違って、紀元前の高校生は性欲がストレートだぜと思った。朝まで開放してくれないかもしれん。

第51章 ●奴隷商人49、紀元前46年 ●砂漠行 3 【砂漠行10日目】 200+60キロ

 今日は絵美と二人きりだ。絵美が、今日は私の番よ、みんな出ていって頂戴!と小テントからみんなを大テントに追い出した。珍しいこともあるもんだ。第1夫人の強権発動とは。

「ムラー、昨晩はどうでした?」と聞かれた。
「あのなあ、高校1年生の可愛い処女と高校2年生のクレオパトラそっくりとやるなんてものじゃないぜ。お前と違って、酒飲みながらお話してまったりするって感じじゃない。エミー、アイリスとするのとも違う。イシスはアイリスよりもクレオパトラの血筋を濃くひいていて、お前の言う高校2年生なんてもんじゃない。ありゃあ、生まれながらの娼婦だ。普通の男だったら骨抜きになっちまう。さすがにクレオパトラが自分の身代わりにしようと仕込んだだけのことはある。房中術のテクニックなら、ハレムの中でナンバーワンだろう。それで、昨日の夜でアルシノエの体を開発しやがった。今までご無沙汰だった高校1年生と高校2年生だぜ?俺が貪るんじゃなくて、貪られたよ」

「ふ~ん、ムラーがそうだったなんてね。アルシノエは、宦官のアブドゥラとパシレイオスに任せればいいじゃない?」
「昨日知ったが、ピティアスの娘だぜ?宦官にやらせるわけにもイカンだろう?第一、アルシノエが旦那様以外とするのはイヤ!舌噛み切って死にますよ!と言うんだから」
「生意気に。まあ、可愛いところがあるじゃない?」
「絵美、お前も余裕こいてるけどな、入っている体は大学1年生の金髪碧眼の白人女のエミーなんだぞ。意識は27才の日本人女性だが、体の欲求は大学1年生の金髪碧眼の白人女なんだからな。自分じゃ自覚していないだろうが」

「あら?私、そんなに激しく求めてないわよ?」
「お前のは、激しい肉弾戦じゃなくて、長時間ネッチリなんだ。アンアン泣くから攻めているつもりが、搾り取られるんだよ。それで、途中交代でエミーが出てきたら、今度は激しい肉弾戦になるだろ?一番大変なのが絵美/エミーだ」

「そうなの?自覚なかったわね。それにしても、イシスがもしもクレオパトラに奪い返されて、プローブを転位されたら、7世よりも強力になりそうね。注意しないと」
「イシスが『旦那様と絵美/エミー様が私とアイリスを守ってくださると信じています。それでもクレオパトラの手中に落ちたら、私を殺してください』と言ってたぜ」
「いざとなったらね。だけど、私にイシスとアイリスを殺せるかしら?」
「クレオパトラが彼女たちに転位しそうになったら、躊躇せず殺せ。さもないと、俺たちが危ない」

「わかっているわ。肝に命じましょう。ところで、話は違うけれど、大スフィンクスがなぜ2つあり、八千年昔、一つは将来の大ピラミッドの築かれるギザ台地、もう一つがエジプト古王朝のメイドゥム・ピラミッドまで15キロの位置の砂漠のど真ん中に建設されたの?」と聞かれた。

 俺なりの解釈を説明してやった。長くなるぞと。

 まず、純粋知性体ってのを理解してるか?わからない?正直でよろしい。知性体になる前の実体のある生物だったとき、それが酸素呼吸系種族であろうと、塩素呼吸系種族であろうと、メタン呼吸系種族であろうと、その母体の相違とは関係なく、純粋知性体は、全宇宙中のレシピを知っているグルメだが、料理はしない存在になっちまうということだ。

 わかんないって?純粋知性体はエネルギーがない、当然質量もない実体がない存在だ。それが宇宙の、マルチバースの森羅万象をほぼ知っている。ところが、実体がないものだから、自分で手を出すのはかなり面倒なんだ。なんらかの物質、生物に働きかけないといけないからな。

 グルメと料理人の例えを変えよう。純粋知性体は、20世紀の天才物理学者、アルバート・アインシュタインに似ている。アプリオリに、先験的に真理がわかっちまうところがある。深く思索しなくてもわかっちまう。途中をかっ飛ばしてマラソンのゴールに現れちまう汚さがある。

 ところが、真理はわかるんだが、アルバート・アインシュタイン、数学は得意じゃない。だから、え~と、あれだよ?あれ?とか数学者に説明すると、数学者があんたの言わんとする真理の数式はこれかい?と数式を見せられると、おう、それそれだ!ちょっと違うがね、ここをこう定数を加えると、完璧だ!とか言い出す。

 アルバート・アインシュタインに、マリー・キューリーみたいにラジウムの抽出ができるか?と言うと、あまりに実験が下手くそなので、ほっておくとラジウムが臨界に達して核分裂の暴走でも起こしてしまう。任せられないわけだ。

