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夜景

 思っている以上に、想像よりはるかに、私は対面に問題を抱えているんだと思った。皺シミ艶ハリの問題ではない。社会性の問題だ。  チェーン店ならたいがいだろうと選んだその店は、うっかりお冷を運び忘れていたりした。そのくせ注文を取りに来るのは早すぎて、まだ誰も決まっていない。  口をゆすぐために寄ったトイレの鏡に映った顔は脅威だった。何これ。重ね塗りしすぎた化粧下地が撚れてダメになっている。  崩壊した顔面を引きずってまた歩き出す。誰も助けてはくれない。  でも総じて感謝している。

    • 金泥

      読んだ本なんかない。読んだとしたって、感想なんてない。 感謝はするが、共鳴はしない。思いやっても、仲間には入らない。 だからいつだって辞めるし、いつからだって始める。 見ず知らずなのに話しかけないで欲しい。見も知らぬ人のうぬぼれが許せない。 赤の他人は至極うっとうしい。そよ風の方がまだましだ。 夢希望は一人で食べてほしい。並んでまでもそうしたいなら。 早く結婚してこの世からいなくなってほしい。 切符を手配してくれた窓口の人だけが信用できる。 そうしたら私は一生懸命行くだけだか

      • 世界の数日

         ここ数日、顎周辺の皮膚が荒れ、くちばしを切らしながら生活しています。胃の調子が悪いんでしょうが、肌荒れなんでしょうが、生活を変えようはずもなく、やり過ごしています。  肌荒れや契約や資産のせいではなく、年齢のせいだと思います。「せい」って聞き返されそうですが、無視していくと、繰り返しになりますが年のせいだと思うのです。  まだ3のつく時代からたった一歩違いで、多種多様な変化を受け入れる羽目になってしばらく経ちます。気づくのは突然ですが、変化は案外ゆっくりなのでしょうね。なん

        • だから言った

          今回の年末年始は帰省したし―コロナ禍を挟んだとはいえ、5年ぶり― 甥姪との時を超えた戯れを褒められる。 年明け早々事故の影響を受けたけれどオンスケで戻ってきたし―JRと新幹線の乗り継ぎで9時間の道程を乗り越えた(被災地や事故機乗客の比ではないけれど)。 師走から年明けにかけてのバタつきによる混乱だって好セーブ―お歳暮事件:住所記載誤りによる問い合わせ⇒契約書の住所は間違いないことを確認し、正しい住所をお伝え⇒先方からお詫び&再送のご連絡⇒宅配便アプリで届く前に状況確認⇒いった

          雪と凍り

          この年になると、毎日が楽しい。 歯科助手に髪色を褒められて嬉しい。色白の肌に映えるという追記みたいな言い方がなお嬉しかった。プラークが結構溜まっているからいずれは歯槽膿漏だという言い方までされて帰ってきたというのに。 仕事は暇だけれど気が抜けない。暇な時ほど気を抜かない努力が欠かせないものだ。うっかり風邪をひくようなことにはなりたくないからな。 この年になると、失恋がひどくしんどい。きっと失業も同様にきついんだろう。だけど、失恋に関しては、痛手の大きさが尋常じゃないだけに、受

          雪と凍り

          見つからないと思う

          家にばかりいると、電車や飛行機に乗っている自分を想像できなくなってくる。予定が入って電車に乗ることが決まっているとき、吊革につかまったり座席に腰を下ろしたりする感覚がつかめないまま、結果的に電車に揺られているころには、さして不思議にも思わないけれど。飛行機の座席に落ち着くころにも、それまで本当に私は今日飛行機に乗るんだろうかと思っていたのに不思議だなんて思わないからね。 誰かに会うときも、いったいどんな顔でどんなふうに対応するのか想像もつかないことをやって終わって帰ってくるん

