デザイナーの視点:レイヤリング

Photoshop を使ったことがあるだろうか?
いくつものレイヤーを重ねて一枚のビジュアルが完成する

印刷にはリッチブラックという色がある
黒いインクの下に別の色を塗って黒い色に深みが出すのだ

美術館にいって絵画を観てみるといい
何層にも重ねられた油絵の厚みが、絵というものが二次元のものではないと教えてくれる

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世界は多層的にできている。たとえば物理的な重なり

地面の下に隠れた虫達。ケーキはパウンドとクリームとフルーツの層でできている。人体の不思議展に行けば人の身体というのが皮膚や脂肪や筋肉や血管など、いくつもの層で形作られていることに気づくはずだ

概念的な重なりもある

地図アプリを開いてみよう。道路地図、地形地図、衛星写真、路線図や交通情報まで。同じエリアの地図でもその上にどのような情報のレイヤーを重ねるかでまったく違う世界が小さい画面の中に現れる

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目に映る表層の上下前後裏表にあるレイヤーを行き来しながらユーザーが触れてコミュニケーションできる形に作り上げるのがデザイナーの仕事だ

購入ボタン一つをとっても、それぞれのレイヤーでは別々の意味をもつ

意味的レイヤー:ユーザーの購入というインテントを受け付けるもの
機能的レイヤー:システムにフォームを送信する機能
物理的レイヤー:押すことができる
BIレイヤー:提供会社への認知が上がりロイヤリティを向上させるデザイン

すべてのデザイン(もちろんビジュアルに限らずである)は、こんな風にいくつものレイヤーの重なりの中でデザインされ、それぞれの層で必要な物が取捨選択され、お互いがもっとも有効な組み合わせを検討された上でその形になっているのである

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当たり前だけれど、使う人にこういうことが伝わる必要はない

でも表層を少しだけめくって、その奥にあるレイヤーの重なりを意識して「ただの赤いボタン」ではなく「重要なデザイン上の決定が凝縮されたボタン」として観察したら、あなたのデザインに対する解像度が少しあがるはずだ

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