見出し画像

シン・オーディオ・インターフェース

前書き



どうも作編曲家の田辺恵二です!
読者の方の中には我々音楽家特に編曲家(アレンジャーとも呼ぶ)が使う道具のことについて全く想像もつかないという人もいると思いますが大きく分けてピアノなんかの楽器を使いながら各パートの譜面を書いてゆく(大御所や大先輩)タイプと現在はほとんどこのタイプだと思われるコンピューターの専用アプリ(DAW)と使って実際の音に近いリアルな音で構築してゆくタイプがあります。

編曲に必要なもの

コンピューター(Mac/Win)
DAW 音楽をデータ化して構築するアプリ
プラグイン(ピアノやドラムの音がリアルに鳴らせたりするアプリ)
オーディオ・インターフェース(PCからの音の入出力するための専用の箱)
モニター・スピーカー
ヘッドホン
マイク

まあまあ他にもありますが大きく分けるとこんな感じでしょうか?で約25年ぐらい前からPC(内)で完結する形がメジャーになりマイクからPC(DAW)に録音してその音を聴くオーディオ・インターフェースというものが音決めや前述したマイクで録られる音質にも関わってくる重要なアイテムとなりました
PCの性能と共にオーディオ・インターフェースの音質も上がってきてその時代の定番や流行りがあって自分にあったものをチョイスするという感じで私も何台も使用してきました、その遍歴を書き始めると1万文字ぐらい行ってしまうので今回のnoteでは数年振りにリプレースしたRME ADI-2/4 Pro SE のことについて約1ヶ月使用したレビュー的な記事を書いていきたいと思います

RME ADI-2/4 PRO SE

私とRME


RMEはPCでデジタルオーディオを扱うようになった20数年前からあった定番メーカーだったりします実際にSteinberg Cubaseとバンドルして売り出していたりで当時鉄板のメーカーだったりします、そんな私も二つ前のオーディオ・インターフェースに同社のUFXという機種を使っていました、選んだ理由としては少し前にリプレースしたDAW PreSonus StudioOne のレンジの広さを最大限に活かせるものをということでRME UFXにたどり着いたという感じです、当時のイメージは音の画角が急に広くなって音質もどちらかと言えばフラットで自分で味付けができるそんな音だったので最初の方自分がアレンジを組み立てていってその音に慣れるのに時間がかかった記憶があります(結果よかったのですが)

2014年ごろ

さてそこから10年が過ぎ新しいオーディオ・インターフェースを選ぶ時期がやってきました!なのですがプロスペックの機種を選ぶと円安や世界的に部品代や半導体の高騰化で1.5〜2倍に価格が跳ね上がったものもあります、そのほとんどが現在の私の希望に沿ったものではないということに気づきました

私が求めるスペック

まず現在の私の仕事の進め方としてはPC内でアコースティック楽器のシミュレーションも含めたアレンジを完成させてその後に歌やギターをダビングするというものがほとんどです、ドラムやブラス/ストリングス等は商業スタジオで録音します
オーディオ・インターフェースには複数のインプット/アウトプットがあるものが存在しましす物理的や拡張端子を使って94イン/94アウトなってものもあるのですが現実的にそんなに同時に録音することもありませんし、そんなにたくさんのスピーカーを繋げる予定もありません・・・
ですので8イン/8アウトでも多く同時に録ったとしても2イン、アウトに関しては最低でも4つぐらいあるといいという基準ができました
でここで重要なのでは物理的なイン/アウトがあるということはAD/DAコンバーターというアナログ←→デジタルの変換をする部品がたくさんあればあるほどそしてマイクの微量な音量を引き上げるマイクプリアンプの数も価格を引き上げる要因になるということです、よくあるタイプは8イン/8アウトなどではないでしょうか?
ですのでまとめると高音質なAD/DAコンバーターがついた2イン/2アウトのオーディオ・インターフェースで良いという答えが見つかりました。
さらに言えばマイクプリアンプというのは本体についてあるものもありますが外部でまた別に好みのものを使うことがほとんどなので(とは言えRMEのマイクプリはかなり質がよかったりします)ラインインでOK

では何を選んだ?

もう答えは最初出てきているので勿体ぶることもないのですがRME ADI-2シリーズなのでは?という灯台下暗し的な考えが浮かんできました
ADI-2シリーズはどちらかというと近年流行りのPCオーディオと言われるPCからの音楽ファイルを聴くための機材としてそのシェアを確固たるものにしているしそちらの方が有名な機材だったりします、私もその印象でしたし自分の環境に合うとは夢にも思いませんでした

どの機種が自分にあっているのか?

現在のADI-2のラインナップは3つありまして

ADI-2 DAC FS
ADI-2 Pro  FS R Black Edition
ADI-2/4 Pro SE

ADI-2 DACはDAコンバーターしかないので(インプットはない)選択肢からは外れます、なのでまずは輸入代理店のシンタックス・ジャパンさんにお願いしてADI-2 Pro FS R BEのデモ機をお借りました
自分のシステムに繋ぎその音を聞いてみるともう笑うしかありません!!
あのRMEの伝統とも言えるフラットで画角の広い音はそのままに奥行きまで追加されている!!そしてアナログ感というか厚みがある音なのですよ、これは笑うしかありません・・・うーんすごいな時代の進歩は、ということでこれは文句なしにこの機種だなと思いつつ一週間ぐらい実際の作業に取り入れてデモしてみました
そんな私の環境で大事なのは作業部屋は防音施工してあり歌などを録るブースがあるのでそことのやり取りをするキューボックスと言われるシステムを構築しないといけません、で今まではボーカリストが歌いやすいバランスにして聞いてもらっていました。つまりコントロールルームでのバランスも歌が大きなバランスで聞いているわけです、まあ慣れているのでそれでもいいのですがオケとの混ざりとかを確かめながらできたらそれはそれでいいと思いADI-2のデジタルアウト使えないか?と仕様をしらべてゆくとマルチチャンネルモードというものがありアナログ/デジタルを含めて8チャンネル出せるモードがあるということに気づきではブースに置くキューボックスはデジタルインのあるDACで良いのでは?というそしてPreSonus Studio Oneにはメインのフェーダーとは別のモニター用のフェーダー(キューミックス)という機能がありADI-2のデジタルアウトから出力すると解決しそうでした。