 アインシュタインが一般相対性理論を発表して、「太陽のような巨大な質量を持つ物体は周囲の空間をねじ曲げている」というのが理論ではわかっても、望遠鏡を渡せば壊すから自分で証明できない。

 だから、イギリスの物理学者、有名なアーサー・エディントンが、1919年5月29日に生じた日食を観測して、通常の星空の写真を撮影、日食中に同じ星空の写真を撮影、太陽のすぐ近くの星の位置が通常の星空の写真と比べて位置がズレていたならば、太陽の重力によって星の見かけの位置がズレたということになり、相対性理論は正しいことが立証できると考え、見事に太陽がヒアデス星団の近くを通過する時の写真撮影に成功したというわけだ。

 エディントンのお陰でアインシュタインの一般相対性理論は証明された。しかし、エディントンが一般相対性理論を見出したわけではない。

 純粋知性体ってのは、アインシュタインにも全宇宙中のレシピを知っているグルメにも似ている。神にも等しい。ただ、鍋やフライパン、天体望遠鏡などという下賤なものは扱わん、という存在だ。

 もちろん、純粋知性体は、地球の内核、外核を操って大規模造山運動を起こさせることはできる。事実、ベータ本体はアトランティスを造山運動で海の底に沈めた。あるいは、太陽の黒点活動を活発化させたり、不活化させたりして、地球への太陽電磁波の量を変えたりもできる。地球の自転軸を変更したりもできる。そういう大規模で大雑把なことは可能だ。

 じゃあ、純粋知性体にいちから大規模集積回路、半導体を生物の助けを受けないで作れと言っても、長い時間をかければできるだろうが、ヤツラは対費用効果が悪いと言ってしないだろう。シリコンの原料の天然のケイ石(SiO2)を念動波で集めて、純度を上げ、1,410℃以上で溶融シリコンにして単結晶シリコンインゴットを作り、スライスしてシリコンウェハを作って、表面塗布剤を塗ってエッチング・・・なんてことを純粋知性体はやらない。念動力でやるには手間暇がかかりすぎる。自分でやるよりも、知性体になる手前の高度のテクノロジーを発達させた生物種をマインドコントロールして、自分の代わりにやらせた方が手っ取り早い。

 全宇宙中のレシピを知っているグルメが、料理人を使ってレシピを教えながら料理を作るとか、アーサー・エディントンがアインシュタインの代わりに日食時に太陽がヒアデス星団の近くを通過する時の写真撮影をするようなものだ。

 だから、1万年前、クローヴィス彗星衝突で起こった一時的な氷期のヤンガードリアス期の後にベータが地球に飛来した時、たぶん、高度のテクノロジーを発達させた塩素呼吸系生物を連れてきて、大スフィンクスを建設させたのだと思う。1万年前の人類は人口も少なく、かき集めても大スフィンクスを建造するのに数百年はかかっただろう。

 なぜ大スフィンクスを作ったか、というと、まず、人類は半神半獣の姿(後でファラオが自分の顔に削り直してしまったがオリジナルはたぶんアビヌスみたいな獣の頭部だったんだろう)のスフィンクスを恐れて近づかないこと。それからスフィンクスは地球の環境変化に影響されない大きさで、数千年経っても宇宙からでもわかる目印だということ。さらに、本来の目的は、スフィンクスの下に埋められた、チャンバーだということだ。数千年経って、チャンバーはクレオパトラがやったような先端工場に転用できる。そのスペースを数千年確保するのが狙いだ。

 え?なぜ、最初からスペースだけを作って、先端工場は作らないのか、だって?それは、工場設備の維持・メンテが数千年もできないからさ。自動メンテのナノマシンを作ってもいいが、構成部品・材料は数千年も経てば、腐食してボロボロになる。スペアパーツも同じことだ。半導体のシリコンは残るが集積回路の銅線などは錆びる。だから、手間のかかるスペースを作ってやって、目印と重しになるスフィンクスだけを1万年前に準備したのさ。

 古代の建築物で、巨大な空洞だけのものというのがたくさんあるだろう?人類は、何のために?何に使ったのか?と疑問を持つが、なんのことはない、単なる将来利用可能なスペースを確保する空洞ってだけさ。何に使ったのか、って、使われちゃあいないんだ。

 で、場所だ。なぜ、スフィンクスを建造した場所が、ギザ台地とそこから50キロ離れた砂漠のど真ん中なのか?ということだな?

