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~キャリアストレッチという考え方~

キャリアストレッチという言葉を知っていますか?
これは慶應義塾大学総合政策学部教授・花田光世氏の著書「働く居場所の作り方」で紹介されている考え方です。
 
普段、キャリアと言えば「アップ」という言葉が当たり前のように使われます。
上司との定例面談、転職、企業……キャリアアップというのは前向きな事・向上心がある事の代名詞と言えるでしょう。
その言葉の通り猛然と自分のキャリアを上り詰める事が至上の人もいるでしょう。
しかし、少し立ち止まって考えてみてください。上へ上へ、身体も神経もすり減らして他人に負けないように、自分が停滞しないようにぎゅうぎゅうに仕事をして予定を入れてがんばりつづけていける人ばかりなのでしょうか。
人生は想定外の連続です。
結婚、出産、育児、介護、社内での人的トラブル、失業、転勤……公私共に考えだしたらキリがありません。
状況の中でがんばりたくても仕事だけに全力を注げない人。
世間が仕事をがんばれと言うからそうしてきたけど、本当は仕事以上に充実した趣味などがありそちらに重きをおきたい人。
形はそれぞれですが一貫して取り組む事が難しい。そんな時が誰しもくるのではないでしょうか。
そんな時に思い出して欲しいのがキャリアストレッチングです。
これは「一貫性より柔軟性が大事」という考え方です。
 
一つの価値観、一つのキャリアを追い求め報酬や役職、名声を追い求めるのがキャリアアップですが、考えてみれば、会社生活は30年以上続きます。その間同じ価値観で同じ仕事をしてそのキャリアの事だけ考える人がどれだけいるのでしょうか。
年齢を重ねていくと実感する事だと思うのですが、年齢で能力を低く見られる・扱いづらいと思われる(採用範囲から外される)事は日本の転職市場では常識のようになっています。
経験が増えるのに価値が下がる、そういったジレンマに苦しむ方もいると思います。
同じ会社にいたとしても周囲は変わるものです。
自分以外の物事は変えられません。変わる周囲との軋轢や価値観の違いも新卒の頃より浮き彫りになるでしょう。
キャリアストレッチングは、成功する事だけを良しとしない考え方です。
上昇志向以外の生き方、例えば
・年収が下がってもプライベートの時間を増やす/気の合わない人のいる職場から離れる/新しく興味を持った仕事に飛び込んでみる。
・結婚、出産、介護など、人生の節目に自分の一番大切なものに変化が起きたのであれば働き方を変える。
・大企業に勤めているが満員電車に乗るのが苦痛だからフリーランスになる。
 
などです。
キャリアアップの生き方を縦軸と考えるなら、キャリアストレッチングは横軸を広げていきいろいろな価値観を同時に持つ事です。
ひとつの価値観からの解放というようにも考えられます。
多様性の時代と言われる現代。「地位と名声」という言葉ももちろん否定はできません。
ただ、それだけが成功と決めつけるのではなく、なんだか違うな。と違和感を感じる時はあらためて内省の時間を取って自分の考えを整理する。
変化には勇気と決断が必要ですが、そうやって人生の節目/自分や周りの変化に合わせて自分の考えをストレッチするようにほぐしていくことが、人生の充実には必要なのではないでしょうか。