見出し画像

ご命日とお線香

ベルテンポを創業して21年になります。

創設期の頃から20年近くに渡り、旅をご一緒させて頂いている方もいますが、鬼籍に入られる方も、残念ですがいらっしゃいます。

会社を始めたばかりの頃は、右も左も分からない状態で試行錯誤の繰り返しでした。そんな時、いつもお客様が助けてくれました。

「家族が安心して送り出せる会社になってね」
「財布を預けて細かいことを気にしなくても楽しめる旅がいいわ」
「ある程度、任せて寄り掛かるって、私たち(お客)の側にも必要なのよ。」
「福祉施設の職員に、『おばあちゃん』て言われたのよ、私は『あなたのおばあちゃんじゃありません』って答えたわ。失礼よね。」


旅先でお客様が発してくださるひと言、ひと言が値千金の言葉。
お客様と雑談しているだけなのに、私があまりに感激してすぐにノートを取り出し、メモを始めるからお客様はいつも大笑いしていました。

人生の大先輩に対しては小手先のテクニックなど通用しません。慇懃無礼なんてあり得ないですが、逆に馴れ馴れしいのも違う。

80歳も後半になり、視力がかなり落ちてきていたので
私はいつもJRの鶴見駅改札で待ち合わせて旅をしていました。帰りも鶴見駅のタクシー乗り場までお見送りしていました。

何十回、旅をご一緒したことでしょう。

いちばん遠くまで出かけたのはおそらくカナダ・プリンスエドワード島。成田からトロントへのフライトが遅れ、
予定のシャーロットタウン行きに乗り継げず、深夜のハリファックスへ飛ばされてしまいました。午前1時をすぎた真っ暗闇の雨降るハリファックス空港で半泣きになりながらホテルの手配をしたのを思い出します。

いちばん近くの旅は、最後の旅になった、皇居一般参賀。息子さん、お嫁さんとご一緒してくださり、久しぶりにお会いしたので50年ぶりに再会した恋人のようにハグしたのを覚えています。

一年前の今日、お嫁さんからメッセージがありました。

「お義母さんが今日、旅立ちました。あちこち連れて行ってくださり、ありがとうございました。」

戦後の焼け野原から日本を復興させた世代の方と寝食を共にしながら、戦時中から戦後の話を旅行中にどれだけ聴かせて頂いたかわかりません。多分、ご家族よりたくさん聴いていると思います。

今年はコロナであっという間の一年でしたが、昨年のメッセージを思い出して、京都癒しの旅の下戸さんにお願いし、セレクトショップにラインナップして頂いたお線香を送っていただきました。

この仕事をしていると、いつか必ずお別れが来ることを覚悟しなければいけないこともあり、ちょっと心が切なくなります。それでも、モノと違って、旅の思い出は永遠に残ります。

形のない思い出が私たちの財産です。

合掌


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?