独立してバランスを取れる
StudioOneのインアウト設定画面
ブースにおくDAC

ただADI-2の設定がちょっと難しく(一般的なオーディオ・インターフェースと違って)時間かかりましたが無事うまくいきました

さてではADI-2 Pro FS R BEを導入しようと思ってシンタックス・ジャパンさんのHP見ているとこれの上の機種ADI-2/4 Pro SEと何が違うのか?物理的な3-4アウトがついていることのほかに何があるのか聞いてみました(実際10万程度違います)すると・・・「ADI-2/4 Pro SEはこのシリーズ最上級のAD/DAコンバーターです」と、あ、では一番上にします!!
ということでADI-2/4 Pro SEに無事決定しました

実際に使ってみて

デモではテストできなかったことを機材が届いて実際の環境で使ってみました
まずRMEのオーディオ・インターフェースのシリーズ UFX UCX BabyFaceと大きく違うのはインアウトを自由にパッチできるRMEのトレードマークとも言える「Total Mix」なるものがないのです、Macで使用する場合は標準のオーディオ・ドライバー「Core Audio」経由になるのでシンプルと言えばシンプルでトラブルも少ないと言えましょう

Total Mix

その代わりにADI-2 Remoteなる全設定ができるPC/iPadアプリがあって前述した設定がめんどください(とは言ってない)のがこれで解決するわけです

ADI-2 Remoteアプリ画面

ループバックと言われる機能PC内でなっている音声をもう一度PCに戻す機能というのがあるのですがこれもこのアプリで設定すると簡単だったりして
そして重要な音質ですがデモで借りていたADI-2 Pro FS R BEとの聴き比べができてないのですが代理店の方は一聴してわかりますとのお言葉に安心して使用して1ヶ月色々わかりました。

IPS液晶パネル

IPS液晶パネル

前面にあるIPS液晶パネルには様々な情報が表示できてその一つでメインアウトの周波数出力を表示できるのです、この機能はRME伝統のDigi Checkという測定用のアプリが別に用意されているのですがそれに準拠しているそうで私は専用のアナライザーのアプリを立ち上げてバスドラムやベースの音作りをしていたのですが小さいながら視認性と反応がいいのでこれも活用しています

専用リモコン

専用リモコン

ヘッドホンアンプ

バランス対応ヘッドホン端子

あまり実際の環境ではヘッドホンでの作業はしませんがここ最近専用のヘッドホンアンプを何台か聞いてみてADI-2のヘッドホンアンプの良さを感じました!出力の大きさや対応するヘッドホンの種類の多さもあるのですが何よりスピーカーの音から聴く音のように密度が高く聞きやすいというのもあります高級ヘッドホンによくあるバランス出力にも対応していますヘッドホンアンプのこだわりは開発者のマティアスさんのYouTubeをご覧ください

DIM機能

作業をしていると聞いている音を大きくしたり小さくする必要がありそのためにモニターコントローラーと呼ばれるボリュームを調節したり音をミュートしたり決まった音量だけ下げるDIMという機能があったりする外部の専用機材が必要なのですがこのリモコンを使うことで解決しました!さらに優秀なのは音量を一定の値だけ下げるDIM機能なのですが元に戻すにはもう一回押せばOKでここからが親切だと思ったことがあり普通DIMされた状態からボリュームの上下ボタンを押すとDIMされる前からの音量上げ下げになって一度爆音に戻ってからというのがほとんどなのがDIMで設定された音量からの上下なので大きい音にびっくりしなくて済む!!言ってること伝わってますか???のでお気に入りの機能です

これからやりたいこと

ADI-2/4 Pro SEの基本仕様として

  • ハイエンド・スタジオ・クオリティの32 bit / 768 kHz対応マスターAD/DAコンバーター

  • PCM 768 kHz / 32 bit (int)、DSD 11.2 MHzの録音・再生に対応

  • サンプルレート・コンバーター(AES/EBU、SPDIF入力

  • ジッターを極限まで抑制し原音に忠実なAD/DAコンバージョンを実現するSteadyClock FS

等々色々あるのですがメインで使用しているDAWのStudiOneが32bit/768kHzに対応しているので是非音のいいコンサートホールでピアノとバイオリンのデュオの録音してみて768kHzの世界を味わってみたいと思います

最後に

我々作編曲家からするとオーディオ・インターフェースの選択肢に入らないであろう高音質AD/DAコンバーターですが工夫すればDAWの環境に取り入れられてストレスのない伸びやかな音を手に入れられると考えればADI-2シリーズはアリよりのアリではないかと考え実際に使ってみて是非おすすめしたい機材ではあります。
もちろんミックスエンジニア、ミックス師の方にはさらに最適解だと思います


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?