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【ショートショート】書く時間#シロクマ文芸部

書く時間は朝起きてすぐにしたの。今日は素晴らしい朝よ。キリリと冴えた風が昨夜の雨の、緑の湧きたつ香りを運んでくれる。昨日は姿を見せなかったヒバリが私を起こしてくれたの。ああ、アーロン。この朝を貴方と過ごせないことが本当に残念。貴方の腕の感触をこんなにも覚えているのに、貴方がいないなんて。戦地へ向かってまだ半年なのに、もう何十年も会っていないような気さえする。
この一ヶ月、貴方からの手紙が届かないことがとても心配です。ただ毎日が忙しくて、手紙を書く暇が無いのだと思いたい。もしかしたら利き腕を怪我してしまったのかしら。もしそうなら無理はしないで。無理に動かして、ひどくしてしまってはわたしが悲しいわ。また、もしもその地で誰か、魅力的な異性と出会い、わたしのことを忘れてしまっているのなら、ええもちろんそれは胸を割かれるように辛いことだけれど、その方が良いとさえ思っているの。もっと最悪な想像だってできるのだから。
ああ、いけない。せっかく書く時間を朝に決めたのに。これでは夜寝る前に書いていたのと同じね。
ねえ、アーロン。お願いがあるの。もしもこの手紙が貴方のもとに届いているのなら、手紙でなくてもいい。何か貴方の物を送ってくれないかしら。わたしたちをつなぐ伝書鳩のノアはとても賢く優秀よ。どうにか足にくくりつけてくれれば、必ずわたしのもとへ届けてくれる。本当はノアが、貴方の言葉を伝言してくれれば一番なのだけれど、伝書鳩に伝言はお願いできないわね。

 どうか今日も一日、愛する貴方が無事でいますように。

 貴方のマリー


(654字)



シロクマ文芸部の課題に分かりにくいやつ出してしもうた。

今回のテーマは「書く時間」。

この話は、以前たらはかに様の毎週ショートショートnoteで書いたお話の裏話のつもりです。その時のお題は「伝書鳩パーティー」でした。こちらとセットで見ていただけると嬉しいです。

でも本来単品で成り立つものじゃないとダメですよね。。。反省。。。


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