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広い意味でのドミナントモーション

これは僕が勝手に考え至ったボキャブラリーで、一般的にはそういう呼び方はしないかもしれないことを先にお断りしておく。

ドミナントというのは『不安定』な状況のことだ。不安定な音場、不安定なリズム、心理的なもの、それらを「解決」することをドミナントモーションと呼ぶ。そう考えている。
これは一般的にはコード進行について語られる用語ではあるが、もっと広く、リズムや、「展開」だとか「フォーム構成」についても同じことが言える。

幼少、スターウォーズの小惑星の原野が好きで繰り返し聴いていた。この曲の1分半くらいからの難解なハーモニーとリズミカルさ、マリンバの軽快なフレーズの後、朗々とメロディックなフレーズが流れてくる。
毎回この部分で鳥肌が立ち感動する。何度聴いてもかっこいい、なんでだろう、不思議だった。


18歳くらいの頃、ピアソラの音楽にも同じような感覚をおぼえた。Tango Zero Hourに収録されているMilonga Locaも、不安定なハーモニーと軽快なリズムが繰り出される合間に、朗々としたメロディが挿入されていく。美しい旋律に戻るたびに感激してしまった。

すこし話が迂回するが、父がチェリビダッケのドキュメンタリー作品を「これ面白かったよ」と持ってきてくれた。それは音楽学生とのマスタークラスを収録したようなものだったが、チェリビダッケは学生に「どうして音楽が終わると予感できるのか?」と問い、「それは最初のテーマモチーフに戻るからだ」と答えていた。なるほど、ベートーヴェンの運命の第一楽章を聴くと確かに、冒頭有名なジャジャジャジャーンで始まり、最後に同じジャジャジャジャーンで終わる。あの時代のクラシック音楽はだいたいそうなっている。

ジャズだってそうだ。テーマメロディで始まって即興ソロを挟み、テーマメロディで終わる。ポップスなんかも、イントロのメロディが最後にもう一度流れることでビビッと痺れることがある。

ひょっとして、人間は「聴いたことがある」に安心するのではないだろうか。そういう着想がわいてきた。

話を戻すと、不安定なハーモニーやリズムで”揺さぶって”から、安定感のある馴染みのハーモニーやリズムに戻るという、この手法を『広い意味でのドミナントモーション』と呼んでいる。

ドミナントモーションの図

ドミナントモーションというのは主にハーモニーについて、不安定な状態が解消されることを指す。この”主にハーモニー”についての考えを拡大解釈すると、リズムがガチャガチャしている状態をドミナント、それがスッキリすることで解決することもドミナントモーションと呼べるのではないか。
そのような解釈をしていくと、冒頭紹介した小惑星の原野Milonga Locaリズムのドミナントモーションをやっているのではないか。

この考え方やテクニックは、ひょっとしたら別の名前がついているのかもしれない。そして勝手に考えたアイデアとしては有能で、実際に活用している。

多くの音楽には”山・谷”があり、フワッとしてから安心させるを繰り返している。音楽に限らず、社会や人生についても同様の”山・谷”があるように思う。フワッと不安定になっては安定化させようと動いていく。
音楽で学んだドミナントモーションを拡大解釈させることで、見えてくる世界があるのではないか。
そういう視線を持っているから僕は社会問題から目が離せない。



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