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ゲームマーケット初出展で自作のボードゲーム380個を売った話 - 序章

2018年11月24日(土)・25日(日)に開催された「ゲームマーケット2018秋」に「パティスリージレンマ」というサークル名で出展し、ゲームデザインからコンポーネントデザインまで全てを一人で手掛けたボードゲーム2作品を販売し、みごと380個を売り上げることができました。今回、自分の実力を試す意味も含めて、様々なことを考えながら、現時点での全力を出して制作に挑んだので、その約4ヶ月に渡る奮闘をここに記しておきます。

作ったもの

今回、2つのテーマから、2つの作品を制作しました。

ひとつめは、「人の価値観」をテーマにした「カチカンモンスターズ」。「イケてる↔︎ダサい」「おもしろい↔︎つまらない」といった2軸のマトリックスを使って、ターゲットとなるプレイヤーのピンポイントな価値観に当てはまるものを予想するパーティーゲームです。詳しくはリンク先をご覧ください。

ふたつめは、「どこを写真におさめるか」をテーマにした「キリンフォト」。「決められた色の全てのキリンが写っている」「決められた色以外のキリンが全く写っていない」「草むらが2個以上写っている」という条件を満たす写真が撮影できるギリギリのラインを狙ってキリンを配置していき、写真撮影に挑む、新感覚のチキンレースです。詳しくはリンク先をご覧ください。

実績

ゲームマーケット2018秋の二日間で、カチカンモンスターズ(¥3,500)は210個(¥735,000)、キリンフォト(¥2,500)は173個(¥432,500)、合計で383個(¥1,167,500)を売り上げました。

客観的に見て、これはかなり成績が良い方です。ゲームマーケットの個人出展では、100個完売すれば成功と言われています。結果的に見れば大成功となりましたが、当然、大爆死(大赤字)のリスクもありました。その辺の数字は追々お話しします。

自分がゲームデザインをした初めての作品が世に出るということで、不安しかありませんでしたが(当日試遊した人が「つまんね〜」って言いながら去っていくのが怖すぎて試遊卓を申し込む勇気が出なかったぐらい)、ゲームマーケット後にプレイされた方の反響を見ると、想像以上に受け入れてもらえており、想定以上の遊び方をしてくださっている方もいて、正直驚いています。何より、何度も繰り返し遊んでくれている人が居るのが嬉しいです。(リプレイしようと思えるような作品って本当に少ないんです)

経緯

なぜゲームマーケットでボードゲームを作って販売するに至ったか。細かい経緯は内輪の話なので省略しますが、知り合いが数名、初めてゲームマーケットに参加するという意思表明をしたので、この流れには乗るべきと直感が訴えかけたからです。以前から、ボードゲームを作りたいとモヤモヤ思ってはいたものの、全く形になっていなかったので、こういう機会でもなければ一生作らずに終わるだろうなと思ったからです。締切駆動というやつで、この時点では本当にアイデアも何もなくゼロからのスタートでした。これが4月上旬頃の話です。(ゲームマーケットは11月下旬)

ゲームマーケットとは

ゲームマーケットとは、年に3回、年明けに大阪、春・秋に東京で開催されている、ボードゲームの即売会です。ボードゲーム界のコミケです。ここ最近は回を重ねるごとに規模が大きくなっており、東京ではビッグサイトで二日間の開催になっています。個人の出展者がほとんどで、様々な創作ボードゲームを、作者の人と顔を合わせて、見たり、遊んだり、購入したりすることが出来る場です。

写真はゲームマーケット公式サイト「ゲームマーケットとは?」より

自分にとってのゴール

出展の意思が固まったところで、今回のチャレンジにおける、自分なりのゴールを決めました。今振り返ってみると、無意識のうちに意識していたものも含めて、次のようなものがあったと思います。何か新しいことにチャレンジするときに、自分はこういうゴール設定をよくやります。理由はいくつかあって、やるべきことがはっきりする、逆に、やらなくていいこともはっきりする、程よい制約になって動きやすくなる、道に迷いにくくなる、効率よく経験値を得られる、達成するのが楽しい、あたりです。

