ジブリ作品

小さい頃によくジブリ作品を見た。
最初はもののけ姫もハウルの動く城も
本当に怖くて仕方なかった。
怖くて仕方なかったのに
映画を見終わったあとは家の庭に生えてる草を見つめては何か特別な感情を覚えていたし
ドアノブを捻る度に上の方に4色のダイヤルがあることを想像して、外に出て変わらない風景に少し悲しくなったりした。

大人になって改めて見返すと、考える事も増えて
小さい頃よりも繊細な感動を得る事が出来た。
自然の大切さとか、人との関わりの尊さとか、
物に対する愛着とか、沢山考える事ができた。
小さい頃意味の分からなかった紅の豚が大好きな映画になった。
音楽の優雅さ、迫力に心を打たれた。
小さい頃に感じたあの恐怖心はどこへ姿を消したのか。

もしあの時、もののけ姫を見ずに育っていたら。
もしあの時、ハウルの動く城を見ていなかったら。
トトロや千と千尋の神隠しもナウシカも見ずに育っていたら。
きっと今のような感受性は持っていなかっただろう。
植物に対して何も思わず蹴散らして歩いていたかもしれない。
動物にだって今のように深く考えていなかったかもしれない。
物はすぐに捨て新しい物に変えて、人との関わりも乱雑だったかもしれない。

大人になってからこそ伝わって来る部分、考える箇所は山程あるし、なんなら大人のために作られた映画とさえ思う。
けれど何も知らなくても、いや知らなかったからこそ小さな体の小さな心に一直線に響く恐怖心や好奇心が大切だったのではないかと思う。
何故か分からないけれど植物は大切に、動物には心を持って接するように、出会った人とは仲良く。
それを気づかないうちに教えてくれたのはジブリだった。宮崎駿監督だった。
彼の好奇心やあらゆるものを愛する心、自然に対する敬意、悪に立ち向かう勇敢な心をアニメーションを通して見てきた。
きっとそれは人間としての本質であるし、持っていなくてはならない物なのではないだろうか。
小さい頃のまだ何も知らない心に1つ1つ彩りを与えてくれた。勇気をくれた。優しさをくれた。
最初の恐怖心から気づく多くの事に今まで沢山救われてきた。
背景の美しさ、人物の表情、音楽の雄大さ、そしてストーリーの優しさ。
その全てに今、大人になって初めて学ばされていたんだと気づく。
人間としての本質を自分なりに思考し、行動するための種が、小さい時に撒かれていたのだ。
あの時の恐怖心を忘れてはいけない。
あの恐怖心がなければ今よりずっと粗末な人間になっていただろう。
今ほんとうに感謝している。あの時自然に恐れを抱かせてくれてありがとう。
人との繋がりを大切にする心を授けてくれてありがとう。
悪に対して声を上げる勇気をくれてありがとう。
あの時の小さな心の苗床に撒かれた、素敵な種をずっと大切にしたい。

ジブリ映画に救われた、いや、今も救われ続けている1人の小さな人間より。

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