          見つからないと思う

          我ら

          出張というのはウソ。出張するのは彼女ではなくその彼氏であるというのが彼女の言い分だが、真実は、彼氏の出張というのもウソである。正しくは、彼女はどこかーそれはいつか彼氏が出張したことのある場所ー遠い所へ泊まりに行くのだ。彼女に恋愛対象がいるのは確からしいが、それが彼氏なのかはウソとは言い切れないので、疑問だ。彼女が彼氏の出張について行くと偽って外泊する意図ははっきりしないが、なんとなく分かる気がする感情的に。キャリーバッグにはタブレット端末にキーボードまで入れてる。仕事を持ち出

          誰にも言えないことは、誰にも言うな。

          誰にも言えないことは、誰にも言うな。

          死にたいならそりゃ死ぬしかない、それは生きるしかないのと同じことですわ

          死にたいならそりゃ死ぬしかない、それは生きるしかないのと同じことですわ

          Different kind of girl

          数学が壊滅的にできなかったので、高2のクラスは私大進学コースへ赴くも、現国の教師に匙を投げられ補填になればと世界史は政経へ変更。頼みの綱は英語(担任)。

          Different kind of girl

          私と部屋

          感謝するときに行く所です。感謝しているときにいる所です。笑顔のある場所です。希望に満ちた庭もあります。そこからの眺めは最高です。

          私と部屋

          婚外子

          地方の歴史的な女子高からは珍しく内地の私立大へ進学。理由;一人暮らしがしたかったから。 時代は就職超氷河期。高卒なら結婚、短卒は堕落、四大なら留学か教職かを付加して免許はミッションで。 思えば就職したくなかった。これがのちに功を奏したのだと気づくまで十数年を要した。こう思うと、途中で死ななくてよかったような気もする。 私たちは決まらずに、あるいは決めずに、なんとなく地元へ戻った。彼女は信金、私は父親の務める会社で事務員のアルバイト。彼女はある程度就活をしていた記憶があるが、私

          婚外子

          今日の出来事

          7時の目覚ましの予感。そして7時の目覚まし。起きない。9分おきのスヌーズを何度か繰り返したあとに、停止とする。 9時54分。顔を洗いに行くと、昨日のニキビのすぐ隣に新しいニキビを発見する。逆サイドの頬の一部分は赤みを帯びていた。昨夜寝るまでの間に何度か鏡で顔を見ているので分かる、一夜にして変化が起きるということを。 だから変化を一夜にして覆せるということもこれで分かったのだ。 右ほほのシミが濃く見えるなら、無視。むくんだ顔も美容室に行かないのならパス。 このひとって甘いなって

          今日の出来事

          息切れかな、ガス欠ではないまだ40代だし。

          息切れかな、ガス欠ではないまだ40代だし。

          トレスレチェ

          私の目覚めは、7:34と決まっている。毎朝自然に意識が回復して枕の下にうずめているスマホを取り出して見たくなると決まって、7:34を示すのだ。そのおよそ1時間前に起きる予定の彼と一緒に寝るようになっても、この数字は変わらない。二度寝するから。大音量で女性歌手の歌が流れて、私が止めたくなる寸前でそれは無事止まるが、彼もまた止まる。6:30を示すスマホを握ったまま、枕とは反対側に倒れるようにしてまた眠ってしまう。 シャワーで歯を磨き、夜より朝にしっかり泡立てて全身を洗う彼は、熱

          トレスレチェ

          リビアいとし

          Just Movedとデザインされたハガキを三枚、投函して。2日後に、彼女と一文字違いの名前の人から現金書留が届き。4日後に、レターパックでお守りが届いたときには教えてくれた「毎年秋には新米を送ってくれるの」と。学友だそうだ。 彼女の引っ越しを機に、私たちはともに暮らし始めた。協定などないが、私は率先して彼女の何かを手伝っている。郵便や宅配便を受けるのも出すのも、そのうちの一つ。 彼女は、路上生活をしていた女性が叩き殺されてしまった惨たらしい事件に思いを馳せていた。 事

          リビアいとし