一生許せないことの話

小学3年生の9月。
夏休みの工作を自分で考えるのが面倒で市の図書館にあるパソコンで「図画工作」と調べようと「Z」を入力するとパソコンの前打ったやつがでる機能に「女子高生のおっぱい」と出てきてそのまま検索するか葛藤した思い出を引きずったまま2学期を迎えていた。
9月下旬に行われる運動会に向けた練習などが盛んに行われており、その中に6年生が作ったその時流行っている曲を替え歌にした応援歌を覚えさせられる謎の文化があったのだが6年生が教えに来てくれる日に風邪をひいて学校を休んでしまい、応援歌を6年生ではなく担任の先生に教わる事になった。
もう50歳に差し掛かるであろう担任のおばちゃん先生はクラス全体の練習が始まる前に「齊藤くんに教えてあげよう」という形式でクラスみんなの前に僕を立たせた。
当時の僕はクラス内でも飛び抜けて明るい少年で授業参観にて行われた英語の授業でALTの先生に向けて「Yes we can!」と突然放つ程のハジけっぷりを見せていたので皆の前に立つということは嫌ではなかった。
担任の先生がまず替え歌のリズムを把握してもらう為に元の曲が「アセロラ体操」であることを僕に告げた。

アセロラ体操
アーティスト:ハンバート ハンバート
リリース:2010
放映期間2010〜2012

ニチレイアセロラドリンクのTVCMソング、またはそこで踊られている踊り。
CMでは真っ赤な服を着たおばさん数名が小気味よいリズムに乗り体操のようなダンスを踊っている。

しかし当時の僕はテレビを観てはいたものの、CMの時間は他のチャンネルを観たりその辺にある本に目を通して時間を潰していたためテレビのある家に住む人なら1度は見た事のあると思われる「アセロラ体操」を知らなかった。
ここで「知っている」と見栄をはる必要もなかったので素直に「知らないです」と言った。

「ふざけるな!」

帰ってきたのは予想もしなかった担任の先生の怒号だった。
「アセロラ体操を知らないわけないでしょう!」
こちらから反論を返す間もなく立て続けに怒鳴られる。
『TVCMの無知を叱られる』という経験は人生で初めてだった。
恐怖、混乱、怒り、様々な感情が涙に形を変えて溢れ出した。
「泣いて逃げるな!」
回避しようの無い理不尽に対する涙までも咎められる。40歳も年の離れた子供にすることとはとても思えなかった。
その後僕はなぜか「アセロラ体操を知らなくてすみませんでした」と先生とクラスメイトに謝らされた。
それから僕は担任を許していない。
10年以上経った今も心の片隅で恨みを抱き続けている。

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