・絶対に完成させて世に出す
・自分の名で出して恥ずかしくないものを作る
・ゲームマーケットで売れるものを作る
・モチベーションを維持する
・ブランドになり得るものを作る

絶対に完成させて世に出す
世に出してみて反応を得ないことには全く経験値が入らないので、絶対的な完成度を追求するのではなく、失敗しても良いので、ゲームマーケットで必ず何かしらを販売することを目標としました。

自分の名で恥ずかしくないものを作る
これはある意味、「絶対に完成させて出す」という目標と相反しています。自信作なんてそうそう作れるものではありません。しかし、可能な限りこの点に真摯に取り組むことにしました。もう少し噛み砕くと、「スキン替え」や「一発ネタ」が作品の核となっているようなものは避け、自分なりに「おもしろさのデザイン」ときちんと向き合うことを目標としました。

ゲームマーケットで売れるものを作る
最初から風呂敷を広げすぎると収拾がつかなくなるので、ゲームマーケット以外で販売することは一旦忘れて、ゲームマーケットという場に特化して考えていくことにしました。振り返ってみると、様々な判断に、最も明確な基準をもたらしたのがこの目標だったと思います。

モチベーションを維持する
今回は最初から長期戦が予想されたので、最初から最後まできちんとモチベーションを維持するのが大事だと考えました。そのため、可能な限り自分がやってみたいことをやり、やりたくないことは避けていくことにしました。

ブランドになり得るものを作る
何かプロダクトを作るときに、それ単体ではなく、他のプロダクトや、それらを取り巻く周囲のもの全て、一貫した思想でデザインをしていくのが非常に大事だと考えています。単発で作って終わりではなく、継続して展開していけるようなものを目指すことにしました。

自分のバックグラウンドについて

自分は株式会社オインクゲームズという会社にプログラマーとして勤務しています。オインクゲームズは、メディアに捉われず、ボードゲームとデジタルゲームを作り続けている会社です。自分は2014年から勤務しており、約20作が生まれる過程を間近で見ることができました。また、ゲームマーケットも、個人では初出展なのですが、オインクゲームズのメンバーとして何回か参加経験がありました。仕事では特にデザインやボードゲームの制作に関わることはなかったのですが、自分の目線で見て感じたことを、今回のチャレンジには最大限活かすことにしました。

サークルについて

ゲームマーケットに出展すると決めて、まず真っ先にやってきた〆切が、ゲームマーケットの出展申し込みでした。この時点で、サークル名が決まっていないと申し込みが出来ないので、サークルのコンセプトをまず考えることにしました。

可能な限りキレのあるコンセプトにしたかったのですが、この時点では作るゲームのイメージも全く沸いていなかったので、なかなか難儀しました。「自分が作りたいゲームとはなんなのか?」を自問自答して「内容が140文字で説明できる、140文字ゲームズ」とか「ついつい何度もやっちゃう、ツイツイゲームズ」とか案は出ましたが、作れるゲームの幅が極端に狭いにように思いました。

そんな中で、「楽しい悩み」というコンセプトが浮かんできました。ゲームを作るとき、製作者は意外と「苦しい悩み」を入れがちです。極端に高い難易度や、ものすごいジレンマなど、製作者としては「ほらほら悩むだろ〜」とほくそ笑んでいるのですが、その状況を楽しめるのは、それを「用意した側」であって、決してプレイヤーではないのです。「楽しい悩み」というコンセプトは、ゲームを作る上でも良い指標になりそうだったので、これを採用することにしました。

自分の中で「楽しい悩み」とは何か?を考えたとき、真っ先に浮かんだのは、「ケーキ屋のショーウィンドウの前でどのケーキにしようか悩んでるとき」でした。「アレも美味しそうだしコレも美味しそうだし〜」というやつです。これはかなり上質な部類の悩みに入ると思います。自分は名付けをするときに、2単語を組み合わせるのが割と好きなので、ケーキ屋を意味する「パティスリー」と、ボードゲームの悩みの表現としてよく出てくる「ジレンマ」を組み合わせてサークル名とすることにしました。


次回、ゲームデザイン編(前編)

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