 未来の人類なら、なぜこんな砂漠のど真ん中に大スフィンクスを紀元前八千年も昔に建設したんだろうと思うだろう。しかし、2023年から1万年昔、ここはナイル川のほとりだった。ナイル川は毎年洪水を繰り返し、左岸、右岸を削って蛇行する。だから、20世紀の川筋が古代の川筋とは限らないのに未来人は気づかないのだ。

 海岸線だってそうだ。クローヴィス彗星衝突後、地球の平均気温が7.7℃も下降、20世紀の海岸線よりも十数キロ、数十キロ沖合にあった1万二千年前のヤンガードリアス期を経て、1万年前は地球全体が急激に温暖化し、海面は20世紀よりも数十メートル上昇、ナイル川の大三角州の半分の面積は海面下にあったことなども、未来の歴史学者は想像すらしないのだ。想像力の欠如、バカとしか言えない。未来の人類の歴史学者のほとんどは、地球物理学にも気候学にも地理学にもうとい。彼らは、古代の歴史を現代の海岸線、気候で考えがちである。あまり知性があるとは思えない。
※奴隷商人 Ⅴ、第31章 ●奴隷商人29、紀元前八千年

 約7万年前から約1万2,000年前まではヴュルム氷期にあたり、この時期の南極の気温が現在よりも約8℃低かったことがわかっている。しかし、約1万2,000年前に氷期が終わり、気温が上昇したことで、大陸氷河が後退し、海面は上昇して、気温や降雨などの気候パターンが大きく変わり、現在のサハラ沙漠の姿になった。

 現在のサハラ沙漠は文字通り沙漠だが、サハラ沙漠の各地で、見つかった1万2,000年前頃から6,000年前頃の岩石画から、当時は湿潤な時代で森林や草地があってキリンやゾウ、アンテロープ(ウシ科の草食獣)、サイもいて、狩猟が行われていたことがわかっていいる。

 そして、約5,000年前頃からサハラ沙漠が乾燥し始めた。古代エジプトが繁栄した紀元前3,100年頃から紀元前525年の時期は、この乾燥化が進んだ時期に当たる。


 紅海よりのナイル川東岸は山岳地帯だが、西岸はサハラ砂漠に隣接している。紀元前八千年、21世紀から数えると1万年前のエジプトは、西岸部はまだサハラ砂漠の侵食は受けていない。森林や草地が台地を覆う緑の地だった。温暖化により、海岸線は数キロ後退している。ヒプシサーマル期と呼ばれる時代だった。

 もちろん、純粋知性体ベータは、その時点だけではなく、過去の、未来の気候変動と海岸線の海進、海退の時間軸も見渡せただろう。大ナイル三角州が海進により、ヒプシサーマル期のピークには、ギザ(カイロ)あたりまで海岸線が後退するとか、紀元前46年前後では、ほぼ21世紀の海岸線まで海退するとか。

 大スフィンクスは、一体はギザ台地の上、海進時でも水没ギリギリな場所に、もう一体は、エジプト古王朝のメイドゥム・ピラミッド(この頃はまだ存在しないが)の北15キロ、当時は大森林の台地に設置した。南の大スフィンクスは、紀元前3千年以降すすむサハラ砂漠の東進によって、紀元前46年頃には、人跡未踏の砂漠のど真ん中になり、スフィンクスの存在が秘匿できるのもわかっていた。

 知性体ベータが飛来したのは、紀元前5千年前の先王朝時代よりも3千年も古い時代だ。エジプト王朝が開始されたら、スフィンクスなんざ建設できないからな。宇宙から飛来した何者かが作ったなんてバレちまう。

 ベータが連れてきたのは、銀河のどこかの塩素呼吸系種族の人種だったろう。ヤツラを操って、恒星間宇宙船を地球まで連れてきた。そして、シャトルで重機を地上に降ろして一枚岩からスフィンクスを削り出した。まず、地下通路を作って、将来水力発電ができるようなナイル川と連結した水路も作る。スモールチャンバーとビッグチャンバー、ビッグチャンバーの下の大工場となるスペースを建設した。その上にスフィンクスを重し代わりに乗っけたってことだろうな。

 ここ、南のスフィンクスは、将来のクレオパトラの工場となる本命のもので、北のギザのスフィンクスは、紀元前2千5百年にクフ王、カフラー王、メンカウラー王が大ピラミッドを作る指標にしたんだろう。ギザ以外の土地に大ピラミッド群を作らせないように。だから、クフ王たちがピラミッドを建設する時には、すでに北の大スフィンクスはあったということだ。

 時は流れて、新王国時代、第3中間期、末期王朝時代となって、アレクサンドロス大王のエジプト征服が起こって、やっとプトレマイオス王朝の時代になった。

 紀元前193年、今から147年前、プトレマイオス5世エピファネスが即位し、彼の妻、クレオパトラ1世が共同統治者になった時、ベータは再度飛来して、クレオパトラ1世に憑依した。彼女は南の大スフィンクスを見つけ、先端技術工場の設立に着手した。それから、140年、代々のクレオパトラの指揮で、半神半獣や先端兵器を製造できるようになったということだ。そして、大ローマ帝国を乗っ取り、歴史を改変するということになる。

「なるほど。すごく納得の行く説明だったわ。たぶん、その通りなんでしょう。でも、わからないのは、ベータはなぜそこまで歴史を改変するのに固執するのかしら?」と絵美が首をかしげる。
「2025年9月のペガスス座IK星(IK Pegasi)またはHR 8210と呼ばれている恒星が極超新星爆発を起こして、ガンマ線バーストが発生する。第1、3ユニバースはまともにバーストを浴びて、地球の生物種の9割は絶滅する。もちろん人類も。第2、4ユニバースは直撃を免れるが、ベータは何らかの方法でガンマ線バーストの標準を変えて、第2、4ユニバースにも直撃させようとするだろう」

