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♂と♀ ふたりがいる意味 中編

こんばんは。id_butterです。

ふわふわじゃないスピリチュアル学 の第5回で、♂と♀ ふたりがいる意味 前編 の続きです。

前回、神と呼ばれる大きな集合意識から個別のエネルギーが意識を持つようになり人が造られたというところまで話を進めた。

でも、今回わたしが知りたかったのは「男性と女性という陰陽の存在がそれぞれ必要なのか」ということなので、続きが必要になってくる。

個性を持つ一人ひとりの存在にどうして「男性」「女性」という色がついたのか、あるいはつける必要があったのかということに進みたい。

男性と女性の暗喩が出てくるのは、旧約聖書でいうカインとアベルの部分らしい。

カインとアベルは、旧約聖書『創世記』第4章に登場する兄弟のこと[1]。アダムとイヴの息子たちで兄がカイン(קַיִן)、弟がアベル(הֶבֶל)である。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教などの神話において人類最初の殺人の加害者・被害者とされている。
〜Wikipediaより引用〜

カインとアベルは同じようにエヴァから生まれた兄弟だけれど、神からの扱いが異なる。

アベルは羊を飼う者となり、カインは土を耕す者となった。
日がたって、カインは地の産物を持ってきて、主に供え物とした。
アベルもまた、その群れのういごと肥えたものとを持ってきた。主はアベルとその供え物とを顧みられた
しかしカインとその供え物とは顧みられなかったので、カインは大いに憤って、顔を伏せた。
正しい事をしているのでしたら、顔をあげたらよいでしょう。もし正しい事をしていないのでしたら、罪が門口に待ち伏せています。それはあなたを慕い求めますが、あなたはそれを治めなければなりません」。
カインは弟アベルに言った、「さあ、野原へ行こう」。彼らが野にいたとき、カインは弟アベルに立ちかかって、これを殺した。
〜創世記より引用〜

神殿伝説と黄金伝説では、この兄のカインに男性性を、弟のアベルに女性性を見出している。

「アベル」はギリシア語の「プネウマ」を意味し、ドイツ語の「ガイスト(霊)」を意味します。そして、その性的な意味を考えるなら、それは明らかに女性的な特徴を持っています。それに対して「カイン」は、ほぼ言葉通り「男性」を意味しています。
〜神殿伝説と黄金伝説(ルドルフ・シュタイナー)より引用〜

ここでいう「男性」「女性」は、一般的な人間の定義とは異なる。
わかりやすいように対比で例示してみる。

▼ 男性性
 ・現実、肉体、物質、財産など形あるもの
 ・火、太陽
 ・新たなものを生み出す、作り出す、自らで獲得する、力
 ・陰陽の「陽」
 ・地上、土
 ・科学、芸術
 ・自立的

▼ 女性性
 ・精神世界、エネルギー、心など見えないもの
 ・水、月
 ・与えられる、受け容れる、信じて委ねる、器
 ・陰陽の「陰」
 ・宇宙
 ・オカルト、霊的な叡智
 ・依存的

現代の人間は上記のように相反する「男性性」と「女性性」が同居している存在。女性もときに自分の中の「男性性」を発揮して働いているはずだ。

アダムとエヴァの段階では1が2に分離したものの、それぞれの1の中身は同じでただ別個に存在するだけだった。
それがこのカインとアベルの段階になると、2つの存在に「男性性」「女性性」というそれぞれの性質が付与され、明確な対比をもって表現される。

「土を耕す者」である兄カインは土、つまり物質界で生きる男性性を象徴している。「耕す」は努力して新しいものを作り出すということの暗喩。

この段階でわたしにはいくつか疑問が湧いている。

・なぜ先に生まれたカイン(男性性)は神に愛されなかったのか。
・なぜ後から生まれたはずのアベル(女性性)の方が起源である神に近い存在なのか。
・なぜ「土を耕す者」(男性性)に対して、「羊を飼う者」(女性性)なのか。

順番に読み解いていきたい。
創世記では、以下の通りカインとアベルは兄弟という記述しかない。

人はその妻エヴァを知った。彼女はみごもり、カインを産んで言った、「わたしは主によって、ひとりの人を得た」。
彼女はまた、その弟アベルを産んだ。
〜創世記より引用〜

が、薔薇十字会に伝わるものとして別の神話があるようだ。

エロヒーム自身がエヴァと結ばれ、カインが生まれました。
さらに別のエロヒームまたはヤハヴェあるいはエホヴァは、アダムを創りました。アダムもエヴァと結ばれ、この夫婦からアベルが生まれました。
つまり、カインは神々直系の息子であり、アベルは人間として創られたアダムとエヴァの息子なのです。
〜神殿伝説と黄金伝説(ルドルフ・シュタイナー)より引用〜

