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牛乃ジャズ探訪(7) Yvonnick Prené

高知の音楽家・ギタリストの牛心。です、ご存知ですかYvoncick Prené?
ご存知の方は相当なジャズ通と思われますが、最近の若手ジャズプレイヤーの中でとても光っているハーモニカ奏者です。
ジャズハーモニカといえばトゥーツ・シールマンス以外ほとんど知られてないと思われますが、新しい芽は育ってきているんです。

イヴォニック・プレーネ(Hmc)

イヴォニック・プレーネは1984年フランス生まれのハーモニカ奏者です。まだ日本では知られていないのでカタカナ表記はちょっと違うかもしれない。

とりあえずアルバムはこちらがおすすめ。

スタンダードジャズのアルバムなので聴きやすい、そのままカフェで使えそうなオシャレなサウンドです。ジャズハーモニカ自体、オシャレ感がありますよね。

元々ギターを弾いていた彼はハーモニカに転身、クロマチック・ハーモニカ奏者として17歳でプロ活動をスタートした後にパリ大学音楽科に入学。
その後、拠点をニューヨークに移してNYシティ大学、ニュースクールで本格的にジャズの手ほどきを受ける。(またニュースクールか!もっとやれ!)
ニューヨーク界隈のジャズプレイヤーとセッションを重ね、2012年にリーダーアルバムをリリース。

とまぁ略歴はこんなところで、詳しくはWikiをどうぞ。



クロマチック・ハーモニカとは?

クロマチック・ハーモニカをご存知ない方のために、それがどんな楽器なのかをお伝えしておきます。


※画像はこちらから引用しました。

普通のハーモニカは「ドレミファソラシド」、ピアノでいうと白鍵だけの音階を出す構造になっていまして、曲の調によって持ち替えて使います。だから「ハーモニカ(C)」とか「ハーモニカ(F)」とか、普通のハーモニカには調合が明示されています。

一方、クロマチック・ハーモニカはスライドバルブがついていて、これをプッシュすると音が半音下がります。これにより、ピアノでいえば黒鍵も演奏することができるという訳です。
値段は普通のハーモニカの10倍くらいはします。しますが、普通のハーモニカだって全キーを揃えようと思ったら10個くらいは買うので、どっちが安いのかなぁという気がしなくもない。

とはいえ、演奏感はクロマチック・ハーモニカが100倍難しいと思います。
人によると思いますが、僕は普通のハーモニカとクロマチック・ハーモニカは別の楽器だと考えてます。



違う楽器からのアイデア

イヴォニックのプレイは端正でしっかりしてる。リーダーアルバムのオリジナル曲もアイデア溢れる素晴らしい曲ばかりです。

しっかりモダンなハーモニーを実現しているし、古典的なジャズも踏襲しているプレイングです。ハーモニカらしい音の跳躍はサックスのそれに近い。
ハーモニカはサックスよりもブレスが少なくて済むはずなので、管楽器のフレーズより長いフレーズが吹けてて、そこがギターとかピアノのプレイングを思わせます。ギタリストとの共演も多く、彼のボキャブラリーは多様です。

先述の通り、ジャズハーモニカは全体としてはニッチで、本当にトゥーツ・シールマンス以外はほぼ無名といって過言じゃないでしょう。
そんな楽器を選んだイヴォニック、当然トゥーツ・シールマンスについても沢山勉強したと思うのですが、それ以上にハーモニカ以外の楽器の演奏を研究したのではないかと感じます。

ジャズ即興の授業では「自分のメイン楽器以外の楽器のソロを採譜してこい」という課題が、必ずといっていいほど出てきます。採譜したソロを自分の楽器でも弾くように指導もされます。
楽器の癖や特徴を一旦無視して、より頭に浮かぶイメージを実現させようという趣旨の課題です。

僕はその課題を出された時、大好きなミッシェル・ペトルチアーニのソロを採譜してギターで練習したものです。ピアノのメロディをギターで弾くのに、まず音域の違いに大いに苦戦したのをよく覚えています。
でも、とても勉強になりました。

きっとイヴォニックも音楽大学でそういうレッスンを受けたはずです。彼のフレーズはカート・ローゼンウィンケルを思わせる疾走感がありますが、それは楽器の技術的に自然発生するとは思えず、試行錯誤を感じさせます。



SNSや動画による啓蒙活動

彼はオンラインレッスンをやっていて、Facebookでもそれが時々流れてくるのでよく見てます。
なんせクロマチック・ハーモニカは演奏者人口が少ないので、彼はそのマーケットをよく分かってレッスン活動も積極的です。
しかも動画を活用したり、SNSで拡散するという、現代らしいアプローチもしっかりやっていて関心します。

「マイナーだ」と思ってそのままにしておくんじゃなくて、ちゃんとその良さを啓蒙していく活動は、とても大事だし価値があると僕も思います。
いいですね、よければ僕のFacebookページもイイネしてください、あんまりTLを汚さない怠惰なページですが(笑)


牛心。
高知在住の音楽家・ギタリスト。自身はギタリストとしては中の上くらいだと自負しているが、先日ステージでピンスポを当てられるようなフューチャーをされた際はラリー・カールトンのモノマネでSweet Memories(松田聖子)を弾ききった。本業は音源製作だと思っている。

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