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乱痴気座のサーカス。 2024.04.27 北海道コンサドーレ札幌vs湘南ベルマーレ マッチレビュー

開始時の立ち位置と嚙み合わせはこちら。

開始時の立ち位置
各ポジションの噛み合わせ
札幌の保持時移動後

■試合の振り返り

 大型連休初日の札幌でキックオフ。湘南は前節神戸戦からスタメンを複数名変更。大野に代えて大岩、畑に代えて杉岡、茨田に代えて奥野、石井に代えて平岡が名を連ねた。敗戦したルヴァンカップ秋田戦に引き続いて出場するのは奥野、杉岡、大岩、髙橋。一方の札幌は週半ばのルヴァンカップはなく(先週沼津と対戦済み)、前節広島戦から岡村に代えて中村、菅が外れて中盤の宮澤がDFラインに移動。中盤に前線にいた駒井が移動して、1トップに鈴木武蔵が復帰した。

 試合の立ち上がりから湘南は身体が重いのか、札幌が主導権を握る。2トップが前から規制をかけようとするも、GK菅野を交えたバックライン4名を抑えきれず前進を許す。鈴木武蔵へのフィードを軸に札幌が湘南陣内に押し込む中、とうとう23分に決壊。右サイドを突破され、マイナスのボールに青木が反応。ボックス際あたりから右足でニアサイドを打ち抜いて札幌が先制する。続く時間もボールを持ってもうまく前に進められずカウンターを受ける状態で、平岡がルキアンとその他の選手の間を埋めようと一生懸命走っていた。そんな努力も虚しく42分にコーナーキックから近藤が頭で合わせて追加点。2-0の札幌リードで前半を折り返す。


 ハーフタイムで湘南は2枚変更。奥野にかえて山田、池田に代えて福田が投入された。札幌は前半終了間際に負傷していた宮澤に代えて家泉が入る。
 2点を追いかける湘南だったが、続く得点は札幌。再び青木がボックス外から右足を振り抜き、今度はファーサイドへ巻くように蹴り込んだ。54分で3-0、湘南としてはかなり厳しい試合展開となる。


 まずは1点返すところから始めたい湘南は選手交代を続けて敢行。61分、平岡に代えて石井、66分は阿部に代えて畑。このタイミングでシステムを4-4-2から3-5-2に変更。杉岡・ミンテ・大岩のDFライン、石井・山田・髙橋の中盤、左サイドに畑、右サイドに鈴木雄斗、2トップがルキアンと福田。
 すると67分、ルキアンが右サイド深くでボールを受けて馬場を背にして反転。前を向いてゴールに迫ってクロス。左サイドからゴール前に走り込んだ畑が合わせて1点を返す。畑はプロ初ゴール。

 札幌は1点返された後に選手交代。71分、スパチョークに代えて髙尾、鈴木武蔵に代えて小林。守りに入る様子ではないが、ラフなボールを収められる武蔵がピッチを去ったことで札幌は陣地回復する術を自ら手放すことに。湘南も77分、髙橋に代えて茨田。

 85分に生まれた追加点はその茨田のパスから。ボックス手前から柔らかいクロスをあげると、ファーサイドで大岩が競り勝ち、最後に詰めたのは福田。勢いよく頭から飛び込み、菅野の鼻先でコースを変え1点差とした。
 ドラマの最後はアディショナルタイム。6分のうち3分が過ぎたところのコーナーキック。杉岡のキックを茨田が頭で逸らし、雄斗が右足で蹴り込んで同点弾。湘南が3点のビハインドを追いついた。

 勝点6同士の下位対決は両者痛み分け。続く試合は中5日でアウェイ鹿島、その2日後にホームで鳥栖と対戦する。



■雑感

 3点差を追いつく後半の戦いぶりと、前半の体たらくの差に頭を抱えてしまうようなゲームだった。積極的にボールへ関わろうとする山田、茨田、豊富な活動量でチームの推進力となった福田、石井、畑の投入と3-5-2へのシステム変更で流れを引き戻した…という見方もできるが、本来チームが持っているべき活動量と勝利への意欲を補充しイケイケドンドンで手にした結果であり、駆け引きや戦略といった話ではなかった印象である。


 日程の問題や選手層の薄さなどはあれど、前半は互いに協力する意識が希薄であった。出し手の都合で送られるパス、距離と角度が悪いサポート。相手の守備に影響を与えるランニングはほとんど見られず、なんとか味方同士を繋げようとする平岡の姿が記憶に残っている。阿部もフリーマン的にポジションを移動していたが、FWが降りることで前線の枚数が足りなくなってしまっており、それを埋める動きまた見られなかった。
 要はチームとして体をなしておらず、監督とスタッフ陣は何を掲げてキックオフを迎えたのか読み取ることはできなかった。おそらく神戸戦までの文脈を踏襲していたと思われるが、味方同士を助けようとしないピッチの選手達に対し、不満げな素振りを見せなかったのは不思議である。

 そして畑投入以降(武蔵交代後とも言う)の同点劇。結果はポジティブ寄りだが、監督としては悩ましい材料になることだろう。というのも選手たちが気持ちと勢いを持って掴み取った3ゴールは、今シーズンのチームが目指していた方向性とは異なる文脈から生まれた。そのうえ直近数試合のなかでは選手たちが一番躍動していたようにも思え、こちらのやり方でいいのでは?と選手(やサポーター)が考える可能性が高いと思われるからだ。


 つまり目指している理想とする戦い方と、力を発揮しやすい現実的な戦い方の塩梅を調整するマネジメント面でかなり難しい選択を迫られていると思われ、鹿島、鳥栖との連戦をどのように迎えるのかは気になるところ。
 監督が目指す方針の先は地道な強化に繋がっているとは思うが、湘南の選手たちが溌剌とプレーする姿をもっと見たいなと思う次第である。


試合結果
J1リーグ第10節
北海道コンサドーレ札幌 3-3 湘南ベルマーレ

札幌:青木(23',54')、近藤(42')
湘南:畑(67')、福田(85')、鈴木雄(90'+3')

主審 西村 雄一

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