この神話だと、カインとアベルは異父兄弟となる。
これが、神ヤハヴェが、アベルが捧げた供物を受け取り、カインの供物を受け取らなかった理由であるというのがシュタイナーの主張。
同じ本の中から、カインについての記述だけ取り出してみる。

自分自身で努力してなにかを得る人、それはカインです。カインはチター演奏その他の諸芸術のための基礎を築きました。
(中略)
カインはすこし違いました。彼は自分自身の思考の産物で、神に向かおうとしました。それは、神にとっては全く未知のものであり、人間が自由の中で獲得したものでした。
カインは芸術と科学に向かって努力する人間です。しかしそれは神の血筋ではありません。
(中略)
カインにできることは、物質界での人間の労働です。
(中略)
カインはヤハヴェが直接命じて生ませた子ではなかったからです。
その結果、カインは弟殺しを犯しました。彼は、アベルを打ち殺し、ヤハヴェの共同体から締め出されました。そして遠い土地に行き、彼自身の一族の祖先になりました。
(中略)
例えば Τ(タウ)文字を発見したメトサエルや、青銅と鉄の加工を教えたとバル・カインのように、あらゆる芸術や科学を地上にもたらしたのは、カインの一族です。このようにエロヒームの直系から、芸術と科学の発展を担う人類が生じました。
(中略)
そうした(人間の努力で下から作り出される、激情や意思からあふれ出る)叡智は、別のエロヒームから直接生まれたカインの末裔に見られました。彼らはすべてを自分で作り出そうと努力する過酷な労働者たちでした。
(中略)
火についてよく知っており、その扱いを心得ている、カインの子孫、カインの一族です。ここで言う火とは、物質的な火ではなく、アストラル空間に燃え上がる火、激情や衝動、欲望のことです。
〜神殿伝説と黄金伝説(ルドルフ・シュタイナー)より引用〜

カインは、神から完全に離れ、自由になり、自分自身の努力で神の知らない新しいものを作り出そうとする存在。
火や鉄といった科学のすべてやあらゆる芸術はカインの末裔が発展させたものだ。物質的な豊かさで繁栄を追い求めてきた。
そう、今までの「土の時代」はカインの時代だったのだ。

カインがアベルを殺すのは、親離れのようなことかなと思う。
アベルは神から祝福された子なので、殺すことでカインは親である神から縁を切られる。それは「自立」を象徴していたのかもしれない。

先に生まれた兄カインは神から離れていってしまった。

また主なる神は言われた、「人がひとりでいるのは良くない。彼のために、ふさわしい助け手を造ろう」
〜創世記より引用〜

このようにエヴァは造られた。
女であるエヴァも弟であるアベルも後から生まれたものだ。
神から離れていった存在の助け手となるために、後から造られた。

なんのために。
いつか地上における体験を持った男性と神から授かった霊性を守り続けた女性が統合して神の世界へ還るためだろうか。
なんとなくそう思った。

だから、「なぜ後から生まれたはずのアベル(女性性)の方が起源である神に近い存在なのか。」という疑問はおかしくて、そもそも神から受け継いだものを守り伝えるために造られた存在なのだった。
地上に身を置きながら、汚されずに神に寄り添い続ける依存的な存在。

まあ、肉体を持った人間の子供を授かれるのは女性だけだから、そういう意味では生命(霊的存在、神の意志)を継いでいくのが女性の役割といわれたら、まあ妥当ではある。
生命としての基本形は女性だとも言われているしね。

カインがアベルを殺すっていう表現について、深読みしてみる。
人類が地上で繁栄すること、それは物質優位の社会になることと同義。
アベルの子孫は神の意志を継いでいくだけで、拡大しようとはしない。
一方、カインの子孫は火のような衝動や欲望、熱狂を持って、芸術や科学を発展させていく。その先にある社会は目に見えない存在、神を否定することが必然となる、そんな未来も最初から描かれていたんじゃないかと思う。
人間という存在が、一度神を否定し殺してなかったことにしてしまうこと。

アダムがさらにエヴァと結ばれました。そしてアベルの代わりにセトが生まれました。
〜神殿伝説と黄金伝説(ルドルフ・シュタイナー)より引用〜

アベルが殺されても、アベルの後継者であるセトが生まれてくることで、完全に神の意志が途絶えることはない。殺されることは「一旦表舞台から姿を消す」みたいな意味があったのかなと思った。

