無事に布団を買い、とりあえず寝泊りする空間ができて一安心しています。あっという間に一週間が経ちました。

これまで太平洋側に行ったことは何回かありましたが、大陸側に飛ぶのは初めてでした。フライトマップを見るたびに、雲を隔てて今まで画面や教科書越しでしか知らない国や場所、土地や暮らしが足元にあると思うと不思議な気分がしました。

年明けから曇りの日々が続いていたようで、分厚い絨毯のような雲を突き破って着陸しました。ずっとこんなお天気だったらしんどいなと思っていましたが、到着の翌日から今日までずっと快晴です。晴れた日の街は雪に儚い日光が反射してキラキラ輝き、まさに絵本で見た景色のようです。こちらでは朝9時ごろに日が昇り、16時ごろには日が暮れます。時計を見ていないとついつい寝坊してしまうし、夜更かししてしまいます。でも、普通に朝起きるだけで早起きしたような気分がしてオトクです。

オスロはコンパクトな街で、都心部は端から端まで歩いても30分もかからず、そこから電車で10分ほど行けば自然に囲まれた場所に出られます。都会の便利さと自然の美しさの両方が存在する居心地の良い場所です。ノルウェーは今年、例年以上に寒さが厳しく、オスロは昨日マイナス30度を超えて記録を更新したそうです。外に出るとまさに冷凍庫の中にいるような気分です。大きいスノーブーツを用意してきたのにも関わらず少しバスを待っているだけで指先が痛いぐらいに冷えてしまい、重量を気にして靴下に貼るカイロを持ってこなかったことを激しく後悔しています。が、今のところ生まれて初めて経験するこの寒さをとても楽しんでいます。

英語が普通に通じるとはいえ、やはりほとんどの表記はノルウェー語です。当然まったく分かりませんが、この一週間で駅のホームの電光掲示板に書いてある「nå」が「now」だとか、レジで言われるkriなんちゃらという言葉が「レシート」だとか、状況と雰囲気で、暗号を解くようになんとなく意味が分かっていくのが面白いです。と同時に、ほとんど日本語しか通じない日本に住む外国人は、考えている以上に大変な思いをしているのではないかと感じました。

ホームシックになるかもしれない、と思いましたが、案外まださみしくはなっていません。でも、インターネットがなかったらきっと泣いていただろうと思います。インターネットがなかったら空港から寮に行くこともままならなかっただろうし、インターネットがなかったら街中にあふれる見知らぬノルウェー語におぼれていただろうとおもうと、以前とくらべると海外の難易度は格段に下がったのだろうなあと思いを馳せました。

オスロの駅前のショッピングモールにNeo Tokyoという日本の食料品店があったり、寿司屋がいたるところにあったり、トヨタや日産や日立の車が走っていたり、ルームメイトがキッコーマンの醤油を持っていたり、キャノンのプリンターがあったりと、日本の存在を感じるものをいたるところで目にして嬉しいようなびっくりするような、何とも言えない気分になりました。

ルームメイトは5年ほど滞在している中国人の男性と、同じく交換留学でやってきたドイツ人の同い年の女の子、そしてまだ会ったことはありませんが帰省中のチェコ人の女性です。4人で1つのキッチンと2つのバスルームを共有しています。今のところ、うまくいっています。二人ともとても親切で、入居初日私がブレーカーを落としてパニックになっていたら助けてくれたし、英語が得意ではないと伝えるとゆっくり話してくれます。中国人のルームメイトは今まで暮らしてきた中で私がはじめての東アジア人だそうです。お土産で持ってきた抹茶味の八ツ橋をあげると二人とも「悪くない」と言っていましたが、ドイツ人は明らかに気を使っていました。

オスロ日本人補修校のボランティアに応募して、再来週面接に行くことになりました。日本にルーツを持つ子供たちが、日本の文化を忘れないようにとか日本語が使えるように（これを「継承語」というそうです）という思いを持つ保護者によって運営されている学校で、毎週土曜日の午前中に小学校の教室を借りて、在外外国人の子供たちに大使館を通じて文部科学省から配布される教科書を用いて国語と算数を教えているそうです。今まで大学で在日コリアンの生活を、ハワイに行ったときは移住した日本人・日系人の文化を学んできましたが、今度は現在進行形で移民として海外で生活する日本人について学びたいとおもっています。スーツケースの4分の1という貴重な容量を割いて持参した着物と扇子と手ぬぐいが役に立ちそうです。

昨日は留学生対象のレセプションに参加しました。様々な国の人と話しましたがドイツ人と韓国人が多い一方でアフリカや中東から来た人はほとんどおらず、また、アジア人はアジア人同士で話す傾向があると感じました。オスロ大学に阪大からの留学生が他にいるのか把握していなかったのですが、このイベントで法学部の3回生と人間科学部のM2の、2人の阪大生を見つけて一気に心強くなりました。M2の阪大生との帰路、マイナス22度の冷気に顔面を凍らせながら彼女が「なぜこんな寒いところにノルウェー人はわざわざ住んでいるのかと思うけど、地震多いのに日本に住んでるのと同じことなんだろうな」というのを聞いて何かが腑に落ちるような気分がしました。日本学を学ぶ日本人としてこの一年をかけて自分の国とは何なのかについて少しでも考えを深めようと、目的を再確認することが出来ました。

来週からOrientation Weekが始まるのでまた新しい経験を重ねていけると思うと楽しみでしょうがないです。