「2025年9月・・・今から2千年後・・・って、私のいた1985年の世界から40年後じゃない!あ!私、ペガスス座IK星(IK Pegasi)を見たわ!アルファが私を連れて行った恒星じゃない!」
「そうだ。第1から第4までのマルチバースの地球がガンマ線バーストで丸焦げになれば、ベータは塩素呼吸生物を使って地球をテラフォーミングし、塩素を増やして、酸素呼吸系生物を絶滅させ、4つの地球をすべて塩素呼吸生物の楽園にしてしまうと思う。それで、気長に、塩素呼吸生物が発展して、やがて純粋知性体に育つのを待つ、ということなんだろうな」

「酷い話だわ」
「ああ、俺の母体のアルファもそんなことは止めさせようと思っている。卒業したとはいえ、酸素呼吸系生物はアルファの出身母体だからな」
「アルファが止めてくれないの?」
「止めようとしてるじゃないか?だから、俺とお前がここにいるわけだし、絵美/奈々が第2ユニバースにいるんだから」
「私も役割を担っているってことね」
「大事な役割だ。そう、それで、ベータの都合の悪いことに、極超新星爆発のガンマ線バーストを水爆数千発の爆発でバリアを作って、バーストの直撃を和らげて、生物種の大量絶滅を阻止しようとしているグループが第1と第3ユニバースに居るんだ」

「そのグループに頑張ってほしいわ」
「そう思うかね?そのグループというのは、森絵美というお前の第1、第3の同位体、そして、第1、第3の宮部明彦他の物理学者グループなんだ」
「え?私?え?明彦?」
「第2ユニバースでも同じメンバーが今動き出している。第2、第4の森絵美は死んじまったけどな。今、ここのクレオパトラとの戦いに俺たちが破れてしまったら、未来の第1、第3のお前とお前の恋人、第2のお前の友人たちの努力も水の泡ってことだ。どうだ?アルファ本体がお前を選んだ意味がわかってきたか?」
「・・・まさか・・・そんなこと・・・」

第52章 ●奴隷商人50、紀元前46年

●砂漠行 4 【砂漠行11日目】 200+90キロ

 30キロ、大スフィンクス方向に進んだ。残りあと3日。昨日のムラーとの話は重かった。第1~4ユニバースまでの運命がこの一戦にかかっていると思うと気が重い。どうしてもクレオパトラ7世は抹殺しないといけないが、できるんだろうか?

 目的地の南の大スフィンクスは、ギザの大スフィンクスからほぼ南に50キロのところにある。近くには、エジプト古王朝のメイドゥム・ピラミッドがあり、その北15キロの位置にある。敵地に近づいているので、警戒は厳重にしないと。

 今日の夕食は私が料理する!ということで、さて、何を作ろう?旅も終盤、食料の備蓄も残りわずか。大スフィンクスの戦闘で生き延びられたら、私かアイリス、イシスがアフロダイテ号、アルテミス号まで行って食料を抱えてくればいいので、着くまでの3日間で食料の備蓄はみんな食べてしまおうということになっている。しかし、ロクな食材が残っていない。

 スペルト小麦はあるので、ポレンタを作ろう。紀元前にトウモロコシなんてアメリカ大陸原産のものはないので、小麦で作るのだ。銅鍋に水10リットルを入れて沸騰させ、塩を加える。そこにスペルト小麦の粉2.5㎏を加え、素早くかき混ぜてダマができないようにする。火はずっと強火で、かき混ぜながら煮て、ポレンタが固まったら焚き火から遠ざけて火を弱める。煮る時間は約45分。

 ブルメンタリア(乾燥肉)、ヒヨコマメ、ヒラマメ、エンドウマメでスープを作る。無発酵のパンを焼く。チーズは乾燥していたがまだあったので、火で炙ってパンにのせる。濃い緑色のオリーブオイルの一番搾りをパンに付けて食べればいいだろう。オアシスの村から買ったデーツとナッツがまだあった。砂漠の旅なのだ。贅沢は言っていられない。

 両脚を踏ん張ってスゴイ格好でポレンタをかき混ぜる。火が通ってくるとポレンタは粘度が増すので力がいるのだ。少なくても、念動力で鍋を押さえているのでいいけど、普通だったら一人じゃできないわよ。

 ソフィアとジュリアが来た。「絵美様、誰かにやらせましょう。第1夫人がみっともないです!」とジュリアが言う。「みんなの分のポレンタを作りたいのよ。いいじゃない!」「いえ、ちょっとご相談がありますので・・・」と通りかかったベルベル人の女の子の奴隷二人を呼び寄せて交代させられた。自分で料理する自由がないのよねえ。

