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理学療法士は予防領域で何をやっているのか?

私が大学生の頃からずっと思っていたことがあります。

地域の人が病気にならない健康な体作りができるように、予防領域で働きたいと。

恐らく、これを思ったのが私で10万人目くらい。それだけ多くの人が臨床経験を重ねていくにつれ感じることだと思います。
最近だと、SNSで予防ヘルスケアベンチャーの活躍が目に留まることも増えており、若い理学療法士が予防領域で働くことへ憧れを持つことが珍しくなくなってきた気がします。

しかし、若手でも中堅でもベテランでも予防領域に関わったことがない方なら1度は思うであろうことがあります。

理学療法士は”予防領域”で何をやっているのか?

調べてもイメージ付かないし、保険外領域だから売上の作り方がよく分からないしで「興味はあるけど、その領域に踏み出す勇気がない」という方が多いのではないかと思います。

そこで今回は、実際に介護予防事業の企画・開発を担当する私が理学療法士は"予防領域"で何をやっているのか?を考察しながら書いていこうかと思います。

※本記事は各保険外の予防領域のビジネスモデルから、
予防領域で理学療法士が実際に行っている業務を参考に記載しています

①そもそも予防領域って何?

介護予防

まずは先ほどから登場している"予防領域”という言葉の理解しないことには始まりません。
とはいえ、昨今の予防医学・ヘルスケアブームによる予防○○が大流行しているため予防領域の説明がとても難しい。

ということで、この章では予防医療と予防理学療法の定義を見てみましょう。

1.予防医学
予防医学の定義を日本語で探しても意外と見つからない。ここではアメリカ予防医学協会のHPより定義を引用しました。

予防医学は、患者の健康を改善するために予防医療を促進するもの。最終的な目標は病気、障害、および死を防ぐこと
引用:American College of Preventive Medicine

こちらの予防医療の中には産業医学や航空宇宙医学も含まれているようです。つまり、腰痛や廃用などの障害が起きやすい領域予防活動の需要が高いことを示しているのだと思います。

2.予防理学療法
続いて予防理学療法の定義です。こちらは日本予防理学療法学会からの引用です。

国民がいつまでも「参加」し続けられるために、障がいを引き起こす恐れのある疾病や老年症候群の発症予防再発予防を含む身体活動について研究する学問領域である。研究には、メカニズムの解明、発生の予測、予防法の開発、機器の開発、社会活動の創出、制度の立案などが含まれる。
引用:日本予防理学療法学会

これら2つの領域を簡単にまとめると、以下の図となります。

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つまり、予防領域は病気や障害等の予防および社会参加の維持・促進のために、発症・再発予防を目的とした健康の維持・改善のための事業やサービス、研究を実施しているマーケットのことと言えそうです。

予防領域には医療・介護分野もあるとは思いますが、全て取り上げると膨大な量になるため今回は保険外における予防領域に絞ります。

②予防領域はどんなことをしているのか?

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予防領域に携わっている方ですら、予防領域を完全にジャンル分けすることは至難の業です。それくらい予防領域は多岐に渡ります。

ここではザックリとしたイメージが付けられるように、予防領域の一部をジャンル分けしてみました。

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詳しい方は「栄養・ITと言えばあのアプリ」といったイメージが付いているかもしれません。

この後に本題である「予防領域の理学療法士は何をやっているか」を述べていきますが、今回は職域(ITやフィットネスなど手段による領域)に関係なく「理学療法士が予防領域の企業で働く中で、どんな部門に就いてどんな働き方をしているのか?」といった視点で書きました。

③予防領域の理学療法士がやっていること

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ここからは私が知っている限りの理学療法士の予防領域における働き方とスタッフ全員で介護予防事業を行ってきた中での経験で書いていきます。
もしかしたら私が知らない予防領域での理学療法士の働き方があるかもしれませんが、その時はご了承ください。

1.実働部隊としての領域展開

普通の病院出身の理学療法士であれば実働部隊が基本となります。ここでの実働部隊はいわゆる労働集約型の雇用形態を指します。具体的には以下の通りです。

・介護予防教室やフィットネス分野での指導者およびトレーナー
・医療や介護施設への営業(IT・ベンチャー企業で多い)
・ICTツールのオプションで用いられるオンラインでの相談対応
・Zoomやアプリ、電話による遠隔リハビリ

