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我が家の宇宙人が反抗期な件

こんばんは。id_butterです。

まぁ、先週からいろいろ起きた。

前兆は、あったのだ。

先々週くらいから、我が家の宇宙人、つまり長女とわたしは交戦状態だ。
彼女はとにかく、いうことを聞かない。

いうことを聞かないというより、そもそも手前で話を聞いてないのだった。

わたしは毎日繰り返し言う。

靴下をここに脱ぎっぱなしにしないで。
着替えたら脱いだものを洗濯物に持っていって。
お友達と遊びに行く前に宿題をおわらせて。
明日の準備が終わってからおやつを食べて。
体温を測ってシートに記入した?
読み終わった本は本棚にしまって。
あっちの部屋を片付けてから、こっちの部屋で遊んで。
ランドセルは置き場所があるからそこに置いて。
遊びに行くのはいいけど、帰りの時間を守って。
妹の世話より、自分のことをまずやって。
砂だらけの靴下でベッドに入らないで。
歯磨いたあと、うがいもちゃんとした?
いつまでも喋ってないで早く寝てください。
・・・まだまだある

これを朝晩で10回くらいは、言っている。
相手は8歳の長女である。(ちなみに5歳はできているので言う必要がない)
正直、うんざりしている。

靴下や脱いだ服を持っていくのが嫌なら、脱衣所で脱いでそのまま置けばいいんじゃない?
本棚に本をしまうのを忘れてしまうなら、本はあの部屋でだけ読むことにしたら?
…提案もいろいろしてみた。

今のところ、ことごとく失敗に終わっている。
習慣化が苦手なのだ。
言われすぎて、もう何も聞こえていないんだろうと思う。

言わないようにしようと思ったこともある。
けれど、今この状態でも毎日のように止まない忘れものが、三倍に増える。
代わりに片付けたところで、本人がどこにしまったのかわからなくなってしまうのでわたしがいないと何もできなくなる。
そして、これでも言うのをおさえているのだった。

長女は、忘れたこと、なくしたことにすら気づいていない。
たまに筆箱をのぞけば、鉛筆が一本も入っていなかったりするほどに。
毎日筆箱をチェックしだしたら、上記の「お小言リスト」は倍増する。

かくして、地球人の母はイライラし、それを自分の中で消化するのに必死。

はなし聞いてないけど、毎日授業についていけているのかな。
こんなにひととの約束を守れなくていじめられないかな。
毎日忘れものしていくけど、だいじょうぶなのかな。

でもまぁそんな心配をよそに、人間関係が天才的に得意な彼女は今までのところうまくやってきた。多分、誰かに助けてもらっているんだろう。

彼女の言動は、イライラしないために、ここまでは怒らないようにしようと設定したわたしの想像のラインを、必ず少しだけ超えてくる。
わたしが、試されているだけなのか?

ここが地球じゃなくて、ルールを守らなくていい星なら、心配しないのに。

長女は、優しく、いつも機嫌がよくて、笑っている。
頭も悪くないし、本が好きでいつも読んでいる。
ひとが好きで、誰とでも仲良くできて、ひとを笑わせることができる。
いい子なのだ。
けれど、地球人のわたしの「ちゃんとして」が、宇宙人の彼女の優しさを踏みにじる。

ちゃんと、ってなんなの。
本当に必要なの。
何度も何度も自問自答した。

だけど、忘れものをするだけで失ってしまう信頼があるのを知っている。
特に学校という場所は「ちゃんとしていること」が特に求められる。
彼女がいつか選ぶ場所は、そうじゃないかもしれない。
けれど、そこにいく資格の要件に「ちゃんとしたこと」が入っているかもしれない。
そんなたくさんの「かもしれない」に囚われて、宇宙人に苦手な「ちゃんと」を強いる。

自分のことならあきらめきれるけれど、子どものことだと割り切れない。

けれどその「いつか」のために今を犠牲にする必要はあるんだろうか。
そう悩むほどに、宇宙人の生活能力は同年代の子と比べると格段に低いのだった。人並み、どころか3歳下の妹に遠く及ばない。

そして、状況が少しずつ変化する。
学年が上がり、今までより高度の生活能力が求められるようになったのだ。
わたしとのことだけではない、最近彼女の周りはトラブル続きだった。
テストの点数が落ち居残りになる、お友達と絶縁?する、本人も「最近ついていない気がする」と言い出した。
さらに反抗期?が重なる。