 焚き火から少し離れて、ソフィアとジュリアと一緒に座った。

「オアシスの村で買った女の子8人、男の子10人の件ですが、リーダーをそれぞれ決めました。そのリーダーをアルシノエの下につけました。それで、今まで3日間、セックスを禁じていましたけど、スフィンクスまで後3日。マンディーサ、キキと相手が決まった2人を除いて、相手のいない空き家は、女奴隷3人、娼婦2人だけです。ピティアスの手下も溜まってますので、ベルベル人の子供たちにも相手をさせたいんですけど、いかがでしょうか?」

「ピティアスの手下は23人よね?相手のできたムスカ、ジャバリと他2人を除いて19人。女奴隷3人、娼婦2人じゃあ足りないわね?いいんじゃないの?」だんだん、20世紀の倫理観が薄れていってしまう。「彼らも金貨百枚の前渡金をムラーが払っているからお金はあるでしょ?ベルベル人の子供たちもお小遣いが欲しいだろうし、一律銀貨5枚(約1万円)で後腐れなしじゃあどうかしら?子供たちに売り物の皮財布を上げて頂戴。お金をしまう物がないと困るでしょ」

 1アウレウス金貨     約5万円、デナリウス銀貨25枚
 1デナリウス銀貨     1デナリウス銀貨=2千円
=4セステルティウス青銅貨 1セステルティウス青銅貨=約500円
=16アス銅貨         1アス銅貨=約125円

「私とジュリアもそのぐらいを考えていました。手下の半数は見張りにつけておいて、交代でするのでいいでしょうか?」

「アオ姦じゃあ、砂がねえ・・・」
「ハイ?アオ姦?なんですか、それ?」とソフィア。
「いや、未来の言葉。気にしないでね・・・大テントの女たちは外で寝ることにして、手下たちに大テントを使ってもらいましょうか?別にアオ姦でいいんなら外ですればいいけど・・・」
「まったく、未来の女性は親切ですね?」
「親切にすれば厳しくするよりも忠誠心が生まれるのよ。つけあがらない程度で」
「なるほど」
「だけど、やったらベトベトになっちゃうわよね?」
「体を洗う水なんてありませんよ」
「あ!いい考えがある!イシスを呼んで」

 イシスが来た。

「イシス、ちょうどいい訓練よ。両手をかざして、砂漠の地下の水の気配を探して」
「え?こんな場所に水?砂漠ですよ?」
「地下水脈というのがあるのよ。流れる水があるというイメージを持って。さ、やってみて」
「うまくできません」
「最初からは無理かな?」

 私は彼女を後ろから抱きしめて彼女の手に私の手を添えた。彼女の意識に入り込む。イメージを彼女の意識に伝える。イシスを押して歩き回った。近いわね?わかる?ええ、なにか感じます。もう後3歩。ここよ。じゃあ、真下に手を向けて。飛ぶ時みたいに自分の周囲の空気を遮断する。そうそう。そうしないと自分の出す熱で焼け焦げるわよ。念動波を出して。赤外線の波長をかぶせる。砂が溶けていくでしょ?・・・2メートル、4メートル・・・15メートル・・・23メートル・・・よし、そこまで。

 熱線が水脈に触れて、井戸から水蒸気が立ち上った。

 じゃあ、次は浴槽を作りましょう。飛んで。井戸を掘ったと同じ要領で、10 x 10メートルくらいの浴槽を砂を溶かして作りましょう。うまいわね?いいわよ。

 次に井戸から水を汲み上げて、浴槽に移す。竜巻みたいに水流をコントロールして・・・そうそう。

「よくできたわ」とイシスの頭をなでた。
「次からは一人でもできそうです」
「次は、大スフィンクスの地下にトンネルを作る時だわ」

 みんなが集まって来た。ベルベル人の子供たちは唖然として見ていた。子供たちに見せておくのもいいだろうと思った。私たちと一緒なら安全だと思ってくれるといい。

 ジュリアとソフィアが浴槽をのぞいている。「やることが派手ですね。でも、みんな喜ぶでしょう。セックスしても水が浴びられるんですもの」とジュリア。「じゃあ、ベルベル人の女の子たちに避妊薬の『シルフィウム』を飲ませておきましょう。媚薬の効果もあるので、処女の子も感じるかもしれません」

「処女は何人?」とジュリアに聞いた。
「4人が処女です。経験済みの子は、父親や兄弟とやってます。ああいう閉鎖的な村にはありがちですね。早い子だと12才くらいで誰の子かわからない赤ん坊を産むそうです。あまり感心しませんね。旦那様も言うように、12才以下の子はセックスさせてはいけません。15才以下の子が妊娠するのもよくないですね。不幸になる子が多いです。男の子も半分は童貞です。包茎や半包茎もいたので皮を剥いておきました。不潔になりますから」
「奴隷頭ってやることが多いのねえ。包茎や半包茎の皮剥きまでするなんて」
「白いカスの恥垢(ちこう)が溜まると臭います。性病にもかかりやすいんです」
「ねえ、ジュリア、男の子もやられちゃうの?どうやるんでしょ?」
「宦官のアブドゥラとパシレイオスに指導は任せてます。彼らの専門ですから」
「確かに!」

