電気自動車の概要と課題
前回の記事では、V2Xが必要な理由として下記市場背景を記載しました。
環境対策の一環として
環境対策の一環として
電気自動車の急速な普及が見込まれる
再生可能エネルギー[再エネ]の普及が進んでいる
自然災害の甚大化
その理由を追う前に、まずは電気自動車(PEV)と再エネの概要と課題について取り扱いたいと思います。
この記事ではまずはPEVについて。
※前回記事の通りPEV = 純粋なEV(BEV) + PHEVと通り定義します。
PEVの概要
PEVは車の中にあるそれなりに大きな電池を使って走ります。
電池なので使用した分だけ充電します。これはスマートフォンと全く同じです。
ただしスマートフォンとの大きな違いはその電池の大きさにあります。
技術的に言えば、電池容量、蓄積できるエネルギーが格段に大きいところがPEVの電池の特徴です。
この電池容量をWh (Watt Hour, 結局はエネルギー)で表します。ちなみに本項ではこれを電力量とも呼びます。
※電力と電力量は名前が似ていますが、若干違います。
例えば、
iPhone 14は13 Wh弱
https://appleinsider.com/articles/22/09/12/apples-iphone-14-battery-capacities-revealed-in-filingよりTesla Model 3は50 kWh (50,000 Wh): iPhone 14の3000倍以上!
https://evsmart.net/carMaker/Tesla/Model3/よりざっくり言えば純粋なEVは50 kWh以上であり、ピックアップトラックのEV(F-150 Lightningが代表例)とかになると100 kWh以上になるイメージ。
※最近は街乗り用のEVが中国で人気だったりとこの枠にはまらないものもありますが、典型例として。
さて、話を戻しますが、充電するときの充電スピードは(これもまた)大雑把に言えば充電するときの電力、即ち充電電力により決まります。
具体的には、下式がざっくり成り立ちます。
例えばiPhoneの付属でついてくる充電器の充電電力は5 Wです。
従って、電池すっからかんのiPhone 14は大体2.5時間もあればフル充電されます。
仮にiPhoneの付属充電器でModel 3をフル充電しようとするとその3000倍以上だから…
ということでPEVを充電する時にはもっと大きな電力で充電できるよう、それ専用の充電器が使われます。
こんな感じ。
専門的にはDC充電とかAC充電と充電方式によりいくつか分類されます。
今回の記事の本筋ではないので、それはまた別の機会にします。
ただし、下記は課題に繋がるので数字を記載します。DC充電は圧倒的に充電電力が大きいです。
AC充電
日本: 最大6 kW
北米: 最大19.2 kW
欧州: 最大22 kW (三相、単相の場合は7.4 kW)
DC充電: 最大数100 kW (IEC 61851シリーズだったかコネクタのIEC規格に書いていますが忘れた)
日本の一般家庭において、
ピークの電力(kW)消費は大体7 kWと推定される
1日の電力量(kWh)消費は大体8 kWhと推定される
ので、それと比較するとPEVを充電する電力(kW)や電力量(kWh, 電池に充電するために必要な電力の時間的な合計)が突出していることがわかります。
(推定根拠については本記事の備考項参照)
誤解を恐れずに言えば、
テスラの一番いいやつとかEVピックアップトラックを持っている人が、
日中出張でPEVの充電を空にして夜遅くに帰宅して
朝また出社するまでの間にフル充電できる
こんな環境を整えようとするとその電気消費は家3, 4軒のレベルになるということです。
この設定自体は割と無茶苦茶なのですが、ケースとしてはありえないこともないです。
いずれにせよ、このでっかい電池がそのままPEVの課題の一つとなるわけです。
PEVの課題
ガソリン車と比較したときに、この50 kWh以上の電池を搭載した自動車は市場に様々な影響を与えます。
LCAやらレアメタルやらなんやら人によって色々ありますが、とりあえず僕の記事に即して言えば、上に書いたように充電電力が相当に大きいところが挙げられます。
じゃあ、充電電力が大きくて例えば家3, 4軒分の電力消費になるとして、何が具体的に起きるのでしょうか。
それは、
消費者目線では、電気代が増える。
インフラ目線では、
こんな電力消費を想定してインフラ設計されていないため、巨額の追加投資が必要。
例えばカリフォルニア州では2035年までにEV (PHEVを含みません)だけを販売しようとしていますが、そのために電気供給インフラに数兆円必要だという試算をしています。しかもこの投資をしても、PEVの充電タイミングは結構決まっているので、従来通りのインフラ投資では費用対効果が低いような感じがする。
※平日の朝に出社して夕方に帰宅するという人が多いことを考えると、PEVの充電は夕方以降であって昼間にはそんなにないはず。
結局インフラ投資も最終的には消費者に返ってくるので、いずれにせよ電気料金が上がることがわかりやすい結果だと考えられます。
このインフラ投資を極力低減するために、V2Xが登場します。
それはまた次の次の次ぐらいに書きます。
次は再エネについて書こうと思います。
ちなみにトップ画像はGM/ChevroletのBlazerのEVです。
これもデトロイトオートショーで撮りました。
備考: 一般家庭のピーク電力と電力量消費推定
一般家庭の電力量消費は様々なサイトに書いてありましたが、本記事では信頼できるソースとして東電のデータを用いました。
ピーク電力の推定方法
ソースより、東電管内の契約電力(電流)の平均が34.88 A(約35 a).
これを超えるとブレーカが落ちることから、契約電力はピーク電力に対応するものである。
一般家庭には単相3線200 Vが供給されている。
200 V x 35 A = 7 kW (厳密にはVA)
平均電力量の推定方法
ソースより、東電管内の1ヶ月の1家庭平均の電力量は248.7 kWh
とりあえず1ヶ月30日とする。
248.7 kWh ➗ 30 days = 8 kWh
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?