先日、次女の歯医者があった。
予約が取りにくく、1ヶ月に1回しか通えていない。
長女もついていきたいというので、出発の時間までにきちんと準備ができていたらね、と伝え、できなかったら置いていくと念押しした。
そして出発の時間、嫌な予感ほど的中するのはお約束。
「マスクもカッパも待合室で読む本も持った、完璧」と言っていた長女が焦り出す。自転車の鍵がない。
歯医者はそれなりに遠く、探す間にもう予約の時間は迫っている。
「じゃあうちで待っていて。」
かくして、戦いの始まりだ。
「絶対にやだ!走っていく!絶対に行く、行くからね。」
走っているのを待っていても間に合わない、外は雨で無理だと伝える。
最初は冷静に言い聞かせるが、やりとりが7往復もするころにはうんざりして怒鳴っている。押し問答して家に閉じ込めて無理やり出発するも、納得しない長女が泣き叫びながら後を追ってくる。
お腹からこみ上げてくる。あと7分。
「今すぐ戻りなさい。言うことを聞かないならもうママは何もしない。」
低い声で言う。
それでも泣き叫ぶ娘を部屋に無理やり押し戻し、鍵をかけて家を出る。あと4分。
雨の中、次女を乗せて自転車を漕いで歯医者にたどり着く。
入口でなんとかオンタイム。ほっと息をついて思う。
「今日も、なんとか乗り切れた。」
そう、夜は毎日ギリギリなのだ。

こんな騒動が続いている。

その度に、わたしは後悔と痛みと情けなさと怒りとでどうしようもない気分に襲われる。
わたしの言い方が悪いのかもしれない。
親としての何かが欠落しているんだろうか。

頭の中をぐるぐるしている、冒頭の両親が来たのはそんな時だった。

両親と久しぶりに会って話しているうちに、子どもの頃を思い出した。
何か孫に買ってあげたい、という両親に、最近は携帯欲しいしか言わない、あとはずっと本を読んでいると返す。
父が「本、それがいいよ。一番いい。」と無邪気に口にした瞬間、わたしの中にふわっと炎がたち上がった。

40年前はそうじゃなかった。
本を読んでいれば、「本を読むだけじゃなくて勉強をしなさい。」
勉強をすれば、「ちょっと頭がいいからって親をバカにして!」
そう言われたことがどこかの記憶の箱から、はらはらと次から次へと出てきて、目の前にちらついた。

父も母も、変わってなかった。
言うことが薄っぺらくて矛盾だらけなところも、目の前のひとを傷つけていることにも気づかないくらいの鈍感さも、全部。
永遠にすれ違うんだな、と理解した。

手紙を書いた意味はあったのか。
手紙を書けなかったあの時間はなんだったのか。

とは、思わなかった。
そう思うことが怖かったのに。
このことは過去の清算というより、今これからのことへの意味なのだ。
だから、炎は一瞬ふわっと立ち上ったけれど、燻りもせず消えた。

逆に冷たいのかもしれない。
なんとも思わない。
大人になれないし、なってあげようという気も起こらない。
普通の親子のようになれなくても、別にいいやと思っている。

またしてもここで「普通の」に引っかかる。
わたし、「普通の親子」になりたかったんだなぁ。
自覚したら、もうあきらめられる気がする。
だって、わたしが仲良くしたいと思ってない。
欲しかった、でも今欲しいものはそこにない。

それより、今目の前にいる宇宙人に愛を注がなくてはいけないのだ。

わたしも、40年前は宇宙人だった。
子どもの頃は誰よりも宇宙人だった。
だから、地球のルールとか常識とかにたくさん傷ついた。
「普通」に「ちゃんと」できなかった。

忘れていた。

わたしが理由なくただ彼女を愛することは、40年前の宇宙人だったわたしを愛することなんだろう。
わたしは今、自分を育て直している。
親として、40年前の子ども時代を追体験している。

そう思う。
けれど、言うは易く行うは難し、ということだ。
この9ヶ月、いろいろな試練があったけど、今回が子どもを巻き込んでいる点において、一番しんどいかも。

ただそれほどに、長女はわたしにとって特別な子だ。
子ども、というより分身というのがしっくりくる。
似ているから、近いから、わたしの感情が揺り動かされる。
次女にはこんな感情は生まれない。
ただひたすらに可愛く、わたしが親を逸脱することも、放棄したくなることもなかったし、おそらくこれからもない。

長女がわたしの子どもになった理由があるんじゃないかと思っている。
この地球で、自由に、宇宙人のまま生きる。
わたしにその姿を見せるために、彼女がわたしの子どもとして生まれてきたんじゃないか、と思うのだ。

宇宙人のままでも地球でたのしく生きられるよ。
わたしが証明するから。
今もなお宇宙人のまま生きる長女が、そう言っているような気がする。
今はその実験が進行中なのだ。

わたしは一番側でそれを見ている役なのかもしれない。
誰よりも、彼女を信じる。
それがわたしの仕事だ。

今日も、家の鍵をなくした長女を怒ってしまったけど、そのあとは全部のカバンを指差して全部出して探して、と冷静に指示を出して、なんとか家の鍵を見つけられたのだ。
だいじょうぶ、わたしは立派な宇宙人の母になれるはずだ、「ちゃんと」。

これと対で書きました。








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