「アブドゥラが言うには、やられる時の前は節食して水分はあまり補給しないんです。それで浣腸をします」
「古代ローマに浣腸?」
「ハイ、薄い食塩水のぬるま湯を作って、注射器で肛門から入れて洗浄します。それでする時は一番搾りのオーリーブオイルをよく塗ってから挿入します」
「ジュリア、よく知っているわね?経験があるの?」
「・・・あの・・・アブドゥラに前からやられて・・・パシレイオスに後ろから犯されたことが何回か・・・」

「すごい!気持ちいいの?」
「・・・前と後ろのが、体の中で当たるんです・・・わ、私は好きです・・・奥様、そんな恥ずかしいことを聞かないで・・・」
「ふ~ん、ソフィアもやられちゃうの?」
「ソフィアは私と違ってドSですから、張り型でナルセス、アブドゥラ、パシレイオスを犯しながら彼らに射精させるのが好きなんですよ」
「みんな見ていないところでものすごいエッチなことをしてるんだ」
「絵美様とアイリス様はできませんね。ムラー様以外とすると、相手が死んだり、爆発してしまうんですもの」
「いや、私は残念とは思わないけど・・・」
「今度、張り型で試してみます?前と後ろと同時に?」
「遠慮しておきます。まったく、古代世界はエッチだわ」

 ピティアスが寄ってきたので「ピティアス、あなた、アルシノエが娘だなんて言わなかったじゃないの?」と聞いた。

「そりゃあ、絵美様、ワシの娘だなんて最初から知られていたら特別扱いされますわい。娘に、侍女頭は自分の実力でなれ、と言っておいたんですよ。まあ、その結果、ムラー様に女にしていただいて、ワシは満足です」
「アルシノエは仕事もできるし聡明だから、あなたの娘とかは関係なく、重宝されたでしょうね。ところで、スフィンクスまであと3日、海賊グループの内、相手のいない人が19人いるけど、あぶれているのは女奴隷3人、娼婦2人だけ。だから、オアシスの村で買った女の子8人、男の子10人をガス抜きで相手させてもいいかなと思ってる。銀貨5枚均一。買われる方が拒否権あり。これでどうかしら?」
「手下共も喜びますわい。3日後に死ぬかもしれんのですから、最後の命の洗濯にちょうどいい」
「子供たちも小遣い稼ぎになるから。手下どもに言っておいてちょうだいね。女奴隷、娼婦、子供たちにはソフィアとジュリアから説明させます」
「わかりました。早速、手下どもにアナウンスいたしましょう。ところで、ムラー様を探しているんですが、どちらに?」
「哨戒に行ってくると行って、南の方に飛んでいっちゃたわ」
「なるほど。帰ってくるのを待ちましょう」

 1時間ほどして、ムラーが意識のないホルスを一羽、肩に担いで空中から降りてきた。ホルスを捕獲できたの?私はムラーの傍に駆け寄った。

「絵美か。俺の側に来い。電波遮断域の中にはいれ。直径4メートルだ」
「電波遮断域?」
「ああ、半神半獣はAIの半自立型だが、遠隔操作の電波誘導もされている。この場所を発信されちゃあマズイからな。電波遮断域の中で細工をする」
「それでこいつをどうするつもり?」

「脳みその中の管制制御システムに侵入して、プログラムをちょっと書き換えてやる。俺たちのトリガーが命じれば、こっちに味方するようにしておく。それから、こいつの視覚を乗っ取る。そうすればこいつが見たものを俺も見えるってことだ。スパイさせるんだよ、クレオパトラのヤツラを」
「あなた、そんなことができるの?」
「知性体のプローブをなめちゃいけない。お前にだってできるはずだ。後で教えよう・・・よし、これでこいつは俺らの側ってことだ。じゃあ、こいつを放してくるからな」

 ムラーがホルスを肩に乗せて水平線の向こうに飛んでいった。ホルス、アヌビス、トートなどの半神半獣は何羽、何匹いるんだろう?やつら相手は人間にやらせる訳にはいかない。手下たちはエジプト王国の兵士たちに対処してもらわないと。半神半獣は、ムラーか私か、アイリスかイシスじゃないと人間の損害が大きくなる。しかし、ムラーはクレオパトラが相手。

