50代のこしかけ ‐ 第3話

【第3話】写真がキライになる理由


酷い。ひどすぎる。
とてもじゃないが、誰にも見せることができない門外不出の作品……それは、写真の中の「私」である。

先日、ちょっとした理由から社内報なるものに写真が載ることになり、自分の近くに座っている同僚の松木さん(仮名)に、スマホで写真を撮ってもらえないかと依頼した。
「何枚か、撮りますね~」
気軽に応じてくれた松木さんが仕事をしている私をバストアップで5、6枚撮ってくれたのだが、どれもびっくりするぐらいひどい顔で写っている。
「どうですか?」
「………」
どうですかもこうですかもない。ひどすぎて、とてもじゃないが使えない。
ひとまず御礼を言って、今度は別の場所で別の同僚の珠子さん(仮名)に頼んでみた。慎重な性格の彼女は、角度を変えたり、縦横を変えたりして合計20枚ほど撮影してくれた。これだけあれば、どれかマシなのがあるだろうと確認したが、「いやいやいや、誰ですが、これ」のレベルでひどい。

「ひどい」ってどういう意味?と思われるかもしれない。
私の言う「ひどい」とは、「自分が毎日鏡などで見ている自分の顔を20歳ぐらい老けさせた感じに見える」という意味である。

そう、写真の中の私は本当におばさんで、老けている。
顔の輪郭は崩れ、酔って書いた図形と化している。
ほほも目も垂れて、ちょっと外に放置しておいたアイスクリームのような溶けかけた感が否めない。いっそ全溶解ならまだしも、溶けかけっていうのはもっとタチが悪い。

私って、マジでこんな顔してたのか?
毎日化粧するときに見ている顔と全然違うんですけど?
もしかして、みんなはこの写真の中の顔を日々見ていたということか?
今さら気づいたの?と言われるかもしれないが、いやいや、私も写真は実年齢が表れるということは知っていた。知っていたというより、そういうもんだと思っていた。ただ、それが今回現実化して予想以上に驚いてしまったというわけである。

どうして写真の中の自分はもっと老けてみえるのか?
検索すると、同じようなギモンを呈している方が多くいらっしゃるようで、回答もたくさん掲載されている。そういうことね、と納得するものが多かったが、普遍的絶対的理由なるものは見つけることができなかった。総じて「自分の目で見るときは、顔とかだけでなく動きや表情、体形やファッションなど総合的に見て判断しているのに対し、写真はその他考慮材料がなく平面的な絵柄で見るので自分が感じているより老けて見える」ということのようだ。
これってつまりは写真が正しくて、自分が見ているものは自分フィルターがかかっていて何割増しで見ている「虚像」ということではないか???

結論。
写真には二度と映らない。死ぬまで写真は撮らない。これに限る。

追伸。
社内報向けの写真は、がっつり加工した。
無料でも有料でも、今は写真加工アプリがくさるほどある。
アプリ修正できる時代でホントよかった。

第4話につづく……。

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