プレイヤーとして現場に立つ働き方もあれば、一般的なサラリーマンとしての働き方まであります。予防領域へ事業を展開していく際の草の根運動的なことを担うのも予防領域で理学療法士が行っていることの一つです。

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2.研究・事業・製品(プロダクト)開発

恐らくこちらの分野に関わったことのない理学療法士からすると、仕事に箔が付いていて良い意味で理学療法士っぽくないカッコイイ働き方だと思う方も少なくないかと思います。

たしかに研究・事業開発における成果物が見える形になれば、いくつか恰好が付きます。しかし、実際はめっちゃくちゃ地味な作業が多いです。
それでも予防領域でも難しい、新しいものを生み出すクリエイティブな貢献ができるので希少価値はとても高いと思います。業務内容としては以下の通りです。

・データ収集やクライエントへの聞き取り調査
・解析作業やロードマップ、要件設計の作成
・(研究)事業解析や論文執筆、(事業開発)プロトタイプの作成、UI設計

研究・事業・プロダクト開発に携わるには、採用条件に修士・博士を持っていることや論文執筆歴など学術経歴を求められることが多くあります。もしくはプロダクト開発経験など普通に理学療法士としてはたらいていれば経験することのないスキルを求められます。

また、企業によっては事業・プロダクト開発部門はなくても、業務がその一部を担っていることもあります。

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3.マネジメント・マーケティング部門

最近ではMBA(経営学修士)の理学療法士も増えてきた印象です。
そんな経営学にも精通した方やマーケティング経験があれば、マネジメント・マーケティング部門に配属されることも不可能ではないと思います。人によってはDX部門になるかもしれません。
この領域になると外資コンサルが行えるレベルなので、年収1,000万円以上も珍しくはないと思います。

マネジメント
・売上やサービスの利益率などの財務管理
・サービスの構成人材の管理
・プロダクト作成の進捗状況のモニター など

マーケティング
・サービス開発のための聞き取りや調査
・事業における課題の抽出、改善
・マーケット分析に基づく事業方針の決定 など

※これらの部門は企業によって大きく変わるため、私が経験した内容で記載しています

かなりの裁量権を持って予防領域に取り組めるため、予防ヘルスケアマーケットに影響を及ぼす可能性もあります。しかし、簡単に狙って付けるポストでもない上に普通の理学療法士が関与できる部分でもないので、そんなに気にしなくても良いかと思います。

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4.起業

これが一番簡単で一番難しいと思います。ルールの範囲であれば自分が好きな形で予防領域に関わることができます。

ただ、頭脳と覚悟と根気がない方にはオススメしません。もし予防領域で起業を考えている方は、自分が行いたいビジネスに近い企業に就職して経験値を積むことをオススメします。

④終わりに

役割ごとの優劣は特にありませんが、自分が目指している予防領域でのキャリアがあるなら、何かしらの実績や資格の取得、下積みをしないと進出は難しいと思います。

私は予防領域に進出したいという若い理学療法士にたくさんお会いしてきましたが、ほとんどの方は「開業して整体院を・・・」「保険外の介護予防教室をたくさん開いて・・・」といった意見でした。

多くの理学療法士は診療報酬で「単位を増やせば売上を作れる」ことでしか売上の作り方を知らない学術経歴のない状態で、保険外の予防領域で勝負することになると思います。
ですので基本的には、理学療法士が予防領域でできることは実働部隊としての生活期での臨床・営業・遠隔によるリハビリ相談(≠介入)の下積みを数年行うことから始まると思います。

⑤もし予防領域で少しでも関わりたいと思ったら・・・

受付

弊社(株式会社ARCE)の健康予防事業部であるUP Lifeは、生活習慣病予防特化型サービスとして、デイサービスを拠点に地域包括と連携した介護予防事業研究事業を展開しています。

理学療法士や作業療法士の専門性をフルに活用した様々な予防事業を展開しており、昨年は18回の介護予防活動を行っています。今後はHPに採用情報なども載せる予定ですので、ご興味があればご確認ください。

以上、宣伝でした!

最後までご覧いただきありがとうございました。

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