 他に新手の敵はいないのかしら?クレオパトラ本体と半神半獣、人間の兵士だけとは思えない。

第53章 ●奴隷商人51、紀元前46年  ●砂漠行 5 【砂漠行12日目】 200+120キロ

 ホルスを放つと言って飛んでいってしまったムラーはその晩帰って来なかった。翌日、出発の午前4時の1時間前に急に空中から飛び降りてきた。荷物を持っている。

「どこに行ってたのよ?心配するじゃない?」
「ああ、スマン。ちょっとアレキサンドリアの王宮に行って、あるものを盗んできたんだ」
「王宮?盗み?どうやって?」
「数百メートルならテレポートできるっていったろ?二回テレポートするとダメージが酷いけどな。人類の人体は脆弱だぜ。体を原子レベルで解体して再構成するから無理もないが。それで、王宮の外壁まで飛んでいって、そこから王宮にテレポートした。クレオパトラの寝室に忍び行って、やっこさんの衣装、かつら、装身具と化粧品をちょろまかしてきたのさ」
「クレオパトラの衣装、かつらと化粧品?」
「そうだ。二着盗んできた。おい、アイリスとイシスを呼んでこい。小テントで着替えさせよう」

 アイリスとイシスが小テントに来た。「まあ!クレオパトラ女王の衣装だわ!」とイシスが驚いた。「どこからこんなものを!」

「まあ、いいから二人共着替えろ。クレオパトラがどんな化粧をして、どういう振る舞いでいたか思い出せ」とムラー。

 ムラーの持ってきた衣装は、クレオパトラの好みそうなオリエント風だ。下着も持ってきている。高価な中国製のシルクの小さな胸帯と腰布だ。肩をおおう飾りがついた金の刺繍の施されたカラー(首飾り)、シルクのケープ、ウィッグ、アームバンド、ブレスレット、腰のクビレを強調するベルト、そして、大胆にスリットが入ったドレスだ。白と黒のドレスで、アイリスは白をイシスは黒を選んだ。ウィッグの上に額に黄金のコブラの象嵌され金の鎖が下がったヘッドバンド。

 二人は「目周りのアイシャドウは上が青で下が緑だったかしら?」「もっと目が吊り上がって見えて、怖そうな感じだったわ」「口紅はベットリでしょ?」「胸は寄せて上げて胸元を前かがみになってわざと見せて男の気を引くのよね?いやらしい女!」「みてよ、このワンピースの横のスリット!腰まで割れてる。腰布が見えちゃうわ」「こんなにピッタリした衣装で、どうやって男根を隠していたんでしょうね?」などと言っている。

「できたわ!イシス、もっと偉そうに胸を反らすのよ」彼女たちはお互いをジッと見た。「クレオパトラ女王だわ!」

 クレオパトラの衣装を着て化粧をしカツラをかぶったアイリスとイシスは、ティーンの女の子に見えなかった。まさに、絶世の美女に見えた。クレオパトラは今年24才のはずだ。6才年下のアイリスと7才年下のイシスは、彼女たちの年齢よりもずっと年上に見えた。クレオパトラを見たことがないが、二人共双子のようで、クレオパトラが二人ってことなの?色気がハンパない。これじゃあ、ジュリアス・シーザーもアントニウスも引っかかるわけだ。絶対に女の子の友達はできないタイプだわ。

「この格好で大スフィンクスに突入しよう。騙せるか騙せないか、少なくとも人間の兵士どもは混乱するはずだ」
「ムラー、ヨダレが垂れてるわよ!人間の兵士どもじゃなくて、あなたがもう惑わされてるじゃない!相手はティーンの女の子なんですからね!あれ?私の体もティーンの女の子だったわね」
「おい、これはたまらないな。失敗した!三着持ってきて、お前もこれを着て、クレオパトラで4Pやれば良かったぜ!」
「このドスケベ!」
「おい、アイリス、イシス、外に出てみんなに見せてみよう。クレオパトラの演技をするんだぞ!みんながどういう反応をするか見てみたい」

「ムラー様、了解です。ちょっと打合せします」とイシスと相談し始めた。やっぱり、言葉はエジプト語かしら?ピティアスの手下どもはわからないから、フェニキア語も同時に話す?イシスがエジプト語で言って、私がフェニキア語で追いかけて言うのでどう?我ら民草たちよ、なんて出だしで。

 小テントを二人が出た。みんな集まってくる。エジプト人の中にはクレオパトラを見たことがある人間もいるのだろう。彼らがまず拝跪した。拝跪した人の近くの人たちもつられて拝跪していく。クレオパトラを知らないフェニキア人たちもあわてて拝跪した。群集心理なの?宗教って怖いわ。だけど、アイリス、イシスの自然なオーラはさすがに王朝の血を引くもの。いつもの可愛い二人の姿は微塵もない。

「我ら民草たちよ、わらわはクレオパトラ、真のクレオパトラ。今の女王は偽りの者。地上の小さなアトラスたちよ、兵士のなかの鏡よ、わらわはイシスの血を受け継ぐもの、イシス神に賭けて偽りの女王の歯をへし折り、滅ぼしてくれる。闘いの日は近い。民草たちよ、わらわに従え!」とエジプト語でイシスが、追唱してフェニキア語でアイリスが叫び、両手を突き出した。