こんな風に、カインとアベルの話は、男性性と女性性だけではなくその関係性、対立の構図までもを表している。これもやはり、土の時代の話だった。

最後に、この疑問。
「羊を飼う者」であるアベルは、女性性を表す。
なぜ「土を耕す者」(男性性)に対して、「羊を飼う者」(女性性)なのか。

そもそも「羊」がよくわからない。

神はまた言われた、「地は生き物を種類にしたがっていだせ。家畜と、這うものと、地の獣とを種類にしたがっていだせ」。そのようになった。
神は地の獣を種類にしたがい、家畜を種類にしたがい、また地に這うすべての物を種類にしたがって造られた。神は見て、良しとされた。
神はまた言われた、「われわれのかたちに、われわれにかたどって人を造り、これに海の魚と、空の鳥と、家畜と、地のすべての獣と、地のすべての這うものとを治めさせよう」。
〜創世記より引用〜

明確には書いてないけど、羊は家畜だから神が創ったものなのだととれる。

羊飼いは、神に生命を差し出すために生命を取り上げます。羊の群れを育成するのではなく、ただそれを見守るのです。
(中略)
みずから努力して得た思考力を通して霊を獲得するのではなく、神自身の啓示として霊を受け取り、ただ霊を守るという霊統の典型なのです。
群れの番人、神が大地に移植されたものの番人、それはアベルです。
(中略)
アベルは霊を受け入れ、供物として最高のもの、例の最も高次の実りを捧げました。もちろん、神は喜びの眼差しを供物にむけました。なぜなら、それは神自身が大地に植えたものだからです。
〜神殿伝説と黄金伝説(ルドルフ・シュタイナー)より引用〜

供物は羊である。
(一旦本当の女性性とは?という議論は置いておく)
つまり、神っていう存在は自分が作ったものをそのまま守って大事にしてくれるからアベルが好きなんだ。
アベルらしさ、とかは要らない。
神から与えられたものに依存して(というと言葉が悪いな、信じて身を委ねて?)生きていくという条件のもとに豊かさが保証されている。
カインは、神に愛されていないから、過酷な労働を強いられる。住んでいた所を追われ、何でも自分で作り出すのは、そうしないと生きていけないからなのだった。
アベルはそれと逆。
神は依存的なアベルがかわいい、素直に自分のいうことを聞く子だから愛してる、そんな感じに見えるのだ。

そこに、そういった状態に、神が宿る。
何もかも信じきって身を委ねて安心している状態。

宗教として考えると、羊飼いというのは牧師を表すんだろうなと思う。
羊は信徒、そして羊飼いはその群れを導く牧師、つまり司祭あるいは聖職者を表している。
聖書は宗教のプロパガンダというのが表向きなのだから、神から一番大事な役目を仰せつかっているよ、と言いたいのは当然だ。

女性性というのは、神とつながっているということであり、神を信じ受け入れるという器的な性質のことであり、地上に降り立った神の分身のようなエネルギーのことであり、宗教そのものを表したりもするということだ。
地上は穢れている、という考え方が根底にあるから、神そのものが降り立つことはできない。あくまでも神への信仰の中に存在する、ということ。

ここまで考えてきて、最後にもう一個疑問が湧いた。
なんで男性性と女性性を暗示するのに、兄と妹ではなく、兄弟なんだ。
でも占星術の3ハウスと考えるとわかりやすいかもしれないと思った。
こっちもにわかなのでうまく説明できないが、ざっくり。

占星術にはハウスという考え方がある。
生まれた日時に、天体(太陽とか月とか冥王星とか)がそれぞれどこのハウスにあったか、で個人の生まれ持った性格や使命、運命を占う。
で、問題の3ハウスが表すのは兄弟やコミュニケーションなのだ。
1ハウスでは自分そのもの・アイデンティティしかなく、2ハウスでは他者を認識し比較することにより自分の持っているもの、親から受け継いだものを把握する。3ハウスは少しだけ歩きだす。他者、つまり兄弟のような仲間的存在が現れる。そして、コミュニケーションが必要になる。

とすると、カインとアベルの時代は、神から人間までのステップが12まであるとしたらその中の3くらいだったのではと考えてみたりした。
(ハウスは一周で1〜12まであり、人の一生を表すと言われている。)

で、ここまでがんばったんだけど、男性と女性とはそれぞれなんなのよということ、そして対立してきたところまでは理解できた。
でも、男性と女性が存在する意味って言われたらまだたどり着いてない。
神から分かれて、個性を持って、対立して、その後どうなるのか。
やっとおもしろくなってきたところなんだよ。

ということでまた次回に続きます。

最後にちょっとだけ感想。
旧約聖書って物語としてもおもしろいと思った。
アベルなんて次男の「いいとこ全部持ってくな」を地でいくし、カイン頑張ってんのに要領悪いよねも「長男感」がある。
神もなんか男っぽくて、依存的な甘える女が好きなんだ〜って、普通の男性と変わんないじゃん!とか。


ふたりとも色っぽくてすき。



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