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「お前と話してると自分を嫌いにならないで済むんだ」

 まだ3月も序盤だというのにスギ花粉は既に総量の半分が飛び去ってしまったらしい。暖冬だったこともあり桜の開花も記録的な速さになる(もうなった?)という話を耳にした。

 早く暖かくなるのはまぁまぁ嬉しい事なのだが、花粉症の私にとっては寒さが厳しい時期と症状が重なってしまい何とも調子が狂ってしまいそうになる。

 しかし、そんな寒さも花粉の症状も気にならないぐらいに充実した日々を過ごしている。多少金銭面に余裕があり、いい距離感を保ちながら緩く素敵な人々と繋がれているおかげだろう。

 今回のnoteのタイトルは、私が最近お世話になっている方に伝えた言葉だ。いつもと変わらない雑談の延長線上で相手に伝えた言葉だったので自分でも特に意識していなかったのだが、個人的に言葉にできる範囲での最上級の誉め言葉かもしれない。

 そんな言葉を伝えた彼からは頻繁に「ヤマー君は優しいね」と言ってもらえるのだが、私のTwitterやnoteを見たことがある方、キャスでのお喋りを聞いたり、直接お会いしたことがある方ならご存じの通り、私は特別優しい人間ではないし、誰にでも優しい訳ではない。

 そんな風に評価してもらえるのは嬉しいのだが、私は直ぐに「お前が優しいから優しくなれるだけなんだよ」返している。「他人は自分を映す鏡」とはよく言ったものだ。

 「優しさ」や「気遣い」などは無限に作り出せるものではない。その日の気分や体調によって投資できる量が容易く変動してしまう貴重なリソースだ。彼と知り合ってからまだ日は浅いのだが「どんな状況や状態でも相手への気遣いや優しさを忘れない」という立ち振る舞いは、彼の尊敬出来る部分の一つだろう。

 尊敬という言葉では少し表現が柔らかすぎるかもしれない。「畏敬の念」と呼んだほうが近い。「相手への気遣いや優しさを忘れない」というのは、言葉や文章にしてしまえばあまりにもチープだが、殆どどんな状況においても、知らない人物にまでそれを行えるという事は狂気に近い何かを感じる事さえある。

 本調子ではない時でも、初対面の人物とスマートに接さなければならない場面は生きていればいくらでも直面する。そうした時、無理をして枯渇したリソースを割くのではなく、ある程度強かに振舞える方が対人スキルとしては優秀と言えるだろう。彼の「凄さ」は、そうした強かさを殆ど持ち合わせないままに、相手とのコミュニケーションを理想的(私から見て)な形に運んでしまう所だ。

 その日の状況、自身の状態、自分が持ち合わせるリソースと相談しながら、どこにどれだけチップを置くかを悩んでいる私の真横で、彼は何の迷いもなくStraight-Up(ストレート・アップ)1点賭けにベットしていく。しかも毎回同じ色をチョイスする。まるでそれがこのゲームの最適解であるように。そして私の観測範囲において彼は負けることがない。

 しかし、私のような人間が彼と同じやり方で勝ち続けることが出来るのかというと、そういう訳ではないのだろう。彼の人柄の良さ、持ち合わせている魅力、奇妙なバランス感覚などが合わさってあの曲芸じみた対人スキルを可能にしているのだと思われる。私のような凡人では、数日そうした振る舞いが可能であっても直ぐにダウンしてしまうのが関の山だ。

 そして、彼のそうした魅力に気が付いた知人、友人は彼へのリソースの提供を惜しむことが無くなる。彼にどれだけ優しく振舞おうと、どれだけ気を利かせようと、それが払い損にならないことを知っているからだ。彼はそれと同等か、それ以上の優しさや気遣いを我々に返してくれる。

 本来、相手が初対面の人物であれば、その人柄や人物像がわからない(資源回収の目途が立たない)以上、こちらから貴重な資源を先手で提供してしまうのは躊躇いを覚えるものだ。互いがそうした利口な人物であれば、いい人同士でさえ、あるいはいい人同士だからこそ、優しさ、気遣い、思いやりの循環システム構築にはある程度の時間を要する。

 そのシステム構築に殆ど時間を必要としないのも彼の「凄さ」の一つだろう。彼が先手でリソースを提供してくれている以上、少なくとも提供された分の優しさや思いやりは返しても損になることはない。彼はそうした、互いがいい人であっても資源を出し渋ってしまう「初めの一歩問題」も容易く飛び越えていく。

 そうした「リソースの提供を惜しまずに済む」事や「循環システム構築に時間を必要としない」などの様々な魅力によって私は彼の前で、自分を嫌いにならないで済む。彼の前に於いて「いい人でいる」という事で、一切損をする事はない。

 誰もが「いい人」でありたいと願いながら、そうある事が難しい世の中で彼のような存在は本当に貴重だと言えるだろう。「いい人」であり続ける事の難しさを改めて考えさせられると共に、そうしたコツのようなものを彼から学べるだけ学んでおきたい。(恐らく実践は難しいのだろうが…)

 そして、こんな私とも付き合いを良くしてくれている彼への感謝を忘れぬように、その思いをここに記し、これからも彼の前では「いい人」でありたいと切に願うのであった。

おいしいご飯が食べたいです。