「な?絵美、いつものアイリス、イシスを知っている俺達の仲間でもこうなる。スフィンクスの警護をしている王国の兵士にだって多少の効き目はあるだろう?」
「これが宗教の力なの?」
「カリスマの存在が大きい。クレオパトラ7世はあまり大衆に身を晒すことはない。アイリス、イシスは今まで身近にいた存在だが、彼女らがオーラを放ち、カリスマになったということだ。おまけに空を飛んだり、砂漠をうがって浴槽を作ったり。奇跡を見せた。何かを信じる人類は強いってわけさ。かと言って、半神半獣相手にオーラで勝てるわけじゃない。せいぜい、圧倒的な人数の王国の兵士相手に対して、オーラの効果があるってことだけだ」


+ フランク・ロイド の 音楽

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Halestorm - All I Wanna Do (Is Make Love To You)

Halestorm - All I Wanna Do is Make Love to You (acoustic, cover, w /interview, 720p)

‘ALL I WANNA DO IS MAKE LOVE TO YOU' (HEART) cover by HSCC

"All I Wanna Do Is Make Love To You", Lyrics

 It was a rainy night
 When he came into sight,
 Standing by the road,
 No umbrella, no coat.
 それは雨の夜だった
 彼の姿が(フロントグラス越しに)目に入ってきた
 彼は道端に立っていた
 傘もささず コートもない
 So I pulled up alongside
 And I offered him a ride.
 He accepted with a smile,
 So we drove for a while.
 だから、私は道端に車を停めて
 乗せてあげるけど、どう?って聞いた
 彼は笑顔で受け入れて
 私たちはしばらくドライヴした
 I didn’t ask him his name,
 This lonely boy in the rain.
 Fate, tell me it’s right, Is this love at first sight?
 Please don’t make it wrong, Just stay for the night.
 彼の名前は聞かなかった
 雨の中にいた淋しそうな男の子、それだけ
 運命がそれでいいって告げたわね
 これが一目ぼれってことなのね
 お願いだから 間違えないで、ただ、一晩だけそばにいてよね
 All I Wanna Do Is Make Love To You - Ann Wilson of Heart
 All I wanna do is make love to you
 Say you will, You want me too
 All I wanna do is make love to you
 I’ve got lovin’ arms to hold on to
 わたしはあなたと愛し合いたいだけ
 あなたもそう言って 同じだって
 わたしはあなたと愛し合いたいだけ
 私を抱きしめてくれる両手を見つけた
 So we found this hotel,
 It was a place I knew well
 We made magic that night.
 Oh, he did everything right
 そこで私たちは、このホテルを見つけた
 よく知っている場所だった
 私たちは一晩の魔法にかかったの
 そう 彼のすべてが素敵だった
 He brought the woman out of me,
 So many times, easily
 And in the morning when he woke all
 I left him was a note
 彼は私のなかの女の部分を引き出した
 何度も何度も たやすくね
 朝になって 彼が起きたとき
 私の書いた走り置き
 それだけが残されてるの
 I told him, I am the flower you are the seed
 We walked in the garden, we planted a tree
 Don’t try to find me, please don’t you dare
 Just live in my memory, You’ll always be there
 私は言ったわ、私が花なら あなたが種
 私たちは庭園を歩いて、木々を植えた
 私を探そうとしないでね、どうかお願いだから
 私の想い出のなかにだけ、いつだってあなたはそこにいる
 All I wanna do is make love to you
 One night of love was all we knew
 All I wanna do is make love to you
 I’ve got lovin’ arms to hold on to
 わたしはあなたと愛し合いたいだけ
 あなたもそう言って 同じだって
 わたしはあなたと愛し合いたいだけ
 私を抱きしめてくれる両手を見つけた
 Oh, oooh, we made love
 Love like strangers
 All night long
 We made love
 ああ 私たちは愛し合ったの
 見知らぬ者どうしで
 私たちは一晩中
 愛し合った
 Then it happened one day,
 We came round the same way
 You can imagine his surprise
 When he saw his own eyes
 それはある日突然のこと
 私たちは同じように巡り合った
 あなたはわかるはずよ 彼が驚くのを
 だってあなたが彼は私と同じ目をしてるんだ
 I said please, please understand
 I’m in love with another man
 And what he couldn’t give me
 Was the one little thing that you can
 私は言った
 お願い わかって、私には愛してる別な人がいるの
 私がその人からもらえなかったもの
 小さくて可愛いこの子をあなたがくれた
 
 All I wanna do is make love to you
 One night of love was all we knew
 All I wanna do is make love to you
 Come on say you will, you want me too
 わたしはあなたと愛し合いたいだけ
 一晩だけの愛 それだけなの
 わたしはあなたと愛し合いたいだけ
 だからあなたもそう言って、あなたも私がほしいって
 All I wanna do is make love to you
 One night of love was all we knew
 All I wanna do is make love to you
 Say you will baby, you want me too
 わたしはあなたと愛し合いたいだけ
 一晩だけの愛 それだけなの
 わたしはあなたと愛し合いたいだけ
 だからあなたもそう言って、あなたも私がほしいって
 All night long
 All night long
 All night long
 All night long
 All night long
 All night long
 All night long
 All night long
 All I wanna do is make love to you
 One night of love was all we knew, yeah

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